美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

貨幣と租税(中野剛志氏講演のレジュメ・その3) 美津島明

2017年05月24日 18時13分30秒 | 経済

日経ビジネスオンラインは、上記のようなタイトルで、財政再建を推し進めるキャンペーンを展開しています。デフレ下で財政再建を推し進めることが、いかに愚かで無謀な振る舞いであるのか。中野氏の議論をよく読めば、そのことは明らかであると思われます。上に掲げた画像は、一言でいえば、「亡国のキャンペーン」です。はらわたが煮えくり返ります。(編集者 記)

***

デフレ下での財政再建は無駄な骨折りである
「税収=国民所得×税率」という等式のなかで、政府は税率を意のままに決定できる。しかし国民所得は景気に依存する。政府は税率を操作できても不景気である限り税収は増えず財政再建は不可能となる。
*この箇所を目にして、思い浮かべるのは、消費増税と税収の関係です。消費税の税率をアップすれば、消費税は増えるかもしれないが、消費が冷え込むことで景気が悪化し国民所得が減るので所得税法人税が減り、トータルで税収が減る、というバカげた事態を、日本政府は繰り返しています。それを後押しする大手マスコミは愚の骨頂です。

「誰かの債務=別の誰かの債権(政府債務=民間債権)」
*この等式について、『富国と強兵』では次のように述べられています。

経済全体でみると支出の合計は所得の合計と同じである。マクロ経済は国内民間部門、国内政府
部門、海外部門から成り立っているが、ある部門における収支の赤字は別の部門における黒字に
よって相殺される。したがって、各部門の収支を合計するとゼロになる。「国内民間部門の収支
+国内政府部門の収支+海外部門の収支(資本収支)=0」
の等式が成立するのである。


・このことからデフレ時、すなわち民間債権が増大しているときに政府債務を減らすことは不可能である。デフレ時に政府債務が増えるのは(財政赤字が増大するのは)不可避なのである。また、政府債権の増大(すなわち財政黒字)が実現するのは、民間債務が増大しているとき、すなわちバブル時である。

*『富国と強兵』では、次のような事例が挙げられています。

「一九八〇年代後半、政府部門の赤字は縮小し続け、一九九〇年には黒字に転じているが、同時期の民間部門の黒字は対照的に減少し続け、一九九〇年に赤字に転じている。この時期の民間部門の赤字はバブルによる過剰債務を示すものである。民間部門がバブルにより債務を増大させたことで、政府部門の債務は減少した」

「バブルが崩壊し、あらに一九九〇年代後半にデフレに突入すると、民間部門は債務を減らし、債権を増やし、その裏返しとして政府部門が債務を累積させるようになっている」

「二〇〇三年ごろから二〇〇七年ごろまで政府部門の収支バランスが改善しているが、同時に資本収支が悪化している、これは、アメリカの住宅バブルによる好景気の影響で、日本の輸出が増大したためである」


☆財務省HPより
債務残高(対GDP比)の国際比較
債務残高の対GDP比をみると、90年代後半に財政健全化を進めた先進国と比較して、日本は急速に悪化しており、最悪の水準になっています
また、
平成27年度末の公債残高は807兆円に上ると見込まれていますが、これは税収の約15年分に相当します。 つまり将来世代に、大きな負担を残すことになります
とある。
http://www.mof.go.jp/zaisei/matome/thinkzaisei09.html
債務残高(対GDP比)の国際比較グラフは、次の通り。

 
*右クリックすると、画面が拡大されます。

・財務省の情報を踏まえたうえでの、次のような見解がマスコミ等で流布している。
財政赤字が拡大すると金利が上昇して債務の返済負担が重くなり、大変なことになる

・以下は、その見解に対する反論である。
①2000年以降、政府債務は累積し続けたが、長期金利は世界最低水準で推移している。日本が財政危機国家ならば、ギリシャのように金利が暴騰するはずだが、そうなっていない。かえって金利は異様に低い。なぜなのか?
②日本は1997年来の長期のデフレ下にある。デフレで借り手がいない限り、金利が急激に上昇することはまずありえない。例えば、 借り手あまたのバブル期において、20年国債の金利は7%という高率であった。現在は0.644%である(*財務省HPによれば、17年4月28日現在の金利は0.562%とさらに下がっています
https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/data/jgbcm_all.csv)。
③金利が上昇しはじめたら、それは借り手が増えた、つまりデフレ脱却が実現し景気回復軌道に乗ったことの兆候なのであるから、むしろ喜ばしい事態なのである。金利上昇を恐れるのは景気回復を恐れることに等しい*まったくもって愚かとしか形容のしようがありませんね)。  (つづく)

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