美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

NHK放映「トマ・ピケティ講義」第1回・再アップ (美津島明)

2016年01月27日 21時37分20秒 | 経済
NHK放映「トマ・ピケティ講義」第1回《21世紀の資本論~格差はこうして生まれる~》(美津島明)

NHK放映「トマ・ピケティ講義」第1回《21世紀の資本論~格差はこうして生まれる~》(美津島明)いま読書人の間で話題沸騰のトマ・ピケティ『21世紀の資本』。経済学の専門書として...



NHKで放映された「トマ・ピケティ講義」に、なるべく平易な解説をつけてアップする、ということを「その4」まで続けましたが、その後中断してしまいました。それを再開するぞ、という思いを新たにするために、当論考を再アップすることにしました。

ピケティが、膨大な量のデータをもとに、圧倒的な説得力で指摘した格差の拡大は、その後もとどまるところを知りません。以下は、ロシア在住の国際関係アナリスト・北野幸伯(よしのり)氏が今月の22日に配信したメール「世界の格差は、本当にすごい」からの引用です。ごらんください。

***

【驚愕】●世界の格差は、本当にすごい

日本も近年は、「格差社会だ!格差社会だ!」といわれます。

それでも、世界の現状をみたら、かなりマシですね。。

先日、本当に驚きの情報をみつけましたので、シェアさせて
いただきます。

CNN.co.jp1月18日から。

貧困問題に取り組むNGOオックスファム・インターナショナルは、
最新の報告書を出しました。

そこには「驚愕の事実」が明らかにされています。

オックスファムは今週スイスで開かれる世界経済フォーラム年次
総会(ダボス会議)に向け、米経済誌フォーブスの長者番付やスイ
スの金融大手クレディ・スイスの資産動向データに基づく2015
年版の年次報告書を発表した。

それによると、上位62人と下位半数に当たる36億人の資産は、
どちらも計1兆7600億ドル(約206兆円)だった。


どうですか、これ?

上位62人と下位半数に当たる36億人の資産は、
どちらも計1兆7600億ドル(約206兆円)だった。


つまり、トップの金持ち62人の資産は、貧しい方36億人の資産に
匹敵する!

また、オックスファムの報告書は、「格差が急速に拡大している
こと」をはっきり示しています。

富裕層の資産は近年、急激に膨れ上がっており、上位グループの
資産はこの5年間で計約5000億ドル増えた。

一方、下位半数の資産は計1兆ドル減少した。
>(同上)

上位グループの資産は、5年間で60兆円(!)増えた。

下位半数の資産は、5年間で120兆円(!)減った。

さらに、驚きの事実が出てきます

また、上位1%の富裕層が握る資産額は、残り99%の資産額を
上回る水準にあるという。
>(同上)

上位1%の資産は、残り99%の資産額より多い!!!

もう少し広くみてみましょう。

富裕層と貧困層の所得格差も拡大を続けている。

1日あたりの生活費が1・90ドル未満という極貧ライン以下の生
活を送る下位20%の所得は1988年から2011年までほとん
ど動きがなかったのに対し、上位10%の所得は46%も増加した。
> (同上)


世界には、1日当たり1.9ドル(=228円)、つまり月7000円以下で暮
らしている人が、20%もいる。

世界の人口が73億人とすると、14億6000万人もいる。

どうですか、皆さん。

私は、かなり驚きました。

***

グロテスクなナンセンス・ギャクとしか思えないようないびつな事態が、現に、この世界で進行しているのですね。ピケティの問題提起の大きさを再認識する思いです。


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2 コメント

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どのような意味があるでしょうか (kk)
2016-01-28 04:17:36
 私もそのニュースを聞いておりましたが、確かに「富の偏在」は顕著ですが。経済学を解しない小生、それが資本主義社会をどのように動かしているのかについての知識がありません。例えば、金属内の温度差だったり、気体の圧力差であったりするような量とその格差は比較されるべきものなのでしょうか。あまりにも格差が大きすぎるとシステムそのものが破壊されてしまうかシステムの動作が阻害されてしまうのでしょうが。しかし、そういう格差は一面駆動力にもなっています。一般の機械的なシステムの話ですが。
 ぶっちゃけ、「格差」があるから資本主義社会は動いているのではないか?脱落者を救うシステムを維持する手立てを充実するのが良いのではないかとおもうわけです。

 なんとなく私の頭にあるのは、カルマンフィルターなんですけど、そういう機械システムと社会の仕組みはどの程度比較研究されているのでしょうか。経済学はそういう事に興味はないのでしょうか?
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返事、遅れました (美津島明)
2016-01-29 11:31:47
kkさん。率直なコメントをどうもありがとうございます。

〈ぶっちゃけ、「格差」があるから資本主義社会は動いているのではないか〉。そのとおりであると思います。つまり、〈ほかの人よりも物質的に豊かになりたいという欲望が動因となって経済発展は実現されるものである。そうして、資本主義社会は、その欲望をまるごと肯定する経済システムだからこそ、目覚ましい経済発展を成し遂げてきた。格差社会を否定することは、人間のそういう赤裸々な欲望を否定することである。人間の赤裸々な欲望を否定することは、要するに、資本主義を否定し、経済発展を否定することである〉ということですね。そういう論旨に、私は基本的に賛成します。私が賛成しなくても、米ソの冷戦の勝利者がアメリカであったという歴史的事実が、人間の赤裸々な欲望を否定する社会主義に対する資本主義の相対的優位性を雄弁に物語っています。

それはそうなのですが、では、格差の拡大を無条件に肯定すべきである、という意見に賛成できるのかといえば、そうはならない、と私は考えます。

一国の所得格差の程度を図る社会学上の数値としてジニ係数というのがありますね。格差が大きくなるほどその数値が1に近づいてゆき、警戒ラインの0.4を上回ると社会不安が広がるとされています。OECDの統計によれば、2012年のワースト1は南米のチリで0.5です。ロシア・アメリカは、0.39で危険水域に迫っています。ちなみに日本は0.33、フランスは0.30、ドイツは0.28などとなっています。http://www.globalnote.jp/post-12038.html 同統計には出ていませんが、中国国家統計局によれば、中国の同年のジニ係数は、0.474と何が起こってもおかしくない水準です。
http://blog.livedoor.jp/john1984jpn/archives/51961897.html

驚異的な経済発展が成し遂げられたとしても、世の中がガタピシして安心して暮らしていられないんじゃ、元も子もありませんね。国民を幸せにするはずの経済発展が逆に国民を不安にし不幸にするとは、本末転倒ですから。

ヒト・モノ・カネが国境を自由に超えられるグローバル経済社会において、格差拡大は、新たな悩ましい問題を提起しています。それは、「企業が潤うこと=一般国民が豊かになること」という一九七〇年代まで通用していた幸福な等号関係がもはや通用しなくなった、ということです。その端的な例として、この10数年間、グローバル企業の内部留保がふくらんでいくのに対して、労働者の実質賃金が目減りし続けている事態を挙げればいいでしょうか。http://matome.naver.jp/odai/2141962638293053401

別に、日共がやるような大企業批判を展開したいわけではありません。グローバル企業は、もうけた分を国内に再投資する義理などないのです。海外に有利な投資先があれば、そこに投資したほうがいいに決まっているのです。メガバンクや投資会社の指南通り、タックス・ヘイブンにもうけた分を回して合法的脱税(避税)をするのがいちばん安全な儲け口であるに決まっているのです(昨今、避税については以前よりも難しくなってきたようですが)。

私は、一国の経済活動は、国民経済の充実のためにあるべきだと考える者です。いいかえれば、資本主義の発展のために国民が存在するのではなくて、国民の幸せのために資本主義の発展があるべきである、と考える者です。そういう立ち位置にある者の目に、企業の利潤追求と国民経済の充実とが相反する事態は、由々しきものと映ります。それが、「格差の拡大」を座視できないゆえんです。

次に、自然科学と社会科学との関連を意識している経済学者はいるのか、というご質問(で、いいんですよね?)についてです。

いまちょうど、そのことを中心テーマとして論を展開している、青木泰樹氏の『経済学とは何だろうか 現実との対話』(八千代出版)を少しずつ読んでいるところです。で、思うのですが、そのご質問にここで手短に答えるのは、私の手にあまります。

当テキストをネタに、経済問題研究会というささやかな勉強会で、私が専任講師として2月の中旬に講義めいたことを実施します。それを織り込んだ形の論考を当ブログにアップするつもりでおります。そちらをごらんいただければ、kkさんのご質問にいささかながらお答えしたことになるのかもしれません。それまで待てないということであれば、もし可能なら、当勉強会にお越しください。歓迎します

●日時:2月14日(日) 午後3時半~7時半

●会場:四谷ルノアール・マイスペース (JR四谷駅。徒歩数分)

●テキスト:青木泰樹著『経済学とは何だろうか』(八千代出版、本体2900円) 第6章まで

●講師:美津島明

●会費:使用料+飲み物代を参加者数で割ります
*なお、美津島さんには毎回講師をお願いしていますが、謝礼をお支払いするだけの余裕がありません。懐具合に応じて少額でけっこうですのでカンパをお願いできれば幸いです。
(これは、主宰者の言葉をそのまま転載したものです)
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