美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

アベノミクスの真髄 ~山本幸三衆議院議員の質疑より  (イザ!ブログ 2013・6・9 掲載)

2013年12月16日 06時36分08秒 | 経済
株価の乱高下と円高の急激な進行で、アベノミクスへの風当たりが強くなっています。それに加えて、アベノミクス第三の矢「成長戦略」の発表が空振りに終わり、なにやら怪しい雲行きです。

第三の矢「成長戦略」の中身には、私自身失望しました。競争力強化と規制緩和は、デフレ下でなすべきことではありません。デフレを脱却した後に実施すべきことなのです。それらは、デフレ脱却の足を引っ張る危険が大きいのです。要するに、タイミングが悪ければ、一見良さそうな政策も悪い結果を招きかねないということです。

言葉を変えれば、「成長戦略」における「成長」とは、今回の安部総理の発表においては、実質GDPの成長率です。ところが、デフレからの脱却にとって重要なのは、「名目」GDPの成長率なのです。ここで、実質GDPの成長にとって重要なのは、潜在成長率、いいかえれば、生産能力です。それに対して、名目GDPの成長率にとっては、インフレ率が決定的に大事なのです。つまり、それぞれの成長のために押さえるべきポイントは、まったく異なるのです。だから、第一の矢である「大胆な金融緩和」と第二の矢である「機動的な財政政策」とは、デフレからの脱却というアベノミクスの目標にダイレクトにつながるのですが、第三の矢は、成長概念をしっかりと絞り込んでおかないと、今回の発表のような、混乱した、インパクトに欠ける内容になってしまいます。市場が、それを見逃すはずがありません。

私見によれば、第三の矢の柱は、「国内設備投資減税」にすべきです。単なる法人税減税では、ただでさえ膨らみすぎている企業の内部留保をさらに膨らませるだけのことになり、デフレからの脱却に資するところがない、という情けない結果を招くことになってしまうのが目に見えています。「国内設備投資減税」は、国内にお金を回すことに積極的な企業を優遇する税制です。これなら、立法趣旨が明快で、三本目の矢の意味合いがずいぶんと力強いものになりますね。

また、アベノミクスにとって、株高はあくまでもデフレ脱却の手段であって、それ自体が目的ではありません。そのことをきちんと腹に入れておけば、株価の動向に一喜一憂する必要はありません。政権内に、どうもそういう軽薄な空気がなきにしもあらずのような気がするので、一応言っておきます。

と、いろいろ文句を言いましたが、私はいまでもアベノミクスを強く支持する者です。というのは、デフレからの脱却なしに日本経済の再生はありえないと思っているからです。アベノミクスの本質がデフレ脱却である点を、私はとても高く評価しているのです。

雲行きが怪しくなって来たいまだからこそ、私たちは、アベノミクスの根本性格を再認識しておいたほうがいいのではないかと思います。

その点、下に掲げる動画は、大いに役に立つものと思われます。というのは、そのなかで質疑をしている自民党・山本幸三衆議院議員は、アベノミクス生みの親と言っても過言ではないからです。彼の懇切丁寧な解説によって、私たちは、アベノミクスの真髄を理解することができます。そのなかでも、山本氏が特に強調するのは、政府・日銀に対する国民の信頼です。それを抜きにして、国民にすっかり定着してしまったデフレ予想がインフレ予想に転換するのは不可能である、と氏は言い切ります。

だから、マスコミによる対安倍ネガキャンの一環としての反アベノミクス報道の垂れ流しが、どれほどアベノミクスの生命線を脅かすものであるのか、お分かりいただけるのではないかと思われます。私が安倍政権の経済政策を批判するときは、アベノミクスの大目標である脱デフレにそれがかなうものであるとは思えない場合に限ります。それが、アベノミクス批判の最低のマナーなのではないでしょうか。それを踏まえない批判があまりにも多い。

また、政府への国民の信頼の重要性という観点からすれば、安倍首相がじきじきに、ワタミの社長・渡邉美樹氏に七月の参議院選比例区への出馬を要請したことは、かえすがえすも残念です。ワタミといえば、ブラック企業の代名詞のような存在で、社長自身「二四時間、死ぬまで働け」と社員たちに血も涙もない言葉を平気でかけるような人物です。そういう人物を重宝することは、安倍首相が抱いている経済社会像について、国民に疑念を抱かせる可能性が少なからずあります。そういう、アベノミクスの生命線を自ら毀損するような馬鹿なマネは厳に謹んでいただきたいものです。自民党は、渡邉氏公認を早急に撤回すべきでしょう。これが、安倍政権の致命傷につながりかねない愚挙であることを政府要人に早く気づいていただきたい。

山本議員に話題を戻すと、彼は、この二〇年間、日銀の消極的な金融政策を批判し続けてきた人です。実に立派な政治家ではありませんか。


素晴らしい質疑!!反安倍を論破!! 平成25年4月2日

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