メイおばさんの料理帖

「メイおばさんの宝箱」からはみ出してしまった料理や食べ物や食文化のお話を世界のいろいろな場所から楽しくお届けします。

初めてのGALAディナー@シアトル

2016-07-19 22:42:18 | パーティー

昨日の続きを少しばかりお話しさせてくださいね。
心がほっこり暖かくなることなんですもの。

今思えば、始まりは今年の2月初め
シリン&ヌア夫妻をディナーにお招きした時でした。

アメリカで暮らしてもう幾星霜のお二人は
国際機関で仕事をしていたインド人のカップルです。
そしてこのシアトルの町ではちょっとした顔役です(笑)。

もうとうに70代後半だと思われるのに
教育機関や医療機関や政府関係の理事やらアドバイザーなどをしながら
あちこちを飛び回っては世のため、人のために尽くしています。
そして

「メイ、私、来週は入院して手術やってるから、連絡とれなくても心配しないでよ。」 

などとケロッとおっしゃいます。

元々は私たちのワシントンDCの親友夫妻の友人でした。
気付いてみたら、すっかり彼らのバイタリティーに魅了されていました。

そんなお二人をディナーにお招きして
楽しい時間を過ごした後に、シリンがこんなことを言いました。

「あなたたち、今晩と全く同じディナーをやってもらえないかしら?」

一瞬なんのことだかわからずにポカンとしている我々に、シリンが説明します。

「今日は素晴らしい時間だった。
 料理は本当に美味しかったし、この家のこの眺めはめったにあるものじゃないし、
 あなた方との話は楽しかった。とにかく私たち大満足なの。」

ここまで聞いたってまだ意味がわかりません。

「これと同じものをね、チャリティーオークションに出してもらいたいの。」

ここまで来てようやく、おぼろげながらシリンの言うことがわかってきました。
彼らはシアトルにある大きな医療機関の理事をやっているのです。
そしてそこでは年に一度、5月に「GALA」をやって
寄付金を集めるそうなのです。

「GALA」(ガラ)と聞けばすぐに思うのは
コンサートやバレーなどのガラ(特別公演)のことですけれど
本来は「特別な催し」「社交界のお祭」などを意味するフランス語。

シアトルで行われているこのガラは
誰かが寄付したものに対してオークションが行われ
最高値を出した誰かがその権利を手にするというもの。

寄付は形のあるものとは限りません。
たとえば名の知れたシンガーが、誰かの家で出前コンサートをやってくれるとか
島にある誰かの別荘を1週間勝手に使わせてくれるとか、、、、、

そんな形のないものに興味ある人たちが値をつけて
期間内に最高値をつけた人にその権利がわたるのです。
もちろん彼らが買った金額はそのまま社会への寄付となります。
つまり二つの寄付から成り立つシステムです。

なんとシリン夫妻は
我が家での日本ディナーを寄付させてしまいました。

けれども、それはそのまま
彼らがどんなに我が家でのディナーを楽しんでくれたかの裏返し。
なんて嬉しいことでしょう。

とはいえ日本料理なんて、メイおばさんは自信がありません。
とまどっているとシリンが言いました。

「素晴らしいシェフが作る日本料理ならこの町にだって
レストランがいくらでもあるでしょ?
そうじゃないの、今日あなたが作ってくれたような
プロでも何でもないふつうの人が、ふつうに作る家庭料理がいいの。」

そこまで言われたらメイおばさんもメイおじさんも
どうしてNOが言えましょう。
しかもそれが少しでも社会の役に立つならば。

それが今年の「GALA」のこんな案内になりました。

「Authentic Japanese Multi-Course Dinner
 For Four with Friends of Evergreen Health」

気恥ずかしいので和訳は避けますが
結論から言えば
東から西までを羨望する丘の上の30階の我が家で
召しあがっていただく日本食のコースディナーがオークションに出されたのです。

その仕組みと価格についてはまた明日に譲りますけれど
さりげなくこうしたチャリティー、こうした寄付の形があるなんて
さすがに寄付文化のシアトルです。

さてさて、とまどうメイおばさん
「このままでいいのよ。」とシリンに言われたって
「ありの~ままで~」と歌うわけにもいきません(笑)。

ここに至るまでの3か月、一生懸命考えましたよ。
テーブルのこと、器のこと、料理のこと、BGMのことまで、、、、、

そして結局、最初のシリンの言葉を胸に刻んで
背伸びをしないことにしました。

「あなたたち、今晩と全く同じディナーをやってもらえないかしら?」

実は、背伸びをして初めてトライしたものもあるんですが(笑)。
たとえば「Appetizer」(先付け)のあたり。
それについてもまたご報告しますね。


ところでこれが
オークションで最高値を出したご夫妻がお持ちになった「証明書」です。


皆さまがよく笑い、よくしゃべり、よく食べては
楽しんでくださった嬉しい夜でした。


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