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偽善(偽悪)

2006年10月17日 | カ行
 (1) 「国語大辞典」(学研)には「本心をいつわって、うわべをよくみせかけること」とあります。

 そして、この辞書は「重吉には名誉と品格ある人々の生活がわけもなく窮屈で、また何となく偽善らしく思われる」(永井荷風)という用例を挙げています。

 (2) 「偽悪」を引くと、「うわべをわざと悪くみせかけること」とあります。

 (3) こういう解釈は納得できません。又言行不一致を偽善とする考え方もあるようですが、違うと思います。

 偽善とはそれ自体としてはやはり善ではあるのです。「参考」の 1に引いた言葉にあるように、「人間としての根本的な問題で悪いことをしているのを隠すために使われる小さな善行」のことなのだと思います。上の荷風の文もこれで理解できると思います。

 (4) 従って、偽悪とは「人間としての根本的な問題では正しいことをしているのに、照れくさかったり突っ張っていたりしているためにわざとなされる小さな悪行」と定義できるのではなかろうか。

   参考

 1, 偽善的な道徳家というのは、一方において国を危うくするような大罪悪〔人〕には無関心を装いながら、他方において私的な罪悪〔人〕には憤激をもってすることで、それと分かる。(エルヴェシウス、マルクスの『聖家族』からの孫引き)

 2, 行儀というのは、私は相手に対し、自分はあなたにとって無害な人間だということの信号のようなものだが、わしはもともと有害な人間だから~/ と、良順は偽悪ぶって自分の無作法を語るが、しかし気骨の折れる奥づとめができているほどだから、実際はそれほどでもなかった。
 (司馬遼太郎「胡蝶の夢」4-55頁)

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