植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

基本を学ぶのが基本 科学も書道も篆刻も

2021年09月05日 | 時事
 書道古い雑誌、書物を読むと、ほとんど例外なく書家さんや著名な書人文人さんが「古典に学べ」と書いています。書道の先生から渡された課題も、蘭亭序、九成宮礼泉銘などの古典でありました。この5年間ほぼ一貫して、そうした書の名筆を臨書することに費やしました。

 このブログで幾度か紹介している「芸術新聞社」発刊の隔月誌「墨」のシリーズは、30冊近くになりました。書道や篆刻全般の常識からかなり専門的な知識を得るのに最適で、おそらく多くの書道家さんも購読しているのではなかろうかと思います。45周年で271号を数えるというのは大したものです。

 ヤフオクのおかげで、定価が2500円近いこの冊子が、平均して千円ほどで入手出来ております。この手の本のいいところは、ほとんど摩耗汚損が無く、内容も普遍的なので、陳腐化しない時代遅れとは無関係のものなんです。ワタシは、書道教室がずっとお休みになったこともあり、この2年間は全く独学独習の日々を送っていますから、こうした書物が大変役に立っているのです。

 この雑誌の中でも幾度も「今時の書道家(篆刻)は古典を軽んじている」と嘆く表現がたびたび出てきます。みんなお年寄りの大家の寄稿文ですから当然でしょうね。例えば日下部鳴鶴さん、中林梧竹さん、金子鷗亭さんなど、名だたる書家さんは、臨書に明け暮れ古典をしつこいほどに勉強したそうです。

 臨書は、基本中の基本、篆刻で言えば摸刻(中国の千年以上も前からの古印などを模して彫る)がそうであります。上記の「墨」篆刻編でも盛んに古典を彫れ、摸刻が基本だと書かれております。

 なんでも、日本の自然科学の学術論文数の順位が20年前は2位だったものが4位になり、過去最低になったそうです。他の論文に引用されたり注目度を計る「Top10%補正論文」という指数で数」 指数でも一位が中国、日本が10位と大幅に後退し質の低下が明白になりました。

 これはわが国が長期にわたって自然科学の研究をおろそかにしてきた証左でありましょう。基本の科学分野に人とお金が集まらなくなっているのです。有能な科学者研究者はアメリカに渡り、中国に引き抜かれました。企業、メーカーも基本・基礎研究をないがしろにしているうち、最先端技術まで徐々に劣化して他国に後れを取り、「技術大国」ではなくなりつつあるのです。

 菅さんが、スズメの涙ほどの補助金を出している、日本学術会議の任免権を握ろうとしたことはだいぶ前でありますが、いまだに4名の方は拒否されています。自由な研究や意見を阻害し、学術全般の振興をおろそかにしたことを忘れてはなりません。

 国内で、コロナワクチン開発を薬品メーカーがいまだに成功させていないのは、厚労省の認可ハードルが高く、投資リスクを考えるととても割に合わないとなったからなのです。以前から感染症のワクチン研究に国や製薬会社が力をいれていたなら、さらに今回、国が責任を取るとして保証して製造命令をしていたなら、今頃日本製ワクチンがジャンジャン出回っていたのではないかと思います。公立の研究所にせよ、民間企業のラボにせよ、基礎的科学研究にお金を使わなければ、その先の発明・発見はありません。

 基本の研究や習熟に時間と労力、お金を注ぐことは遠回りに見えても、最も着実で実利があることを政治家も、研究者も、民間企業もそして書道の練習生も心しておかなければならない、という分かり切った結論でありました。
コメント (1)
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