すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【ロシアW杯最終予選】ハリルが考えるサッカーは知的で狡猾だ

2016-10-26 10:10:37 | サッカー戦術論
敵のよさを消しカウンターで殲滅する

 目ざすサッカーが見えてこないーー。

 ハリルに疑問をもつ人の多くがこう語る。だがそれはおそらくチームがまだ成長の過程にあるからだろう。その証拠に過去のゲームを丹念にチェックすれば、重要なヒントになる局面が見えてくる。鮮やかなショートカウンターが決まったイラク戦の1点目とオーストラリア戦の1点目がそれだ。どちらの得点も見る者に鮮烈な印象を残したゴールである。

 まずイラク戦の1点目は前半24分だった。イラクの選手がドリブルで日本陣内にボールを持ち込み、呼応して日本のバイタルエリア周辺には5人のイラク人アタッカーが猛烈な勢いでなだれ込んできた。そこで相手が前がかりになった瞬間、原口がプレスバックで敵のパスをひっかけ、こぼれ球を清武が拾う。あとはご存知の通りだ。

 清武がドリブルで1人かわすとイラク陣内にはポジションバランスの崩れた4人のDFしかいない。ちなみにこのとき原口はプレスバックでパスカットするや、すぐさま「3人目の動き」でゴール前まで突進し、最後は清武からの折り返しをゴールしている。

 一方、オーストラリア戦の1点目は前半4分。相手センターバックがグラウンダーの縦パスを出したところを原口がカットし、横にいた長谷部にボールを預けたところから始まる(このときも原口は長谷部にパスした瞬間、すぐに3人目の動きをして前へダッシュしている)。

 オーストラリアとしては、最終ラインからビルドアップしようとした1本目のパスをさらわれた形だ。彼らはマイボールだったため「さあ攻めるぞ」と攻撃的MFとFWが揃って日本陣内にポジショニングし、全体の陣形がやや前のめりの体勢だった。このバランスでパスカットされたのだからたまらない。オーストラリアは味方が帰陣して陣形を整えるヒマもなく、ボールはたちまち本田に渡り、ポストプレイから原口のビューティフル・ゴールになった。

 さて、ここから何が見えてくるか?

 どちらのゴールにも共通しているのは、相手チームが前がかりになったところにプレスをかけてボールを奪い、少ない手数で素早くカウンターを決めた点だ。つまり相手にボールを持たせ、罠を仕掛けて相手チームが「さあ攻めるぞ」と守備のバランスを崩した瞬間に仕留めている。さらに見逃せないのは、どちらの局面でも原口がプレスバックからパスカットし、すぐに3人目の動きをして前へ抜け出し最後は自分でゴールを決めている点だ。

 観ている人間にはたまたまマイボールになり、そのとき選手の配置が偶然ああだったからゴールが決まったように見える。だがあれは偶然ではなく、必然だ。パスカットのタイミングと敵のバランス、3人目の動き。すべてが狙った通りにアジャストされている。人工的な創造物だ。

 あの2つのゴールが、ハリルの目ざすサッカーなのである。

 非常に知的で狡猾、抜け目がない。相手をあざ笑うかのように獲物を狩る。イラク戦とオーストラリア戦では日本のゲームモデルが異なり、どこにゾーンを置くかが違った。だが点を取った局面には共通点が多い。そこには当然、ハリルの「意志」が働いていたと見るべきだろう。

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