すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【オルタナティヴロック】なんと大本命の「トラヴィス」を見落としていた

2024-03-03 05:29:14 | 音楽
*オルタナティヴ・ロックバンド「トラヴィス」(Travis)が1999年に
リリースした最高傑作の2nd盤『ザ・マン・フー』(The Man Who)

ストリーミングの「Amazon Music HD」で片っ端から聴いた

 前回、「【オルタナ探訪】ロックは「70年代で死んだ」のか?」の記事で、オルタナティヴロックをかたっぱしから探索した。

 さがす方法は、まず「オルタナティヴロック」等のキーワードでどんなミュージシャンやアルバム、楽曲が存在するのか? ネット検索で目星をつける。

 次に見つけたバンド名や曲名をキーワードにし、それらをかたっぱしから私が加入しているストリーミング・サービス「Amazon Music Unlimited(HD)」の専用アプリ上でネット検索する。すると目当てのミュージシャンの作品がズラリと残らず表示される。

 そこで同サービス上で全てストリーミング試聴するのだ。ただし「試聴」といっても「iTunes」の時代みたいに、曲の一部だけしか聴けないわけじゃない。楽曲全体がすべて残らず聴ける。

トラヴィスはキャッチーでメロディアスな超絶バンドだ

 しかも「Amazon Music HD」での試聴は、CDのような固体をフィジカルに所有してないってだけだ。いつでも本サービスにネット経由でアクセスすれば、何回でも無制限でちがう音楽だって何でも聴ける。

 もちろん「曲数制限」なんてない。本当に無限にいくらでも聴けるのだ。これで月1000円ポッキリなんだから笑ってしまう。もうCDは買わなくていい時代が来たんだ。

(ただしミュージシャンにとっては災難だろう……。彼らには著作権料等、しっかり各種の支払いが十分に行われることを希望したい)

 さて、そんなわけで本企画では前回に引き続きこの作業を繰り返し、実際の音を聴いて行った。とはいえなんせ、聴く作業は人力なので限界がある。もちろん存在する全てのミュージシャンを聴くなんてできない。

 で、本企画の前回では致命的な見落としをしていたことが発覚した。音源探訪の結果、とうとう決定的な有力候補を見つけたのだ。そのバンドこそが、今回ご紹介する「トラヴィス」 (Travis)である。

2nd盤から彼らはキャッチーに生まれ変わった

 トラヴィスは、スコットランド・グラスゴー出身のロックバンドだ。デビュー当時は(オアシスっぽい激しい曲調で)なんだかイマイチなバンドだったと言う人もいる。(私は実際に1st盤をこの耳で聴いたが、それは微妙にまちがいだ)。

 一方、リリースから3ヶ月目にして、全英アルバム・チャートの1位になった2nd盤『ザ・マン・フー(The Man Who)』(1999年) 以降はどこか哀愁を帯び始めた。そしてメロディアスでキャッチーなバンドに大変身した。本盤はその後も長くヒットし、全世界で400万枚を売った。

 そんな魅力を備えた彼らは90年代後半に来たブリットポップ後のUKシーンで、レディオヘッドと肩を並べるように新しい音楽トレンドを生み出している。

 ちなみにバンド名の由来は、ヴィム・ヴェンダースが監督した映画『パリ、テキサス』(1984年)からヒントを得たもの。この映画の主人公の名前を取り、バンド名をそれまでの名称から「トラヴィス」に変えたのだ。

 彼らのデビューのきっかけはラジオだった。もともと1995年にラジオで流れた彼らのセッションがレコード会社に「発見」され、それでチャンスをつかんで翌年にソニーと契約した。

 そしてデビュー・シングルの「オール・アイ・ウォント・トゥ・ドゥ・イズ・ロック」を1996年にリリースしたのがすべての始まりだ。

トラヴィスは1st盤からなかなかのデキだ

 続く2000年には、世界的な才能あるソングライターに送られる賞「アイヴァ・ノヴェロ・アウォーズ」の「ソングライター・オブ・ザ・イヤー」に、メンバーのフラン・ヒーリィ(ボーカル、ギター)が選ばれた。

 また英国レコード産業協会(BPI)が毎年イギリスで開いている音楽の祭典「ブリット・アワード」(Brit Awards)で、「ベスト・バンド」「ベスト・アルバム」の2つの賞を受賞した。このへんからUKシーンをリードするトップ・オブ・トップの座を築いた。

 さて実際に私が音を聴いた体感では、オアシス路線で音が激しいとされている1st盤『グッド・フィーリング(Good Feeling)』(1997年)は思ったほど過激じゃない。しかも、なかなかのデキだ。

 特に8曲めの「アイ・ラブ・ユー・エニウェイズ」と10曲め「More Than Us」、11曲め「フィーリング・ダウン」、13曲め「More Than Us」がひときわ目を(いや耳を)引いた。

 加えて12曲めの「ファニーシング」は、ドラマティックのひとことだ。後半にやや音が歪むがそれが見事に味付けになっている。これら4曲だけはアコースティック系のとても美しい作品だ。まさにメロディアスの限界に挑戦している。

 つまり本1st盤における位置付けとすれば、これら5曲は以降の彼らの新しい作風のいわば走りに当たると見た。あとの曲はまあ、まずまずだ。なんせニルヴァーナみたいにヘビメタばりの歪み方をしてるのかと警戒していたので、かえって拍子抜けしたくらいだ。

2nd盤を聴いて速攻でトラヴィス単独のプレイリストを作った

 さて続いて1999年5月に発表されたセカンド・アルバム『ザ・マン・フー』(The Man Who)へ行こう。こやつはのっけからもうスゴかった。1曲めの「ライティング・トゥ・リーチ・ユー」(Writing to Reach You)でいきなり美メロが極まる。もう全開だ。

 あまりにも美しすぎて、まさにトップバッターに満塁ホームランを食らった感じ。そしてこの体感は2曲めでも続き、3曲めも超絶的にいい。さらに4、5、6曲めと同水準のハイレベルな均衡が継続する。

 で、1回目の頂点が8曲め「luv」で極まった。まじめな話、ジンジンに鳥肌が立った。このアルバムはまちがいなくロック史に残る名作だ。

 ちなみに本盤からシングル・カットされているのは、1曲目の「ライティング・トゥ・リーチ・ユー」のほか、「ホワイ・ダズ・イット・オールウェイズ・レイン・オン・ミー?」、「ターン」の3曲だ。すべて連続ヒットしている。

 だが実感としては「なんで3曲だけなの?」って感じがする。

 なお私が聴いたのは「20th Anniversary Edition」で、なんと全29曲が収録されている。それらすべてがまるで宝石のように光り輝いている。文字通り全曲、捨て曲なし。もう「参りました」というしかない。

 よって速攻で「Amazon Music HD」のアプリ上に「トラヴィス」と名付けた単独のプレイリストを作った。こいつらなら間違いないぞ、という期待感が確実にある。いやはや、こんな体験ができるとは夢にも思わなかった。

このオルタナ・シリーズは長くなりそうだ

 あー、思わず力が入って記事が長くなりすぎた。なのでトラヴィス関連は、2〜3回(またはそれ以上)に分けることにした。いったんこのへんで一度切ろう。

 しかし彼らを発見できた今となっては、前回の記事で「ロックは70年代に死んだのでは?」なんて、したり顔で書いていたのが恥ずかしくなってくる。

 もちろんトラヴィス探索は本シリーズの次回でも続けるつもりだ。すでに2nd盤以降、3作目、4作目、さらにその先へ、と連なる新音源はもう聴き終えた。次の原稿もほぼ完成している。

 おまけにトラヴィス以外にも、期待できそうな90年代以降の新たなバンドも続々と見つかった。このオルタナ・シリーズはいい意味で長くなりそうだ。

 乞うご期待を。

【関連記事】


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【インタビュー特出し】ドラ... | トップ | 【オルタナティヴロック】名... »
最新の画像もっと見る

音楽」カテゴリの最新記事