すちゃらかな日常 松岡美樹

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【山本太郎の政権構想】投票しない無党派層に働きかけて政権交代を狙え

2024-09-08 12:41:15 | 政治経済
都知事選「石丸方式」で棄権票の掘り起こしを狙うれいわ新選組

 野党は、相変わらずひとつにまとまれない。いつまで経っても塊を作れない。執念で政権交代を狙う小沢一郎氏の政権構想も実現しない。

 そんななか、れいわ新選組は(よくいえば)曖昧に妥協せず、あえて孤立を選ぶ独立路線を貫いている。まあ立憲も共産も「れいわ嫌い」が高じているので無理もないだろう。

 そのれいわ・山本太郎氏(以下、敬称略)の政権構想は、「俺たちが仮に20人程度の塊になれば波を起こせるはずだ」というものだ。

 つまり緊縮派と積極財政派のように、政策の方向性が真逆の野党間でムリに塊を作るのでは結局まとまらない。

 ならば政策として積極財政をキーワードに、もうれいわ単独で選挙に行かない無党派層に働きかける。そして彼らを味方に引き入れることで、投票率をぐんとアップさせる。その「上積み」分で山は必ず動く、という読みをしている。

 実際、選挙に行く有権者50%という既存のパイを他党と食い合うのでは、数が足りず見込みがない。そうじゃなく、まったく選挙に行かない「残り50%」の新たなマーケットを開拓しよう。そんなコンセプトである。

 すなわち従来の野党共闘みたいな妥協の産物としての「各党・詰め合わせ型」でなく、単独での「新規開拓・選挙へ行こうよ型」なのである。

 こうしてれいわ新選組がひとりでに大きくなれば、存在感は増す。加えて基本は緊縮の立憲民主党には、太郎に賛同する若い積極財政派が50人くらいいる。もし彼らがれいわに呼応して決起すれば、それ一発で勝負は決まる可能性さえある。

 またそのことにより、必然的に引きずられる形で立憲全体や共産があとからついてくる形になれば、政権交代もあながち夢じゃないだろう。

かつて選挙へ行かない無党派層を掘り起こしたのは「小泉改革」だった

 例えば今も記憶に新しい、あの「小泉改革」で自民党が巻き起こした小泉純一郎氏による郵政選挙での圧勝も、これとまったく同じ構造と手法だった。

 そのわかりやすさをマスコミも大絶賛して報道しまくり、煽りに煽って「劇場型選挙」に仕立て上げた。

 彼は明快でスカッとした大仰なパフォーマンスと、ユーモアのセンスで支持を集めた。またアメリカ寄りの政治スタンスでもメディア受けがよかった。

 そして、あのときもふだん選挙にまるで行かない無党派層が、「小泉改革」というわかりやすいワンフレーズ戦略に踊らされた。若者たちはすっかり洗脳され、こぞってみんな選挙へ行った。そして「小泉改革」は、津波のような地滑り的勝利を収めた。

 その結果の大勝だった。

 ただしその後に起こったのは、小泉首相(当時、以下略)による日本を売り飛ばす悪夢の郵政民営化のほか、すべてアメリカへの利益供与ばかりだった。彼がやったのは、そんな政策ばかりだ。

 その小泉首相のおかげで視聴率が上がったり、紙面がバカ売れする大手メディアも、当然、だれも反対しない。それどころか囃し立てて、ほめまくった。小泉氏があんなに大勝したのも、メディアの力が大きかった。

若者たちはあのとき初めて選挙へ行った

 繰り返しになるが、小泉氏がやったのは、かの英語の国の指令通りだ。しかもそれらの政策には「いったいどんなウラの意味があるのか?」など、マスコミは一切、世間に対し解説しない。まるで放置プレイだ。

 彼らメディアは広告収入という商業主義に則り、すべてにダンマリ。政権側の言いなりだった。あのときはそんなメディアの誘導もあり、小泉氏のやり口にそのまんま庶民が乗った。で、思い通りに動かされた。

 若い有権者たちは、そんなわけで何も知らずに、初めてあのとき選挙へ行ったのだ。当時、小泉戦略を客観的に分析した私のブログ記事(最下段の【関連記事】参照)のコメント欄には、そんな若い人たちが大挙して押し寄せてきたのでよくわかる。

 興味深いことに、そんな2005年の「郵政選挙」当時に私のブログで書いた無党派狙いの「小泉戦略」解説、例えばこの記事あたりでの分析は、そのまんま、2024年現在の山本太郎が考えていることや、前安芸高田市長の石丸伸二氏があの都知事選で演じた戦略とまるで同じなのだ。(これについては後述する)

 またこれも余談だが、上記リンク先や最下段の【関連記事】にある2005年に書いた分析記事では、将来、YouTubeやTikTokが活躍するような「ネット選挙」の未来がやがて来るだろうことの予言にもなっているーー。

 失礼、手前味噌になった。

 ところでいま自民党では、かの小泉純一郎氏の息子さんである進次郎氏(以下、敬称略)が自民党総裁になろうとしている。

 歴史は繰り返す。暗黒時代の幕開きだ。

 世間は「進次郎構文」などと笑いのネタにして楽しんでいるが、コトはそう楽観的な話じゃない。

かの小泉進次郎は米シンクタンク「CSIS」の研究員だった

 進次郎は国会議員になる前に、ワシントンのシンクタンク「CSIS」(戦略国際問題研究所)の研究員だった。このCSISは、知る人ぞ知る(日本にとって)悪名高い組織である。日本に対し、数々の司令を出してくるのだ。

 例えば最近では2024年4月4日、CSISは6回目になる恒例の有名な『アーミテージ・ナイレポート』のなかで、「2024年の日米同盟 統合された同盟へ」を発表した。(以下の解説部分は一部、NTTデータ『「アーミテージ・ナイレポート2024」を徹底解説』を参照した)

 このレポートの中では国家安全保障から経済安全保障までをフォローする、広い分野で統合された日米同盟関係を作ることが提言されている。

 特に国家安全保障に関しては、(1)在日米軍司令部の機能を強化し、新設される自衛隊の統合作戦司令部との指揮統制の連携を深めること、(2)日本は一元的な情報分析機関を設立し、これまで脆弱だった日米のインテリジェンス・コミュニティ間の連携を強化することーーを求めている。

 こうした動きと進次郎が無関係だとは、とても思えない。

 つまり小泉進次郎は今のうちは大人しくしているが、もし首相になったらそのとき初めて(親父と同様)牙を剥き始めるかもしれない。

 ちなみに進次郎が「いかにヤバいか?」については、積極財政で知られる藤井聡・京都大学大学院教授のこの記事の2ページ目だけでもご参照ください。

山本太郎の戦略は「石丸旋風」や「小泉改革」と同じ流れだ

 さて話を戻そう。

 れいわ新選組の山本太郎がやろうとしている戦略は、かのアメリカを利する「小泉改革」と内容的にはちょうど真逆(大衆寄り)の政策を掲げている。

 だが政治現象としてはあのときとまったく同じ構造だ。つまり選挙に行かない無党派層の政治参加を煽り「雪崩現象」を起こそうという狙いである。

 棄権票をなくして票の掘り起こしを狙う投票率アップや話題作りの点では、「小泉改革」とそっくりだ。

 だが山本太郎がやろうとしているのは、小泉氏の時の「アメリカのための政治」とは真逆で日本の庶民のための政治である。

 例えば同じように先の都知事選では、あの前安芸高田市長の石丸伸二氏が、ふだん選挙を棄権している10代・20代の票を一気に掘り起こし、全体の投票率を5〜10%もアップさせた。それにより、なんと166万票近く取って蓮舫を抜きドカンと2位になった。

 あんなことは誰も予想してなかった。

 それが「無党派狙い」の一発で起こったのだ。

 このときの「石丸選挙」は、その手法や戦術が先述したあの「小泉改革」の郵政選挙とびっくりするほどそっくりだ。アレの再来である。

 その石丸選挙を見れば「あれだ! あのやり方で無党派層を惹きつければ、一気に政権交代もありえるぞ」という山本太郎・理論の裏付けになっている。

「棄権者層を開拓すれば野党が勝てる」は定説だった

 そして実はこの理論は、然るべき識者の間では長い間「定説」だった。この方法なら必ず政権交代できる、といういわば伝説だ。しかし「まさか実現しないだろう」ともされてきた。

 それだけ選挙を、恒常的に棄権する人が多いからだ。

 その「定説」を石丸氏が実際にやって見せたのだ。

 ちなみに私が知る限り、この選挙に行かない無党派層を大幅に掘り起こせば必ず勝てるという「定説」を、実際に演じてみせたのは選挙史上、過去3回しかない。

 それは(1)1989年の第15回参院選で改選議席の倍以上を取り、「マドンナ旋風」を巻き起こした土井たか子党首(当時)の旧社会党(いまの社民党)、次に上にも挙げた(2)2005年9月・第44回衆院選での「小泉改革」郵政選挙、そして最後に(3)2024年7月の東京都知事選挙における「石丸旋風」ーーである。

 このたった3つのケースだけだ。

(このほかあえて挙げれば石原慎太郎・元都知事か。まあ「無党派狙い」でバカ勝ちしたという意味では、同じく都知事選でのかつての青島幸男氏や大阪府知事選の横山ノック氏も挙げられるが……彼らは勝って以後のデキがあまりにも悪すぎた。それに国政じゃない)

 つまり直近ではあの「石丸現象」を見れば、確かに無党派層に賭ける山本太郎の読みは当たっているわけだ。さすが彼の野生の政治的カンは冴えている。

 なお余談だが、個人的には石丸氏には何も期待していない。都知事選であれだけ街頭に立ったのに、政策はまったく語らず抽象的だった。要は、彼は「雰囲気と勢い」だけで数を集めたのだ。

 ただし彼には政策がないわけじゃない。彼が隠し持つ真の政策は、おそらく維新に限りなく近いはずだ。ムダを削って身を切る改革。つまり緊縮寄りである。

傾く日本経済の一発逆転には「積極財政」がマストだ

 次にれいわ新選組の経済政策を見るとどうか?

 実はこれがいちばん大事だ。

 例えば自民党や既成野党は、課税で財源を作ってそのぶん将来世代に分配しようとか、身を切る改革で財源を作り何かをやろうとか、ある一定の収支を均衡させて「その中でやり繰りする」ことしか考えてない。

 だがれいわの山本太郎はそんな方法論じゃない。まず積極財政で国債発行し、それにより消費を喚起してマーケットに新たに大規模なおカネを生み出す。そして経済成長を目ざす。そんな大胆な考え方だ。

 上のようにザックリわかりやすくひとことでいえば、これがれいわ新選組の基本になる経済政策である。

 過去、そうした国債発行で日本は軍備にカネを使って戦争になったため、共産党あたりは真逆の思想で頑固に国債発行に異議を唱える。だかられいわと交われない。

 だがそれは果たして国民の利益になるだろうか? 人権に対する共産党の思想は尊敬に値するが、こと経済に限っては頷けない。

 こんな経済政策のダメさ加減では同様に緊縮派が支配する立憲民主党をはじめ、各野党とも共通している。特に維新などはその典型だ。(国民民主党はちょっと違うが)

 例えば立憲の代表選に立候補している枝野幸男・前代表は「消費税を下げればハイパーインフレが起きる」などとデマを流している。暴論だ。

 そんな予算規模でハイパーインフレが起きるわけがない。ハイパーインフレが発生するのは、ひとつには革命や国家破綻などで国の信用が失われるような危機的ケースでの話である。

辞任確定の岸田首相はヤケくそで「暗黒法案」を次々と

 かたや裏金問題で傷だらけになったはずの与党自民党は、相変わらず我が道を行く。

 特に辞めることが確定している岸田首相などは、やけのやんぱち、「イタチの最後っ屁」で立て続けにヤバい法律や取り決めを通そうとしている。もうめちゃくちゃだ。

 火事場の馬鹿力という言葉があるが、まさにそれが当てはまる。

 例えば2024年9月2日、自民党は「憲法改正実現本部」(古屋圭司本部長)の全体会合を開いた。

 そして憲法に自衛隊を明記することなど、改憲の指針になる論点整理をした。平成30年に出た改憲4項目を引き継ぎ、現行の9条を維持しながら「9条の2」を新設し自衛隊を追記するとした。

 こっちはまあ、あの自衛隊は現に存在するのだからいいとして、問題は次の部分だ。

 例えばあの危険な「緊急事態条項」も、いつの間にか彼らのごまかしの論理で「緊急政令」などという4文字の名称にすり変えた。国民に何の詳しい説明もなく、だ。明らかな目くらましである。

 そしてこれを付け加える改憲をしようとしている。

 この「緊急事態条項」なる名称は登場した当時、かなり世間に叩かれ悪名を着せられた。だから名称を変えてイメチェンしよう、つまり見た目を変えてごまかそう、とでもいうことだろう。

 おまけにそれを報じる大手メディアの側も、国民に対してそのヘンな名称変更について何の補足説明もしない。「名称がこう変わったよ」とすら言わない。ひどい話だ。単なるごまかしである。

 さて山本太郎とれいわ新選組は、こんなズル賢く頑強な自民党による政治体制を果たしてブチ壊せるのか? ここに日本の命運がかかっている。

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