すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー日本代表】ハリルホジッチはトリックスターか?

2016-10-29 06:57:16 | サッカー日本代表
混乱と栄光をもたらす大いなる破壊者

 ハリルは狡猾な策略家であり、石橋を叩き割っても渡らない。あくまで疑いの眼差しで見る。彼はひとことでいえば「劇場型」の策士だ。常にテレビカメラの中心に自分を位置づけ、見られることを十分に意識し、抜け目なく演技する。自己演出して自分を高く売る。

 戦国武将でいえば、「マムシの道三」といわれた斎藤道三のようなタイプだ。道三は一介の油商人から身を起こし、権謀術数を駆使して大名にのし上がった。周囲の人間は絶えず気をつけていないと寝首をかかれる。

 ハリルはマスコミに向け、「所属チームでレギュラーでなければ代表チームに呼ばない」などと大言壮語し、自らの館である代表チームの権威を高めてみせる。「代表チームはそれほどの存在なんだ」と権威付ける。「その長である俺は特別なんだ」と自分を位置付ける。

 圧倒された日本人は誰もハリルの意図や狙いがわからず、彼のサッカーを「縦ポンだ」「ドン引きじゃないか」などと毀誉褒貶がすさまじい。結果、ハリルはひたすら混迷と無秩序を再生産し、世の中を混沌の只中へと叩き落とす。ハリルの哄笑が聞こえてくるようだ。

「どうだ? 私の哲学がわかるか?」

 人々はハリルというリトマス試験紙によって試され、弄ばれ、見渡す限り広がる暗闇の底へと叩き落される。

 彼はトリックスターである。

 トリックスターとは、神話や民間伝承に登場する人物だ。トリック(詐術)を駆使して神や自然界の秩序を破り、物語を混乱に陥れるいたずら者として描かれる。善と悪、破壊と生産、賢者と愚者など、全く逆の二面性を持ち、文化英雄であると同時に悪しき破壊者であり、賢者でもある。法や秩序に照らせば、そんな一貫性のない矛盾した特徴をもつ。

ハリルは日本の既成概念を壊す

 振り返ればあの革命家フィリップ・トルシエの「恐怖政治」に対するアンチテーゼとして「自由なサッカー」「アクション・サッカー」などという、まるでゆとり教育のような旗印を立てたジーコジャパンは木っ端微塵に吹っ飛び、ザックジャパンは無残に崩壊した。では日本が世界で勝てるサッカーとは? その果てにやってきたのが、ハリルホジッチというトリックスターだった。

 真の芸術は、既成の価値観を根底から塗り替える。

「日本による、日本人らしいサッカーは流れるようなパスサッカーだ」

 そんな人々の愚かしい期待を裏切り、ハリルのフットボールは日本人が理解不能な未知の領域へと観る者をいざなう。「支配率が高い=善」という常識をぶち壊し、「敵に押し込まれている=悪」なる既成概念をなぎ倒す。この果てにあるものは破壊か? 成功か?

 それは神のみぞ知る、である。
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