すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【キリン杯・森保ジャパン】彼らは一直線にゴールをめざす 〜日本4-3ウルグアイ

2018-10-17 15:59:52 | サッカー日本代表
獲物を狙う猟犬のように

 まるでワールドカップの決勝トーナメントを観ているかのようだった。ウルグアイは攻撃的だ。彼らはボールを失ってもリトリートしてブロックを作ったりせず、その場で激しくプレッシングしてボールの即時奪回を狙う。真っ向勝負だ。

 このやり方は日本も同じで、必然的にピッチのあちこちで激しいデュエルの火花が散った。その壮絶な撃ち合いを制して日本は堂々4-3の勝利。しかも相手はFIFAランク5位の強豪ウルグアイだ。まさに歴史の1ページが開いたと言っても過言ではない。

 日本は攻守の切り替えが速く、いったんボールを持つと攻め切ることができていた。そのため相手からボールを奪っての速攻カウンターが得意なウルグアイは日本に遅攻を強要され、自分たちの形に持ち込むことができなかった。

 それにしても中島、南野、堂安のワンダースリーはすさまじかった。すごい躍動感だ。しかも楽しい。彼らは個の力がすばらしく、数的優位なんていらないんじゃないか? という感じだ。

 中島はえらく俊敏で小回りがきく。彼は細かいステップを踏むドリブルでラツィオ所属のDFカセレスをキリキリ舞いさせ、堂安はワンツーから抜け出しAマドリーのゴディンをぶち抜いてゴラッソを叩き込んだ。

 そして南野はファーストタッチでマーカーを完全に置き去りにした1点目と、シュートのリバウンドを詰めた計2点で3試合連続ゴールである。日本代表は彼ら3人にぐいぐい牽引される形で高みを極めた。

 あのカバーニが、シュートを外し地面を叩いて真剣にくやしがっていたのがやけに印象に残った。彼らはド必死だったのだ。だが勝ったのは日本である。カバーニのシーンは象徴的だった。

メインディッシュは中盤のデュエル

 日本のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが東口。最終ラインは右から酒井、三浦、吉田、長友。セントラルMFは柴崎岳と遠藤航。2列目は右から堂安、南野、中島。ワントップは大迫だ。

 立ち上がり、ウルグアイは日本のビルドアップに対し、激しく前からプレスをかけてきた。

 その彼らのフォーメーションは4-4-1-1。ビルドアップ時にはセントラルMFのルーカス・トレイラ(アーセナル)が左SBとCBの間に下りてくる。これにより左SBのサラッキ(RBライプツィヒ)はかなり高い位置取りをする。彼らはプレイ強度があり、競り合いに非常に強い。

 そのせいか、この試合は激しいデュエルの応酬になった。片方がゆっくりビルドアップし、もう片方がプレッシングでそれを制限する、などという平和なシーンはあまりない。もっぱら中盤での過激なデュエルがメインディッシュである。

足を止めずにパス&ゴー、こぼれ球を詰める

 試合が動いたのは前半10分。左サイドの中島が放ったプラスのクロスに、南野がファーストタッチでマーカーを外し、ゴールをぶち抜いた。美しいゴールだったが、さらに劇的だったのは後半14分の堂安の3点目だった。

 ボックス付近で堂安は左にいた酒井にパス&ゴー。堂安はそのまま足を止めずに酒井からリターンパスをもらい、ゴール左スミに叩き込んだ。一連の動作があまりに速すぎて、一瞬、何が起こったのかよくわからなかった。

 しかもこの日、日本が奪った4点のうち、2点目と4点目はいずれも味方のシュートのリバウンドを詰めたものだ。サッカーでは、誰かがシュートを打つととたんに足が止まりがちになる。だが彼らは決して足を止めず、味方のシュートと同時に前へ突っ込みこぼれ球を詰める。まるで獲物を狙う猟犬のように貪欲だ。

 こんなふうに2列目の若武者3人がガンガン行くタイプなので、柴崎岳と遠藤航の2セントラルMFは上がらずバイタルエリアを埋め、もっぱら予防的カバーリングに徹していた。

 もちろん課題はある。

 3失点のうち1失点目はお決まりのセットプレイからの被弾だし、2失点目と3失点目はミスによるものだ。修正する必要はある。だが彼らのサッカーはそれらを補って余りあるほど魅力的でスペクタクルだ。それに中島のあの子供のような笑顔を見ると、なんだか心が洗われるような気分になる。

 さて、歴史はまだ始まったばかりだ。われわれは少なくとも今後4年間、このチームを楽しめるのだ。日本人は、どえらいコンテンツを手に入れたものである。

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