すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【イラン戦再検証】「狙い通り延長戦に持ち込み勝った」は本当か?

2016-01-26 08:06:57 | サッカー日本代表
イケイケ・ドンドンで加熱しすぎのマスメディア

 リオ五輪最終予選の報道ぶりを見ていると、首をかしげたくなるようなものが多い。別に「メディアにケチをつけてやる」みたいな意味でなく、U-23日本代表について、正確な分析がなされていればいるほど課題を見つけたい日本のためになる。そこで、ちと愚考してみよう。

 特に今回のメディア報道で疑問に思うのは以下の2点だ。

(1)日本は守備が堅い。

(2)イラン戦の日本は、狙い通り延長戦に持ち込み勝った。

 まず(1)の守備については、日本はPKによる1点を除けば無失点で来ていることを論拠にしている。つまり「崩されての失点はない」というわけだ。だが実際には致命的な決定機を何度も作られているし、単純な守備のミスも多い。

 日本のディフェンスは決して鉄壁でもなんでもない。また「抑えるべくして抑えた」わけではまったくない。各ゲームの要所を仔細に分析すれば明白だが、相手の決定力不足に助けられている要素も大きい。

 また(2)のイラン戦の勝因については、確かに手倉森監督は「延長になればコンディションのいい日本が有利になると考えた」旨のコメントをしている。実際、手倉森監督はここまで、ターンオーバーによる日替わりの選手起用により特定の選手に疲労が偏らない采配をしている。また監督が延長戦を視野に入れていたことも事実だろう。

 だがそのことと、「日本は狙い通り延長に持ち込み勝った」というのは別の話だ。

 現にイラン戦は押されっ放しで、日本は90分間で攻めの形をほとんど作れなかった。それだけでなく相手に決定的なシュートチャンスを与えるシーンも多く、イランにもっと決定力があれば日本は90分間で負けていた可能性がかなり高い。つまり他力本願だったわけであり、3-0の勝利は別に日本がイランの攻撃を完全にコントロールして延長戦まで抑え切ったわけでもなんでもない。「狙って延長に持ち込んだ」なんておかしな話だ。

 つまり日本の側に「延長戦に持ち込みたい意思」があったかどうかと、実際にそうなったこととの間に因果関係は薄い。

 いやたとえば日本がもし守備ブロックを90分間低く構え、リトリートからのカウンター狙いに徹して相手を0点に抑えた結果延長戦になったのであれば、「狙って延長戦に持ち込んだ」といえるかもしれない。だが実際の試合内容はそうした経緯をたどってない。

 まとめると、日本側には確かに「延長戦になれば」との考えはあった。だが実際に延長戦にもつれこんだ要因は、イランが決定的なチャンスを決められなかったからである。あたかも日本が試合を意図的にコントロールして勝ったかのような誇大報道は、決して日本のためにならない。

 延長戦での日本の点の取り方があまりにも鮮やかだったために、「イケイケ、ドンドン」の報道ぶりになる気持ちはわかる。だがメディアはもっと客観的に試合を見た上で、「ダメなところはダメ」だときちんと分析してほしい。

 でないと課題を見つけられないし、課題がわからなければ修正もできない。結果、日本は不完全なチーム状態のままズルズル行くことになる。繰り返しになるが、それでは日本のサッカーのためにならない。「ここがこうダメだ」とハッキリいえるメディアこそが、その国のサッカーを育てることができるのである。

 ただしひとつだけいえることは、今回のU-23日本代表は明らかに持っているということだ。さて今夜のイラク戦、サクッと勝ってリオ行きを決めちゃいましょう。

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