すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

リアルな世界とインターネットはどっちがリアル?

2005-05-07 23:58:05 | インターネット
 ネットはバーチャルな世界だ、って言うけどホントだろうか? 実はリアルの世界より、ずっとリアルなんじゃないだろうか?

 たしか私が中学生のとき、学校の国語の教科書に安岡章太郎の自伝が使われていた。安岡はその作品で、自分がいかに勉強のできない子供だったか、自分がどんなにだらしない人間なのか、を書いていた。彼はしきりに「俺はダメなやつだ」「劣等生だった」とくり返し強調するのだ。

 私はそれを読み、子供心に本当にハラが立った。

「でもさあ、あんた、小説家になってるじゃん」

「人生の成功者じゃないか」

 いくら「僕はあなたたちと同じようにダメな人間なんですよ」と言われても、説得力がないのだ。「インチキだろう、その物言いは」。とにかく私は子供ながらに不愉快だった。

 今でこそ当たり前だが、安岡の時代には「学歴だけがすべてじゃない」と言えばそれだけで、「こいつはトンガった奴だ」とされ、先進的だと称えられた。だから彼はそれを売り物にしてた。まあ本心でそう思ってたのかもしれないが。

 こういうのって、よくある話だ。

 メディアにのっかってる人物が、自分のダメ度をテレビや雑誌でアピールする。斜に構えて「いやあ、僕なんかどうしようもない人間なんですよ」と自嘲気味に語る。

 けれども彼はメディアに登場している時点で、成功者である。成功者であるがゆえに、自分の欠点をアピールすればするほど「かっこいいヤツ」になれる。「ダメであること」が、逆に武勇伝になる。

 これが一般人だとそうはいかない。自分の弱点を吹聴すればするほど、権威は失墜する一方だ。ホームレスの人が「僕はダメな人間なんですよ」なんて言ってもシャレにならない。つまり彼は成功者であることで、いくら自分を卑下しようと安全を担保されているわけだ。一種の欺瞞である。

 たとえば「朝まで生テレビ」で、「大学の問題点」をテーマに討論が行われたとしよう。すると出演者は口をそろえて、今の大学がいかに意味のないものであるか、また大学がどんなにくだらない機関に成り下がっているかを強調する。

 だが現役の受験生から見れば、「でもあんたら、そう言いながら東大出てるじゃないか」となってしまう。いっこうに説得力がない。つまり本当にダメな人は、既存メディアには出てこないのだ。これがリアルな世界のしくみである。

 一方、インターネットの世界はどうか? こっちは本当に「ダメな人」が情報発信している。

「僕は働くのがイヤだから、生活保護受けてます」。そんな人がブログを書いていたりする。「30代の独身・無職です。親元にいて遊んでいます」。こういう人とチャットでふつうに出会える。リアル世界より、こっちのほうがよっぽどエキサイティングで現実味がある。

 リアルな世界と、インターネット。果たしてどっちが「リアル」なんだろうか?

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コメント (12)
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