ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

奈良井ダム

2015-11-05 14:00:00 | 長野県
2015年11月3日 奈良井ダム
 
奈良井ダムは長野県塩尻市奈良井の一級河川信濃川水系奈良井川上流部にある長野県建設部が管理するロックフィルダムで、建設省(現国交省)の補助を受けた補助多目的ダムとして1982年(昭和57年)に竣工しました。
治水安全度確率80分の1として最大230立米/秒の洪水をカットし奈良井川下流基準地点で最大200立米/秒の洪水調節を行います。
このほか、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給、塩尻市・松本市への上水道用水の供給を目的としています。
また1984年(昭和58年)に利水放流を利用した長野県企業局奈良井発電所(最大出力830キロワット)が完成し管理用電力として小水力発電を行っています。
長野県営各ダムでは利水放流を利用した小水力発電所を積極的に導入していますが、奈良井発電所はこの先駆けと言えます。
 
県道493号線を奈良井川沿いに南下すると奈良井ダムに到着します。
ダム下から
堤体半分と洪水吐が望めます。
 
洪水吐導流部をズームアップ
洪水吐右岸側(写真向って左手)に放流設備がありますが、立ち入り禁止のため見ることはできません。
 
下流面
ロックフィルダムですが、凍上対策として芝が張られているため見た目はアースダムのようです。
また提体には「奈良井ダム」の植栽が施されているようですが、確認できません。
 
天端は立ち入り禁止。
 
洪水吐導流部
木に隠れていますが、減勢工下流右岸側に放流設備があります。
 
右岸のバスタブ型洪水吐
越流部は非常用洪水吐、奥の穴は常用洪水吐でローラーゲートを備えています。
 
洪水吐をズームアップ
ローラーゲートの左奥の施設は取水設備です。
 
上流面から
ダム湖のならい湖は総貯水容量800万立米。

(追記)
奈良井ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

1030 奈良井ダム(0040)
長野県塩尻市奈良井 
信濃川水系奈良井川
FNW
60メートル
180.8メートル
8000㎥/6400㎥
長野県建設部
1982年
◎治水協定が締結されたダム

草木ダム

2015-11-04 08:30:00 | 群馬県
2015年11月1日 草木ダム
 
草木ダムは左岸が群馬県みどり市東町座間、右岸が同市東町神戸の一級河川利根川水系渡良瀬川にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
終戦直後の1947年(昭和22年)に襲来したカスリン台風により関東各地で滅的被害が発生、これを契機に利根川水系において建設省直轄事業により9ダム建設が企図されます。
渡良瀬川は当初利根川水系9ダムに含まれていませんでしたが、下流域での足尾銅山鉱毒対策として多目的ダム建設が採択されました。
その後、1962年(昭和37年)の『水資源開発促進法』により利根川水系での直轄ダム建設事業は水資源開発公団(現水資源機構)に移管され、草木ダムも同公団の事業によって1977年(昭和52年)に竣工しました。

草木ダムは、渡良瀬川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給、新規開発農地約3000ヘクタールへの特定灌漑用水の供給、東京都・埼玉県及び桐生市・佐野市への上水道用水の供給、東京都・群馬県・足利市への工業用水の供給、群馬県企業局東発電所(最大出力2万300キロワット)でのダム式水力発電を目的としています。
さらに2006年(平成18年)には利水放流による小水力発電を行う群馬県企業局東第二発電所(最大出力240キロワット)が増設されました。
一方ダム計画段階では足尾銅山による鉱毒対策として有害金属成分の沈殿もダムの目的とされていましたが、1973年(昭和38年)の足尾銅山閉山による鉱毒減少により鉱毒防止目的は除外されました。

草木ダムは群馬から日光へ抜ける国道122号線沿いにあります。
国道122号は人気のドライブ・ツーリングコースで湖畔には道の駅、美術館・公営ホテル・キャンプ場などが整備され沿線有数のレクリエーションエリアとなっており、ダム湖の草木湖はダム湖百選に選ばれています。
 
右岸展望台から
堤高140メートルの巨大ダム。
非常用洪水吐としてクレストラジアルゲート4門、常用洪水吐としてオリフィス高圧ラジアルゲート2門を装備。

ゲートをズームアップ
扶壁の穴は空気孔。
 
アングルを変えて
洪水吐右手(左岸)には発電用水圧鉄管が突き出ています。
右下は群馬県企業局東発電所と同東第二発電所。
 
右岸から
対岸に水資源機構草木ダム管理所があります。
 
上流面
訪問した11月1日は非洪水期のため平常時最高貯水位まで貯留可能ですが、秋の雨不足のせいかずいぶん水位が低下していました。
 
天端は車両通行可。
 
左岸の白い建屋は東発電所、右上の小さな建屋は河川維持放流を利用した東第二発電所。
 
ゲート越しの減勢工
右手にカーブしています。
 
ダム湖の草木湖は総貯水容量6050万立米。
湖畔には道の駅や公営ホテル、キャンプ場など観光、レクリエーション施設が多くありダム湖百選に選ばれています。
正面奥の山は日光男体山。

 
左岸から上流面
ゲート左手は取水設備
対岸に艇庫とインクラインがあります。
 
追記
草木ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により洪水期(7月1日~9月30日)は台風等に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0619 草木ダム(0033) 
群馬県みどり市東町座間 
利根川水系渡良瀬川
FNAWIP
140メートル
405メートル
60500㎥/50500㎥
水資源機構
1976年
◎治水協定が締結されたダム

庚申ダム

2015-11-04 08:15:00 | 栃木県
2015年11月1日 庚申ダム
 
庚申ダムは栃木県日光市足尾町の一級河川利根川水系渡良瀬川右支流庚申川にある、栃木県企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
栃木県では県企業局が公営発電事業者として計10カ所の水力発電所を運用していますが、庚申ダムもその一つで足尾発電所の取水および上部調整池として1985年(昭和60年)に建設されました。
渡良瀬川や支流の御子内川で取水された水が庚申ダムに導水・貯留され、庚申川で取水された水と併せて足尾発電所に送られ最大1万キロワットのダム水路式発電を行います。
 
足尾町遠下国道122号線から県道293号に入り、庚申川沿いに進むと右手に庚申ダムが現れます。 
このダムの代表的なショットです。
訪問時はゲートの改修工事が行われていました。

ダム愛好家皆さんの訪問記を見ても撮影スポットが少ないというのが多くの評ですが、ダム直下の河原に下りる踏跡があります。
管理事務所で確認したところダム下は立ち入り禁止ではないとのこと。
ダムカードとほぼ同じアングル、直下からダムを見上げることができます。

縦長のローラーゲートが1門、ゲート下部の穴から河川維持放流が行われています。
向って左手(右岸)の細いゲートは予備放流ゲート。
 

ダムカード

ダム下に下りられたのはいいのですが、それで有頂天になり上流や貯水池の写真を撮らないままで終わりました。
 
追記
庚申ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0585 庚申ダム(0032)
栃木県日光市足尾町 
利根川水系庚申川
29ートル
55.9メートル
195㎥/124㎥
栃木県企業局
1985年
◎治水協定が締結されたダム

足尾砂防堰堤

2015-11-04 08:00:00 | 栃木県
2015年11月01日 足尾砂防堰堤
 
足尾砂防堰堤は栃木県日光市足尾町の一級河川利根川水系松木川にある砂防堰堤です。
足尾銅山の煙害と山火事によって荒廃した渡良瀬川源流域の流出土砂の抑制と河床の安定を目的として建設省(現国交省)直轄事業で1955年(昭和30年)に建設されました。
高さ39メートル、長さ204メートル、貯砂量500万立米と日本最大級の砂防堰堤となっています。
河川法のダムではありませんが、現地では通称『足尾ダム』の名前で親しまれています。
2021年(令和3年)に『渡良瀬川上流域足尾の砂防堰堤群』として土木学会選奨土木遺産に選定されました。
 
砂防ダムとして我が国最大規模の堤体。

壁面には壁画が描かれています。

左下の公園管理棟と比較すれば堰堤の巨大さがわかるでしょう。
 
下流から
連続する6段の砂防ダムとそれを跨ぐ斜張橋の組み合わせは土木ファンおなじみの撮影ポイントです。


これは下流の足尾銅山精錬所跡。

足尾砂防堰堤
栃木県日光市足尾町 
利根川水系松木川
39メートル
204メートル
1955年
国土交通省関東地方整備局

西荒川ダム

2015-11-02 14:15:00 | 栃木県
2015年10月31日 西荒川ダム
 
西荒川ダムは栃木県塩谷郡塩谷町上寺島の一級河川那珂川水系西荒川にある栃木県県土整備部が管理する重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムです。
荒川はその名が示すように暴れ川で、とりわけ利根川水系鬼怒川と河道が錯綜する中下流域では豪雨のたびに甚大な洪水被害が発生していました。
栃木県はまず荒川左支流西荒川への治水ダム建設事業に着手し1968年(昭和43年)に西荒川ダムが完成しますが、荒川の治水能力向上は1999年(平成2年)の荒川本流の東荒川ダムの完成を待つことになります。
西荒川ダムは最大254立米/秒の洪水をカットし、東荒川ダム と併せて荒川の下流基準点で最大384立米/秒の洪水調節を行います。 
また安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給を目的としています。

塩谷町中心部から県道63号~県道273号を北上すると西荒川ダムに到着します
天端の見学が可能で湖岸も縁地として整備されていた東荒川ダム  と異なり、西荒川ダムは道路からフェンス越しに眺めるしかありません。 

天端はゲート部分だけ前面に張り出しています。

ダム上流から
東古屋湖と命名されたダム湖は総貯水容量は430万立米。
 
ゲートをズームアップ
クレストに水色のラジアルゲートが2門、中央にオリフィス予備ゲートが見えます。
 
見学ポイントがほとんどない西荒川ダム。
毎年もりみず旬間に開催される見学会ではダム直下からの姿を見ることができるので機会があれば参加してみたいと思います。
 
(追記)
西荒川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、台風等の襲来に備えて事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。  

0564 西荒川ダム(0028)
栃木県塩谷郡塩谷町上寺島 
那珂川水系西荒川
FN
43.5メートル
116メートル
4300㎥/3500㎥
栃木県県土整備部
1968年
◎治水協定が締結されたダム

佐貫頭首工

2015-11-02 13:45:00 | 栃木県
2015年10月31日 佐貫頭首工
 
佐貫頭首工は栃木県塩谷郡塩谷町佐貫の一級河川利根川水系鬼怒川にある栃木県企業局が管理する灌漑・発電目的の可動堰です。
鬼怒川中流域では長期にわたり灌漑用水の取水は計9カ所の簡易な取水堰に頼るほかなく、流域農家は洪水・渇水両面で苦難を強いられてきました。
戦後、戦争激化で中断していた鬼怒川河水統制事業による五十里ダム建設再開により鬼怒川の治水の安定と灌漑用水確保のめどが立ちました。
そこで五十里ダム竣工前年の1955年(昭和30年)に国営鬼怒川中部農業水利事業が着手され、その取水施設として1966年(昭和41年)に竣工したのが佐貫頭首工です。 
ここで取水された水は約5.5キロの導水路で栃木県企業局風見発電所に送られ最大1万200キロワットの水路式発電を行った後、鬼怒川中流沿岸の約9000ヘクタールの水田に灌漑用水として供給されます。
管理は同事業に発電事業者として参加した栃木県企業局が受託していますが、農林省(現農水省)の事業で建設された農業用取水堰のため『頭首工』の名前がついています。
なお佐貫頭首工の堤高は15メートルに満たずダムの要件を満たしていませんが、栃木県によるダムカードが配布されており今回訪問することにしました。

佐貫頭首工と風見発電所の概要図(栃木県HPより)
 
左岸下流側から
手前から土砂吐ローラーゲート2門、洪水吐ローラーゲート1門、洪水吐起伏ゲート2門と並び、その先右岸側には固定堰が続きます。


上流から


頭首工の左岸に鬼怒川中部用水の取水ゲートがあり、ここから風見発電所まで導水されます。
最大取水量は毎秒42立米です。




佐貫頭首工のダムカード。

佐貫頭首工
栃木県塩谷郡塩谷町佐貫 
利根川水系鬼怒川
AP
MB
栃木県企業局
1964年

中岩ダム

2015-11-02 13:30:00 | 栃木県
2015年10月31日 中岩ダム
 
中岩ダムは左岸が栃木県日光市高徳、右岸が同市小佐越の一級河川利根川水系鬼怒川中流部にある東京電力リニューアルブパワー(株)が管理する発電目的の曲線重力式コンクリートダムです。
水量豊富で急流が続く鬼怒川では明治末期から鬼怒川水力電気(株)による電源開発が進められ、1912年(大正元年)に当時としては日本最大の4万3000キロワットの出力を誇る下滝発電所が完成しました。
しかし下滝発電所の出力調整による鬼怒川の水位変動は大きく、灌漑用水の取水等に毀損を来すなど看過できない状況となりました。
そこで1924年(大正13年)に下滝発電所の下流に建設されたのが中岩ダムです。
中岩ダムは水位変動を緩和する逆調整池としての機能のほか、併せて建設された中岩発電所(最大出力4600キロワット)でダム式発電を行っています。
鬼怒川水力の発電施設は電力管理法により日本発送電の接収を経て、1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により新たに誕生した東京電力が事業継承しました。
その後、1969年(昭和44年)の改修により堤高が1.7メートル嵩上げされるとともに10門あったゲートは6門に変更されましたが、戦前の貴重なアーチ形状のダムと言う点を評価して『近代土木遺産』に選ばれています。
 
ダムと周辺の発電施設は立入禁止になっていて、下流からダム全景を一望できる場所はありません。
ダム便覧にはダム全体を撮った写真が掲際されていますが、あれらは明らかに立ち禁エリアから撮ったもの。 
展望ポイントはどこもダムの半身が見えるだけです。  
丸みを帯びたエプロンの下に水叩きがあり、右岸(向って左手)には魚道があります。
エプロン下部の黒いものは何でしょう?
 
今度はダムの左岸側
右手の白い建屋は中岩発電所。
左岸2門のゲートが小さいのは直下に発電所があることへの配慮でしょう。
 
なんとか全景が見えるか??と思いましたが、手前の木が邪魔。
 
上流の橋から遠望
左岸湖岸にあるのは巡視艇用の繋留設備。
 
こちらはグーグルの航空写真です。

当初は重力式コンクリートダムとされていましたが、ダム建設当時日本にはアーチ理論はなく、今は曲線重力式コンクリートダムに分類されています。
 
(追記)
中岩ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0557 中岩ダム(0026) 
左岸 栃木県日光市高徳 
右岸     同市小佐越 
利根川水系鬼怒川
26.3ートル
107.9メートル
1488㎥/171㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1924年
◎治水協定が締結されたダム

栗谷沢ダム

2015-11-02 13:15:00 | 栃木県
2015年10月31日 栗谷沢ダム
 
栗谷沢ダムは栃木県宇都宮市新里町乙の利根川水系姿川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1948年(昭和23年)に栃木県の事業で竣工と記されていますが詳細は不明です。
管理は新里土地改良区が行っています。
 
宇都宮から県道22号を日光方面に走ると、ケントスゴルフクラブの先で右側にため池が見えてきます。
朝の7時前にもかかわらず、多くの釣り人が釣り糸を垂れていました。
話を伺うと、ここは入漁料などがいらないことから宇都宮近辺では人気の釣りスポットだそうです。
上流面はコンクリートの護岸はなく下部は石積み。

 
貯水池湖岸は敷石で護岸
一応遊歩道として整備されているようです。
 
総貯水容量5万5000立米の小さな溜池。
貯水池上流は芝生が敷かれ東屋もあります。
公園として整備したところ、釣り師には絶好の釣り場になったようです。
 
右岸の横越流式洪水吐。


ため池を一周しましたが、取水施設は確認できませんでした。
ダム下にも行かなかったので底樋も不明です。
再訪してしっかり確認しないといけませんね。

3674 栗谷沢ダム(0025)
ため池コード 92010002 
栃木県宇都宮市新里町乙 
利根川水系栗谷沢
15メートル
115メートル
55㎥/55㎥
新里土地改良区
1948年