ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

西荒川ダム

2015-11-02 14:15:00 | 栃木県
2015年10月31日 西荒川ダム
 
西荒川ダムは栃木県塩谷郡塩谷町上寺島の一級河川那珂川水系西荒川にある栃木県県土整備部が管理する重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムです。
荒川はその名が示すように暴れ川で、とりわけ利根川水系鬼怒川と河道が錯綜する中下流域では豪雨のたびに甚大な洪水被害が発生していました。
栃木県はまず荒川左支流西荒川への治水ダム建設事業に着手し1968年(昭和43年)に西荒川ダムが完成しますが、荒川の治水能力向上は1999年(平成2年)の荒川本流の東荒川ダムの完成を待つことになります。
西荒川ダムは最大254立米/秒の洪水をカットし、東荒川ダム と併せて荒川の下流基準点で最大384立米/秒の洪水調節を行います。 
また安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給を目的としています。

塩谷町中心部から県道63号~県道273号を北上すると西荒川ダムに到着します
天端の見学が可能で湖岸も縁地として整備されていた東荒川ダム  と異なり、西荒川ダムは道路からフェンス越しに眺めるしかありません。 

天端はゲート部分だけ前面に張り出しています。

ダム上流から
東古屋湖と命名されたダム湖は総貯水容量は430万立米。
 
ゲートをズームアップ
クレストに水色のラジアルゲートが2門、中央にオリフィス予備ゲートが見えます。
 
見学ポイントがほとんどない西荒川ダム。
毎年もりみず旬間に開催される見学会ではダム直下からの姿を見ることができるので機会があれば参加してみたいと思います。
 
(追記)
西荒川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、台風等の襲来に備えて事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。  

0564 西荒川ダム(0028)
栃木県塩谷郡塩谷町上寺島 
那珂川水系西荒川
FN
43.5メートル
116メートル
4300㎥/3500㎥
栃木県県土整備部
1968年
◎治水協定が締結されたダム

佐貫頭首工

2015-11-02 13:45:00 | 栃木県
2015年10月31日 佐貫頭首工
 
佐貫頭首工は栃木県塩谷郡塩谷町佐貫の一級河川利根川水系鬼怒川にある栃木県企業局が管理する灌漑・発電目的の可動堰です。
鬼怒川中流域では長期にわたり灌漑用水の取水は計9カ所の簡易な取水堰に頼るほかなく、流域農家は洪水・渇水両面で苦難を強いられてきました。
戦後、戦争激化で中断していた鬼怒川河水統制事業による五十里ダム建設再開により鬼怒川の治水の安定と灌漑用水確保のめどが立ちました。
そこで五十里ダム竣工前年の1955年(昭和30年)に国営鬼怒川中部農業水利事業が着手され、その取水施設として1966年(昭和41年)に竣工したのが佐貫頭首工です。 
ここで取水された水は約5.5キロの導水路で栃木県企業局風見発電所に送られ最大1万200キロワットの水路式発電を行った後、鬼怒川中流沿岸の約9000ヘクタールの水田に灌漑用水として供給されます。
管理は同事業に発電事業者として参加した栃木県企業局が受託していますが、農林省(現農水省)の事業で建設された農業用取水堰のため『頭首工』の名前がついています。
なお佐貫頭首工の堤高は15メートルに満たずダムの要件を満たしていませんが、栃木県によるダムカードが配布されており今回訪問することにしました。

佐貫頭首工と風見発電所の概要図(栃木県HPより)
 
左岸下流側から
手前から土砂吐ローラーゲート2門、洪水吐ローラーゲート1門、洪水吐起伏ゲート2門と並び、その先右岸側には固定堰が続きます。


上流から


頭首工の左岸に鬼怒川中部用水の取水ゲートがあり、ここから風見発電所まで導水されます。
最大取水量は毎秒42立米です。




佐貫頭首工のダムカード。

佐貫頭首工
栃木県塩谷郡塩谷町佐貫 
利根川水系鬼怒川
AP
MB
栃木県企業局
1964年

中岩ダム

2015-11-02 13:30:00 | 栃木県
2015年10月31日 中岩ダム
 
中岩ダムは左岸が栃木県日光市高徳、右岸が同市小佐越の一級河川利根川水系鬼怒川中流部にある東京電力リニューアルブパワー(株)が管理する発電目的の曲線重力式コンクリートダムです。
水量豊富で急流が続く鬼怒川では明治末期から鬼怒川水力電気(株)による電源開発が進められ、1912年(大正元年)に当時としては日本最大の4万3000キロワットの出力を誇る下滝発電所が完成しました。
しかし下滝発電所の出力調整による鬼怒川の水位変動は大きく、灌漑用水の取水等に毀損を来すなど看過できない状況となりました。
そこで1924年(大正13年)に下滝発電所の下流に建設されたのが中岩ダムです。
中岩ダムは水位変動を緩和する逆調整池としての機能のほか、併せて建設された中岩発電所(最大出力4600キロワット)でダム式発電を行っています。
鬼怒川水力の発電施設は電力管理法により日本発送電の接収を経て、1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により新たに誕生した東京電力が事業継承しました。
その後、1969年(昭和44年)の改修により堤高が1.7メートル嵩上げされるとともに10門あったゲートは6門に変更されましたが、戦前の貴重なアーチ形状のダムと言う点を評価して『近代土木遺産』に選ばれています。
 
ダムと周辺の発電施設は立入禁止になっていて、下流からダム全景を一望できる場所はありません。
ダム便覧にはダム全体を撮った写真が掲際されていますが、あれらは明らかに立ち禁エリアから撮ったもの。 
展望ポイントはどこもダムの半身が見えるだけです。  
丸みを帯びたエプロンの下に水叩きがあり、右岸(向って左手)には魚道があります。
エプロン下部の黒いものは何でしょう?
 
今度はダムの左岸側
右手の白い建屋は中岩発電所。
左岸2門のゲートが小さいのは直下に発電所があることへの配慮でしょう。
 
なんとか全景が見えるか??と思いましたが、手前の木が邪魔。
 
上流の橋から遠望
左岸湖岸にあるのは巡視艇用の繋留設備。
 
こちらはグーグルの航空写真です。

当初は重力式コンクリートダムとされていましたが、ダム建設当時日本にはアーチ理論はなく、今は曲線重力式コンクリートダムに分類されています。
 
(追記)
中岩ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0557 中岩ダム(0026) 
左岸 栃木県日光市高徳 
右岸     同市小佐越 
利根川水系鬼怒川
26.3ートル
107.9メートル
1488㎥/171㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1924年
◎治水協定が締結されたダム

栗谷沢ダム

2015-11-02 13:15:00 | 栃木県
2015年10月31日 栗谷沢ダム
 
栗谷沢ダムは栃木県宇都宮市新里町乙の利根川水系姿川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1948年(昭和23年)に栃木県の事業で竣工と記されていますが詳細は不明です。
管理は新里土地改良区が行っています。
 
宇都宮から県道22号を日光方面に走ると、ケントスゴルフクラブの先で右側にため池が見えてきます。
朝の7時前にもかかわらず、多くの釣り人が釣り糸を垂れていました。
話を伺うと、ここは入漁料などがいらないことから宇都宮近辺では人気の釣りスポットだそうです。
上流面はコンクリートの護岸はなく下部は石積み。

 
貯水池湖岸は敷石で護岸
一応遊歩道として整備されているようです。
 
総貯水容量5万5000立米の小さな溜池。
貯水池上流は芝生が敷かれ東屋もあります。
公園として整備したところ、釣り師には絶好の釣り場になったようです。
 
右岸の横越流式洪水吐。


ため池を一周しましたが、取水施設は確認できませんでした。
ダム下にも行かなかったので底樋も不明です。
再訪してしっかり確認しないといけませんね。

3674 栗谷沢ダム(0025)
ため池コード 92010002 
栃木県宇都宮市新里町乙 
利根川水系栗谷沢
15メートル
115メートル
55㎥/55㎥
新里土地改良区
1948年