ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

草木ダム

2015-11-04 08:30:00 | 群馬県
2015年11月1日 草木ダム
 
草木ダムは左岸が群馬県みどり市東町座間、右岸が同市東町神戸の一級河川利根川水系渡良瀬川にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
終戦直後の1947年(昭和22年)に襲来したカスリン台風により関東各地で滅的被害が発生、これを契機に利根川水系において建設省直轄事業により9ダム建設が企図されます。
渡良瀬川は当初利根川水系9ダムに含まれていませんでしたが、下流域での足尾銅山鉱毒対策として多目的ダム建設が採択されました。
その後、1962年(昭和37年)の『水資源開発促進法』により利根川水系での直轄ダム建設事業は水資源開発公団(現水資源機構)に移管され、草木ダムも同公団の事業によって1977年(昭和52年)に竣工しました。

草木ダムは、渡良瀬川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給、新規開発農地約3000ヘクタールへの特定灌漑用水の供給、東京都・埼玉県及び桐生市・佐野市への上水道用水の供給、東京都・群馬県・足利市への工業用水の供給、群馬県企業局東発電所(最大出力2万300キロワット)でのダム式水力発電を目的としています。
さらに2006年(平成18年)には利水放流による小水力発電を行う群馬県企業局東第二発電所(最大出力240キロワット)が増設されました。
一方ダム計画段階では足尾銅山による鉱毒対策として有害金属成分の沈殿もダムの目的とされていましたが、1973年(昭和38年)の足尾銅山閉山による鉱毒減少により鉱毒防止目的は除外されました。

草木ダムは群馬から日光へ抜ける国道122号線沿いにあります。
国道122号は人気のドライブ・ツーリングコースで湖畔には道の駅、美術館・公営ホテル・キャンプ場などが整備され沿線有数のレクリエーションエリアとなっており、ダム湖の草木湖はダム湖百選に選ばれています。
 
右岸展望台から
堤高140メートルの巨大ダム。
非常用洪水吐としてクレストラジアルゲート4門、常用洪水吐としてオリフィス高圧ラジアルゲート2門を装備。

ゲートをズームアップ
扶壁の穴は空気孔。
 
アングルを変えて
洪水吐右手(左岸)には発電用水圧鉄管が突き出ています。
右下は群馬県企業局東発電所と同東第二発電所。
 
右岸から
対岸に水資源機構草木ダム管理所があります。
 
上流面
訪問した11月1日は非洪水期のため平常時最高貯水位まで貯留可能ですが、秋の雨不足のせいかずいぶん水位が低下していました。
 
天端は車両通行可。
 
左岸の白い建屋は東発電所、右上の小さな建屋は河川維持放流を利用した東第二発電所。
 
ゲート越しの減勢工
右手にカーブしています。
 
ダム湖の草木湖は総貯水容量6050万立米。
湖畔には道の駅や公営ホテル、キャンプ場など観光、レクリエーション施設が多くありダム湖百選に選ばれています。
正面奥の山は日光男体山。

 
左岸から上流面
ゲート左手は取水設備
対岸に艇庫とインクラインがあります。
 
追記
草木ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により洪水期(7月1日~9月30日)は台風等に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0619 草木ダム(0033) 
群馬県みどり市東町座間 
利根川水系渡良瀬川
FNAWIP
140メートル
405メートル
60500㎥/50500㎥
水資源機構
1976年
◎治水協定が締結されたダム

庚申ダム

2015-11-04 08:15:00 | 栃木県
2015年11月1日 庚申ダム
 
庚申ダムは栃木県日光市足尾町の一級河川利根川水系渡良瀬川右支流庚申川にある、栃木県企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
栃木県では県企業局が公営発電事業者として計10カ所の水力発電所を運用していますが、庚申ダムもその一つで足尾発電所の取水および上部調整池として1985年(昭和60年)に建設されました。
渡良瀬川や支流の御子内川で取水された水が庚申ダムに導水・貯留され、庚申川で取水された水と併せて足尾発電所に送られ最大1万キロワットのダム水路式発電を行います。
 
足尾町遠下国道122号線から県道293号に入り、庚申川沿いに進むと右手に庚申ダムが現れます。 
このダムの代表的なショットです。
訪問時はゲートの改修工事が行われていました。

ダム愛好家皆さんの訪問記を見ても撮影スポットが少ないというのが多くの評ですが、ダム直下の河原に下りる踏跡があります。
管理事務所で確認したところダム下は立ち入り禁止ではないとのこと。
ダムカードとほぼ同じアングル、直下からダムを見上げることができます。

縦長のローラーゲートが1門、ゲート下部の穴から河川維持放流が行われています。
向って左手(右岸)の細いゲートは予備放流ゲート。
 

ダムカード

ダム下に下りられたのはいいのですが、それで有頂天になり上流や貯水池の写真を撮らないままで終わりました。
 
追記
庚申ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0585 庚申ダム(0032)
栃木県日光市足尾町 
利根川水系庚申川
29ートル
55.9メートル
195㎥/124㎥
栃木県企業局
1985年
◎治水協定が締結されたダム

足尾砂防堰堤

2015-11-04 08:00:00 | 栃木県
2015年11月01日 足尾砂防堰堤
 
足尾砂防堰堤は栃木県日光市足尾町の一級河川利根川水系松木川にある砂防堰堤です。
足尾銅山の煙害と山火事によって荒廃した渡良瀬川源流域の流出土砂の抑制と河床の安定を目的として建設省(現国交省)直轄事業で1955年(昭和30年)に建設されました。
高さ39メートル、長さ204メートル、貯砂量500万立米と日本最大級の砂防堰堤となっています。
河川法のダムではありませんが、現地では通称『足尾ダム』の名前で親しまれています。
2021年(令和3年)に『渡良瀬川上流域足尾の砂防堰堤群』として土木学会選奨土木遺産に選定されました。
 
砂防ダムとして我が国最大規模の堤体。

壁面には壁画が描かれています。

左下の公園管理棟と比較すれば堰堤の巨大さがわかるでしょう。
 
下流から
連続する6段の砂防ダムとそれを跨ぐ斜張橋の組み合わせは土木ファンおなじみの撮影ポイントです。


これは下流の足尾銅山精錬所跡。

足尾砂防堰堤
栃木県日光市足尾町 
利根川水系松木川
39メートル
204メートル
1955年
国土交通省関東地方整備局