ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

伊良原ダム

2025-03-22 08:00:00 | 福岡県
2017年6月16日 伊良原ダム
2023年3月13日
 
伊良原(いらはら)ダムは福岡県京都郡みやこ町犀川下伊良原の二級河川祓川本流にある福岡県県土整備部が管理する多目的の重力式コンクリートダムです。
福岡県北東部を貫流する祓川は古くから京築地区の貴重な灌漑水源となっていましたが、河川流量の季節変動が大きく渇水や洪水が多発し抜本的な治水対策が求められていました。
一方、高度成長以降の人口増や生活様式の変化を受け各地で水道整備が進みますが、田川地区や京築地区では水源が乏しく給水制限が慢性化し安定した都市用水源確保が喫緊の課題となっていました。
これらの諸課題に対処するために1974年(昭和49年)に福岡県は祓川への多目的ダム建設を採択しますが用地買収等が難航し事業は長期化、その間、2010年(平成22年)には国土交通省による検証対象となりました。しかし、流域の切実な水不足等を斟酌し早々に事業継承が決定、2014年(平成26年)に本体建設が着手され2017年(平成29年)に伊良原ダムが竣工しました。
伊良原ダムは国土交通省の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、祓川の洪水調節(最大毎秒390立米の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定かんがい用水への補給、田川広域水道企業団及び京築地区水道企業団への上水道用水の供給を目的としています。
伊良原ダムには本体打設完了直後の2017年(平成29年)6月に初訪、2025年(令和7年)3月に再訪しました。
ブログ前半は再訪時、後半は初訪時の写真となってります。

ダム下から
堤高81.3メートル、堤頂長339メートルと補助ダムとしてはなかなか立派な躯体。
右岸接岸部が緩やかに湾曲しています。
写真右手は田川広域水道企業団と京築地区水道企業団の分水設備でともに専用の水道管で浄水場に送水されます。


非常用洪水吐はクレスト自由越流頂11門、常用洪水吐は自然調節型オリフィス2門
ダム下左岸側(向かって右手)に放流設備建屋が見えます。


天端に上がります。
左岸ダムサイトの竣工記念碑は九州らしく金箔仕様。


天端は車両通行可能。
上流側の大きな建屋は取水設備機械室、下流側はエレベーター棟。


天端から減勢工を見下ろします。
エンドシルが1基、減勢工左手に放流設備、左手奥は水道用分水設備。


上段は利水放流設備で河川維持や不特定利水向け放流を行います。
下段のバルブは緊急放流設備で通常は低水放流や水位低下放流を行います。
訪問時は利水放流設備の不具合により緊急放流設備と併用して放流が行われていました。


水利使用標識
田川広域水道企業団及び京築地区水道企業団向け水利権が配分されています。


総貯水容量2870万立米は五ケ山ダム小石原川ダムに次いで県下三番目のスケールです。


右岸高台のケーブルクレーン台座跡。


右岸から下流面
右岸(手前側)がわずかに屈曲しています。


左岸の巡視艇係留設備。


右岸高台から。


個人的にはこのアングルが一番好み。
対岸(左岸)に管理所があります。


ダム湖左岸を通る国道496号線沿いに見学台があり、そこから遠望。


見学台の説明板。


見学台のモニュメント。


ここからは2017年(平成29年)6月の初訪時の写真となります。

訪問一か月前に本体コンクリート打設が終了したばかり。
ゲート部分や天端の作業ののち同年10月より試験湛水が開始されました。


左岸の係留設備。


右岸上流側の骨材プラント。


初訪から8年。
ようやく完成後の見学が叶いました。
 
(追記)
伊良原ダムは台風の襲来に備え事前放流を行う治水協定が締結されています。 
 
2441 伊良原ダム(1023)
福岡県京都郡みやこ町犀川下伊良原
祓川水系祓川
FNW
 
81.3メートル
339メートル
28700千㎥/27500千㎥ 
福岡県県土整備部
2017年
◎治水協定が締結されたダム


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