ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

猿谷ダム

2016-01-08 09:00:00 | 奈良県
2016年1月1日 猿谷ダム
 
奈良盆地は豊かな穀倉地でありながら大河がないため灌漑用水は天水や溜池に頼っており、安定した水源確保は江戸時代からの悲願でした。
紀の川上流の吉野川から奈良盆地への導水を計画しますが、紀の川下流域の和歌山県の反発が強く長らく合意に至ることはありませんでした。
そこで水量が豊富ながら流域の大半が山間部のため大きな利水需要のない新宮川に着目、『十津川・紀の川総合開発事業』が策定されました。
これは吉野川分水路により紀の川(奈良県では吉野川)から奈良盆地へ導水する一方で、新宮川上流の十津川にダムを作り紀の川支流丹生川に導水して吉野川分水路で利用する水を補てんするというものです。
これにより長年安定した水源の確保を求めていた奈良盆地の悲願が達成されることになりました。
 
猿谷ダムは同事業の中核として新宮川上流十津川に着工された重力式コンクリートダムで、当初は奈良県の事業としてスタート、その後建設省が継承し1957年(昭和32年)に竣工しました。
十津川支流の各河川から川原樋川導水トンネルを経て猿谷ダム貯水地に貯留された水は坂本取水口から紀の川水系丹生川に流域変更して導水され、紀の川中下流域での既得水利権分の水を補給しています。
また丹生川において電源開発の西吉野第一発電所で最大3万3000キロワット、西吉野第二発電所で最大1万3100キロワットの発電を行っています。
一方で猿谷ダムは全国でも2基しかない洪水調節機能を持たない国交省直轄ダムとなっています。
 
十津川紀の川土地改良事業概略図(奈良県のホームページより)
 
川原樋川導水トンネル概略図(紀の川ダム統合管理事務所ホームページより)
 
五條から国道168号を南下、分水嶺となる天辻トンネルを抜けると猿谷貯水池が見えてきます。
新猿谷トンネル手前で旧道に入るとダムサイトに到着します。
もろ逆光のため苦しい撮影です。
 
 
天端はゲート部だけ前面にせり出しています。
昭和30年代のダムらしく円形のバルコニーが設置されています。
 
洪水吐導流部
コンジットから放流しています。
 
右岸から。
 
 
猿谷ダムだけにダムサイトのベンチにはおサルさんがいます。
 
申年だけに、今年最初のダム巡りでどうしても訪問したかった猿谷ダムでした。
 
(追記)
猿谷ダムは洪水調節容量の配分がありませんが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1559 猿谷ダム(0167) 
左岸 奈良県五條市大塔町辻堂
右岸        同町猿谷
新宮川水系熊野川
NP
74メートル
170メートル
23300千㎥/17300千㎥
国交省近畿地方整備局
1957年
◎治水協定が締結されたダム


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