ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

西之谷ダム

2022-06-04 20:00:00 | 鹿児島県
2022年5月22日 西之谷ダム
 
西之谷ダムは左岸が鹿児島県鹿児島市小野町、右岸が同市西別府町の新川水系新川にある鹿児島県土木部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
新川は幹線流路12.5キロ、流域面積19.1平方キロの中小河川ですが、中下流域は鹿児島市中心部を貫流し、時間雨量50ミリ超の降雨のたびに甚大な洪水被害を引き起こしてきました。
1992年(平成4年)に当地へのダム建設が採択されますが、鹿児島県特有の透水性の高い火山灰土壌、いわゆるシラス地盤へのダム建設ということでその技術的検討に長期間を要すことになります。  
そして2009年(平成21年)にようやく本体が着工され2012年(平成24年)に西之谷ダムが竣工しました。  
西之谷ダムは国交省の補助を受けた補助治水ダムで、普段はダムに貯留しない流水型治水ダムとなっています。  
シラス土壌へのダム建設ということで上流面へのフィレットの設置、基礎地盤の強度から堤高に限界があるため貯水容量確保のため貯水池の掘削が行われるなど各所に苦労の跡が見えるます。  
一方で、周辺環境との調和も図られ普段水を溜めない貯水池はジオトープ化され人工的な湿地、クリークなどが整備されています。  

ダム周辺が親水公園のようになっており、ダム下流高台に東屋が設置されたり遊歩道が整備されています。
本体は堤高21.5メートル、堤頂長135.8メートルの小ぶりな横長ダム。
非常用洪水吐としてクレスト自由越流頂4門、常用洪水吐として自然調節式オリフィス1門を備えたゲートレスダムです。
減勢目的のため、ダム下流の流路は蛇行しています。


真正面から
通常は流入量をそのまま放流する流水型治水ダムで、流路には魚が遡上できるよう魚道が設けられています。
流入量30立米/秒以上を洪水としており、30立米/秒を超える分をダムでカットします。


中央が魚道。


魚が遡上できるようエンドシルにも大きなスリットが入っています。


下流面。


左岸管理事務所脇の竣工記念碑。


天端から減勢工を見下ろす
中央の白い筋が魚道
下流は減勢のため大きく蛇行します。


貯水池
有効貯水容量71万8000立米ですが、流水型治水ダムのため普段は空っぽ。
写真ではわかりづらいですが、貯水池はジオトープ化され人工的な湿地、クリークなどが整備されています。    


天端及び右岸道路は徒歩のみ通行可能
湖岸にはベンチや東屋が設けられ周辺住民憩いの場となっています。


上流面にはシラス土壌対策としてコンクリートダムとしては珍しいフィレットがついています。
上流面にフィレットがついた重力式ダムとしては長崎の鳴見ダムや富山の境川ダムなどがあります。


常用洪水吐には流水型治水ダムではおなじみ、塵芥避けのスクリーンが設置されています。


2875 西之谷ダム(1831)
左岸 鹿児島県鹿児島市小野町
右岸       同市西別府町 
新川水系新川 
 
 
21.5メートル 
135.8メートル 
793千㎥/718千㎥ 
鹿児島県土木部
2012年


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