ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

永源寺ダム

2024-01-11 08:00:00 | 滋賀県
2016年 3月20日 永源寺ダム
2023年11月25日
 
永源寺ダムは左岸が滋賀県東近江市永源寺相谷町、右岸が同市九居瀬町の一級河川淀川水系愛知川にある滋賀県農政水産部が管理する灌漑・発電目的の重力式コンクリート・フィル複合ダムです。
琵琶湖東岸、近江盆地中央を横断する愛知川沿岸は滋賀県屈指の穀倉地帯となっていますが、水源となる愛知川は集水域が些少かつ天井川となっており洪水と渇水を繰り返し、安定した水源確保は流域農民の永年の悲願となっていました。
流域自治体や農家による陳情の結果、1952年(昭和27年)に農林省(現農水省)による国営土地改良事業愛知川地区が着手され、その灌漑用水源として1972年(昭和47年)に竣工したのが永源寺ダムです。
事業全体も1983年(昭和58年)に完了し約8000ヘクタールにわたる農地への灌漑・排水設備の整備や圃場整備が行われ当地区の農業水利事業は大きく改善しました。
事業完了以降ダムの管理は滋賀県農政水産部が受託し、現在は約6900ヘクタールの農地に灌漑用水を供給するとともに関西電力永源寺発電所で最大5000キロワットのダム式発電を行っています。
ダムの下流にはダム名の由来となった紅葉の名所永源寺があるほか、ダム湖の永源寺湖周辺は登山や釣りなどが楽しめる自然公園として整備されダム湖百選に選ばれています。

永源寺ダムには2016年(平成28年)3月に初訪、2023年(令和5年)11月に再訪しました。
掲載する写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
 
名神高速八日市インターから国道421号を東に約11キロ、車で15分ほどで永源寺ダムに到着します。
まずはダム下へ。
農業ダムのため洪水吐はクレストラジアルゲート4門だけ。
赤いゲートが鮮やか。
(2023年11月25日)


ダム直下まで立ち入れ堤体にタッチできます。
ダム下から左岸フーチングを見上げる。
(2023年11月25日)

 
左岸ダムサイトから
堤高73.5メートル、堤頂長は392メートルに及びます。
左岸側がわずかに屈曲
フィルダムは右岸側の一部を占めるだけなので、こちらから見るとコンクリートダムにしか見えません。
(2023年11月25日)
 
ダムサイトの水利使用標識
当初8000ヘクタールだった受益農地は6877ヘクタールまで減少しています。
(2023年11月25日)

 
ダム左岸を国道421号線が走り、ダムサイトにはダム名のついたバス停。
(2023年11月25日)

 
同じく左岸ダムサイトのダム湖百選のプレート。
(2023年11月25日)


ダム湖百選に選ばれている永源寺湖
総貯水容量は2274万2000立米と農業用ダムとしては全国屈指のサイズ。
再訪時は灌漑期が終わり、ゲートの改修工事のためダム最低水位まで下げられていました。
(2023年11月25日)

 
左岸管理事務所とインクライン。
インクラインは途中で斜度が変わります。
水位が低いのでかなり長く感じます。
(2023年11月25日)

 
こちらは初訪時の管理事務所とインクライン。
ほぼ満水位。
(2016年3月20日)

天端は徒歩のみ開放
昭和30年代着工ということで設備は何かと大がかり。
下流側のエレベーター棟と上流側の取水設備はつながっています。
(2023年11月25日)


ゲート越しに見下ろす減勢工と発電所。
(2023年11月25日)

 
取水ゲートは多段ゲートと低水取水ゲートの2門があります。
写真は多段ゲート。
(2023年11月25日)

 
ダム下の関西電力永源寺発電所
利水従属で最大出力5000キロワットのダム式発電を行います。
こちらもゲート交換用のガントリーを備えるなど大掛かりな造り。
(2023年11月25日)

 
右岸フィル部から
左岸同様屈曲し、万一の堤体越流に備え重力式コンクリート部よりも天端標高が1メートル高くなっています。
(2023年11月25日)

 
フィルコンバインドダムでは必見、コンクリートとフィルの接続部。
(2023年11月25日)

右岸から
ここから見るとフィルコンバインドダムであること、フィル部の天端標高が高くなっているのがよくわかります。
(2023年11月25日)

こちらは初回訪問時の上流面
ほぼ満水位。
(2016年3月20日)

 
こちらは再訪時
ゲート工事に備え最低水位まで下げられています。
(2023年11月25日)

 
ズームアップ
1番2番ゲートと3番4番ゲートで敷高が異なります。
(2023年11月25日)

管理事務所で確認すると灌漑期が終われば水位は下げるのですが、今回は改修に備え最低水位まで下げたとのこと。
これはこれでレアな光景だそうです。
 
(追記)
永源寺ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1361 永源寺ダム(0258)
左岸 滋賀県東近江市永源寺相谷町
右岸        九居瀬町
淀川水系愛知川
AP
GF
73.5メートル
73.5メートル
392メートル
滋賀県農政水産部
1972年
◎治水協定が締結されたダム


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