ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

西古屋ダム

2023-04-04 18:35:00 | 栃木県
2015年10月31日 西古屋ダム
2023年 3月20日
 
西古屋ダムは栃木県塩谷郡塩谷町船生の一級河川利根川水系鬼怒川左支流白石川にある東京電力リニューアブルパワー(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により新たに誕生した東京電力は戦後の電力不足に対処するため積極的な電源開発や既設発電施設の増強を進めます。
鬼怒川水系では流域最大の発電能力を持つ下滝発電所の再開発に着手、1963年(昭和38年)に鬼怒川発電所として生まれ変わり、発電能力は従来の4万3000キロワットから12万7000キロワットに大幅増強されました。
一方で、従来下滝発電所の逆調整池の機能を担っていた中岩ダムでは増強された新発電所の水位変動を吸収することは不可能なため、鬼怒川左支流白石川に新たな逆調整池として西小屋ダムを建設するとともに、鬼怒川発電所放流口から当ダムへの導水トンネルを開削しました。
西古屋ダムは鬼怒川発電所と同じ1963年(昭和38年)に完成し、鬼怒川発電所の放流水の水量調整を行うとともに、併せて建設された塩谷発電所(最大出力9200キロワット)でダム式発電を行います。
全国には多くの発電用逆調整池がありますが、西古屋ダムのように河川変更による逆調整池は非常に珍しい存在と言えます。
西古屋ダムには2015年(平成17年)10月に初訪、2023年(令和5年)3月に再訪しました。
日時掲載写真以外はすべて再訪時のものです。

ダムには左右両岸からアプローチできますが、まずは右岸から
右岸の堤体は川からさらに50メートル以上続いています。
盛土されたのか?基礎地盤の関係でこうなったのか?

アングルを変えて。


右岸から超広角で
右岸ダム下に放流設備と分水工があります。
ここではダム建設以前からの既得灌漑用水と河川維持放流を分水します。


分水工をズームアップ
左手が河川維持放流、ゲートの先が灌漑用水路となります。
訪問時は非灌漑期のため、ゲートが閉められ河川維持放流が左手から白石川に流下します。
灌漑期になるとゲートが開けられ余水が河川維持放流となります。


洪水吐としてクレスト自由越流頂7門を備えています。
下の穴は排砂ゲート。


左岸から
写真左下に河川維持放流が見えます。(2015年10月31日)


転流工トンネル。(2015年10月31日)


左岸から天端
初回訪問時は天端への立ち入り規制はありませんでした。
現在は立ち入り禁止となっています。(2015年10月31日)


水利使用標識。


天端から減勢工を見下ろす
集水の大半が鬼怒川からの導水によるためか?水叩きだけの簡易な減勢工。
(2015年10月31日)


堤体右岸側にあるフローティング式の取水設備
ここで取水された水が3枚目、4枚目写真の分水工に送られます。
(2015年10月31日) 


上流面
手前が塩谷発電所向け取水工
奥の取水塔は今は稼働してないようです。


総貯水容量54万7000立米の貯水池。
白石川の集水域はわずか3%で貯水量の大半は鬼怒川からの導水に依ります。


鬼怒川からの導水路吐口。
 
(追記)
西古屋ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0562 西古屋ダム(0027) 
栃木県塩谷郡塩谷町船生 
利根川水系白石川
21.5メートル
189.7メートル
547㎥/400㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1963年
◎治水協定が締結されたダム


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