ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

浅川ダム

2017-08-04 00:00:26 | 長野県
2017年7月29日 浅川ダム
 
浅川ダムは長野市真光寺の信濃川水系千曲川左支流浅川上流部にある長野県建設部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
飯綱山に源を発し長野市街北部を東西に横断して千曲川に注ぐ浅川は全長約17キロ、流域面積73平方キロの一級河川ですが、上流域は急流河川、中流域は天井川を形成しほぼ毎年のように洪水が発生していました。
1977年(昭和52年)に長野県は浅川上流部への多目的ダム実施計画が採択され、多目的ダムによる治水・利水事業を図り2000年(平成12年)には本体工事契約の締結まで漕ぎ着けました。
ところが同年就任した田中知事は『脱ダム宣言』を発表、浅川ダムについても工事契約を解約し本体工事は事業中止、ダムに依らない治水対策が検討されました。
しかし田中知事の後を継いだ村井知事はダムを含めた治水計画を再検討し、新たに流水型治水専用ダムの建設という形で浅川ダム事業が再採択されました。そして2010年(平成22年)に本体工事に着手し2016年(平成28年)に竣工したのが浅川ダムです。
ダムは同年3月より浅川の洪水調節を目的とする治水専用ダムとして運用が開始されました。
浅川ダムは全国でも数少ない流水型の治水専用ダムで、通常はダム湖には水を貯めず浅川の水はそのままダムを潜り下流へと流下します。一方洪水時は貯水池に110万立米まで貯水して下流の洪水を食い止め、100年に一度の規模の洪水まで対応できる設計となっています。
 
今回は『森と湖に親しむ旬間』に併せて実施される『浅川ダム祭り』のダム見学会に参加させていただきました。
長野市街中心部から県道37号を北上すると、浅川東条交差点に『浅川ダム』を示す標識が出ています。これに従って左折し真光寺ループを超えると浅川ダム左岸ダムサイトに到着します。
 
上流から
非常用洪水吐としてクレストには6門の自由越流式洪水吐があります。
一方堤体は左岸が屈曲しているのが特徴です。
 
下流から
中央の建物はエレベーター棟
クレスト放流に備え背の高い堤趾導流壁が設置されています。
 
治水専用ダムのため普段はダム湖には水はありませんが洪水時には110万立米の水が貯留されます。
手前のゲートは建設工事期間中の転流用のゲートで、運用開始後は流木や土石除けの役目を果たします。
 
ズームアップ
ダム湖上流部は湖岸保護のため階段状の流路が作られ、流路右岸側(向かって左手)にはジグザグの魚道が設置されています。
 
堤体直上の眺め
水がない治水専用ダム独特の眺めです。
平時は、浅川の水は真下見える流木除けのゲージ(鳥籠)の下にある常用洪水吐から堤体を潜って流下します。
 
天端から見た減勢工
洪水時、クレストを越流した水は堤趾導流壁内の減勢工へ向かいます
平時は常用洪水吐から流下した水は左手の減勢工から下流に流下します。
 
天端は24時間開放されています
長野市街の絶好の夜景展望ポイントだそうです。
 
下流から。
 
減勢工をズームアップ
向かって左手は洪水時クレストを越流した際の減勢工
中央は常用洪水吐からの水路
一番右手の細い水路は魚道。
 
複雑な構造ですが、見れば見れるほど『実に面白い』。
 
今回は見学会ということで常用洪水吐の中も見せていただけました。
向かって左が水路、右は魚道。
 
政治に翻弄されながら、今年無事に運用が開始された浅川ダム。
関心の高さを示すように見学会も大盛況、午前10時過ぎには午後の部も含めてすべての定員がいっぱいになってしまいました。
ダム周辺も整備され、24時間開放される天端は長野夜景の展望スポットとして観光名所になればいいですね。
 
1036 浅川ダム(1095)
長野県長野市真光寺
信濃川水系浅川
53メートル
165メートル
1100千㎥/1060千㎥
長野県建設部
2016年


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