ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

菅野ダム

2017-07-31 10:08:58 | 山口県
2017年7月18日 菅野ダム 
 
菅野ダムは山口県周南市(旧徳山市)の錦川本流上流部にある山口県営の多目的重力式コンクリートダムです。
錦川は山口・島根県境の莇ヶ岳に源を発し大きく蛇行を繰り返したのち支流の宇佐川、生見川をあわせて岩国市中心部を貫流して瀬戸内海にそそぐ延長110キロの山口県最大の河川です。
錦川水系では戦前より山口県電気局により電源開発が進められる一方、1940年(昭和15年)には上流部に河水統制事業として日本で最初の多目的ダムである向道ダムが建設されました。
しかし1945年(昭和20年)の枕崎台風、1950年(昭和25年)のキジア台風、1951年(昭和26年)のルース台風と立て続けに襲来した台風により流域は甚大な被害を受け抜本的な洪水対策を求める声が高まりました。
他方、戦後周防灘沿岸地域は工業地帯として発展、急増する都市用水の需要に対処するため新たな水源確保が至上命題となりました。
そこで山口県は錦川総合開発計画を策定、1965年(昭和40年)に向道ダム下流の錦川に竣工したのが菅野ダムです。
しかし菅野ダム運用開始後も錦川中下流域での洪水被害が続く一方、瀬戸内海沿岸部の工業化に伴う水需要もさらに増加の一途をたどりました。
これを受けて山口県は1984年(昭和59年)に錦川左支流生見川に生見川ダムを建設、さらに現在岩国市錦町で平瀬ダムが建設中となっています。 
菅野ダムは生見川ダムと連携しての錦川の洪水調節、周南地区への上水道用水と工業用水の供給を目的とするほか山口県企業局菅野発電所で最大出力1万4500キロワットの発電を行っています。
 
菅野ダムは天端を国道434号線を通っておりアプローチは簡単です。
天端は国道ですがさほど交通量は多くありません。
左手はゲート操作室。
 
手前は竣工当時からの取水設備
奥の巨大な建屋は後付で設置された選択取水設備の機械室。
 
ダム湖(菅野湖)は総貯水容量9500万立米と県営ダムとしてはかなり大きな規模です。
 
減勢工
右手に山口県企業局菅野発電所。
 
右岸川下流面
堤体は右岸で屈曲しています。
 
右岸から発電所。
 
下流面
写真ではよく見えませんがクレストは3門の赤いラジアルゲート
手前の白い出っ張りは後付で設置された選択取水設備のためのもののようです。
その下の水圧鉄管は選択取水設備から発電所への鉄管で、もともとは堤体下部の取水口から直接発電所に送水されていましたが、低温の水が下流の鮎の生態に影響を与えるということで選択取水設備と青い鉄管が付加され、現在はブレンドされた水が発電所に送られています。
 
ダム右岸に公園があり錦川総合開発事業の記念碑などが設置されています。
 
公園からはダムを俯瞰できます。
やはり選択取水設備の建屋が目立ちます。
 
菅野湖上流、県道8号線川久保橋から遠望。
 
残念ながらダムを下流から見るスポットはありません。
菅野ダムの見学会の際にダム下まで入ることができるようです。
 
追記
菅野ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました
 
2075 菅野ダム(1088
山口県周南市中須北
北緯34度08分28秒,東経131度54分14秒
錦川水系錦川
FWIP
87メートル
272メートル
95000千㎥/91200千㎥
山口県土木建築部
1965年
◎治水協定が締結されたダム


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