ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

尾原ダム

2018-10-26 16:00:27 | 島根県
2018 年10月13日 尾原ダム 
 
尾原ダムは島根県雲南市木次町北原の一級河川斐伊川水系斐伊川上流部にある重力式コンクリートダムです。
斐伊川は「ヤマタノオロチ」の起源とされるなど古くから暴れ川として知られ斐伊川の治水は当地を治める為政者にとっては永続的な課題となっていました。
建設省中国地方建設局(現国交省中国地方整備局)は斐伊川・神戸川・宍道湖・中海一帯の治水を柱とした「斐伊川・神戸川総合開発事業」を採択し、長年にわたる補償交渉を経て2010年(平成22年)に竣工したのが尾原ダムです。
尾原ダムは国交省中国地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、斐伊川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、島根県企業局を通じた松江市・出雲市・雲南市北部への上水道用水の供給を目的としています。
事業計画から建設着手まで長期にわたる補償交渉があったことも踏まえ、本体工事に先立つ2005年(平成17年)に国交省より『地域に開かれたダム事業』の指定を受け、ダムを観光・レジャー拠点として有効活用することとなり、ボート競技施設の開設やダム湖周辺のサイクリングリードの整備が進められました。
一方斐伊川水系の治水については尾原ダム竣工翌年の2011年(平成23年)に神戸川の志津見ダムが、さらに2013年(平成25年)に斐伊川放水路が完成し、流域の治水能力は大きく改善されました。
 
クレストには非常用洪水吐としてラジアルゲートが2門あり、それぞれがジャンプ台を備える特異な形状。
 
最近のダムらしく天端に建屋はなくすっきりしたスタイルとなっています。
また常用洪水吐や利水放流設備などは水中放流方式のため見えなくなっています。
 
右岸から
2門のジャンプ台式洪水吐が並ぶダムは他にはないんじゃないでしょうか?
常用洪水吐や放流設備は水中放流方式のためジャンプ台下の減勢工に直接放流されています。
水中放流方式は騒音低減に大きな効果があるようです。
 
アングルを変えて
竣工から8年、まだまだきれいなコンクリートです。
 
上流からゲートと取水設備をズームアップ
予備ゲートが4門あることから水中放流方式では4門の放流管が使われていることが分かります。
左右の大きなゲートは常用洪水吐、中の小さなゲートは利水放流設備に相当します。
また取水設備は連続サイフォン方式が採用され天端からかなり低い位置への設置となっています。
 
減勢工と副ダム。
 
副ダムは四つの穴のあいた珍しい構造です
穴の大きさや角度がそれぞれ異なっており、減勢工の水位によって放流量が自然調節できるようになっています。
 
天端は管理事務所が開いている間は車での通行が可能です。
 
ダム湖は『さくらおろち湖』で総貯水容量は6080万立米。
『地域に開かれたダム』をコンセプトにボート競技施設やサイクリングロードなどが整備されています。
 
左岸のモニュメントと記念碑。
 
国交省中国地方整備局管理のダムでは新しい技術が積極的に導入されているように思いえますが、当ダムでも水中放流方式や連続サイフォン方式の取水設備、また珍しい2門のジャンプ台式減勢工など余所ではあまり見られない特徴をもっています。
 
(追記)
尾原ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
2964 尾原ダム(1421)
島根県雲南市木次町北原
斐伊川水系斐伊川
FNW
90メートル
440.8メートル
60800千㎥/54200千㎥
国交省中国地方整備局
2010年
◎治水協定が締結されたダム


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