ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

南相木ダム

2017-05-22 14:07:08 | 長野県
2017年5月20日 南相木ダム
 
南相木ダムは長野県南佐久郡南相木村にある東京電力リニューアブルパワーの発電用ロックフィルダムで、揚水式発電の神流川発電所の上部調整池として2005年(平成17年)に建設されました。
南相木ダムの堤頂標高は1532メートルで、それまで日本一高かった群馬県の野反ダムの1517メートルを抜き日本一高所にあるダムとなっています。
 
1960年代半ばから発電の主力は火力へと移り、さらに原子力発電の台頭もあり水力発電のシェアは低下する一方でした。しかしオイルショックによる原油高騰をうけて電力各社は水力発電に再着目、特に火力や原子力との連携が図れ余剰電力を有効に利用できる上に電力消費のピークに合わせて大出力の発電が可能な揚水発電に注目が集まりました。
東京電力管内でも首都圏への人口集中や臨海部への工場集積を受けて電力需要のピークが上昇、これに対応するために東京電力は揚水式発電所建設を積極的に展開、同電力7番目の揚水式発電所として建設されたのが神流川発電所です。
神流川発電所では上部ダムの南相木ダムと下部ダムの上野ダムの有効落差653メートルを利用して現在は最大94万キロワットの揚水式発電を行っていまが、その設計最大出力は282万キロワットでこれは揚水式発電としては世界最大規模となります。
当初の計画では2020年(平成32年)以降発電機を6台に増強して282万キロワットの発電を行う予定でしたが、東日本大震災を受けた原発運転停止を受けて増強計画は凍結されています。
上部ダムの南相木ダムは日本海に注ぐ信濃川水系、下部ダムの上野ダムは太平洋に注ぐ利根川水系となっており、上部ダムと下部ダムで県境および水系を超える揚水式発電となっています。
現実には漁業権および、既得取水権の関係で南相木川の水は発電には利用できないこと、さらに水系の異なる水が混合することで環境への悪影響の恐れがあるため南相木川の水はダム湖には流入せずバイパストンネルを経由してダム下に流下しています。ダム湖である奥三川湖の水は揚水された神流川の水となっています。
設計出力世界最大の揚水発電の上部ダム、さらに日本一高所にあるダムなどを考慮して南相木ダムは日本のダム100に選定されています。
なお2020年(令和2年)の東京電力ホールディングスの組織改編により南相木ダム及び関連発電施設はすべて同社の100%子会社である東京電力リニューアブルパワー(株)に移管されました。
 
小海町馬流から県道2号に入り、滝見の湯で南相木ダムの標識に従って南相木川沿いの道をひたすら東進すると南相木ダムに到着します。
まずは下流から
堤高136メートルの高さから堤体左岸の地山を流下する洪水吐導流部はそれ自体が巨大な滝のようです。
 
 
リップラップには石灰岩が使用され独特の白い堤体が南相木ダム最大の特徴です。
 
車道で右岸ダムサイトまで上がります
天端の標高1532メートルと標高日本一で正面には八ヶ岳が望めます。
 
上流面のロック材も石灰岩が使われています。
 
下流面。
 
ダム下はウズマクヒロバとして整備され独特の渦巻き模様は2006年(平成18年)のグッドデザイン賞を受賞しました。
 
ダム周辺は西上州から佐久に続く尖峰が連なる独特の風景が広がっています。
 
天端は歩行者のみ立ち入り可能
ダム湖を周回する遊歩道の一部になっています。
 
ダム湖(上三川湖)
正面左に発電所の取水口があります。
 
左岸の地山を蛇のように伸びる洪水吐導流部。
 
左岸洪水吐。
 
建設の際に使用された90トンダンプのタイヤ。
 
今回の南相木ダムの訪問により通算1000ダム訪問を達成しました。
2015年10月の栃木県小網ダムからスタートして1年8カ月目での1000ダム到達で、ほとんどダムに付き合ってくれた嫁さんに深く感謝したいと思います。
また各ダム訪問の参考となった記録を残していただいたダム愛好家諸先輩方にもお礼申し上げます。
 
3280 南相木ダム(1000)
長野県南佐久郡南相木村
北緯度分秒,東経度分秒
DamMaps
信濃川水系南相木川
136メートル
444メートル
㎥/㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
2005年
◎治水協定が締結されたダム


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