ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

宇部丸山ダム(再)

2020-12-02 15:22:08 | 山口県
2020年11月21日 宇部丸山ダム(再) 
 
宇部丸山ダム(再)は山口県宇部市瓜生野の厚東川水系薬師川にある山口県企業局が管理する上水道用水・工業用水目的の重力式コンクリートダムです。
戦前からセメント・化学工業が集積した宇部・小野田地域の用水需要に対処するために、1949年(昭和24年)に厚東川ダムが完成します。
しかし高度成長期による需要の増大から、県は厚東川ダムの嵩上げ再開発を企図しますが地理的・経済的課題が多く断念、替わって宇部市瓜生野の灌漑用溜池である丸山池の再開発ダム化事業に着手します。
1973年(昭和48年)にダム本体工事が開始され、1978年(昭和53年)に竣工したのが宇部丸山ダム(再)です。
宇部丸山ダム(再)は自己流域での集水能力はほとんどなく、貯留は連絡水路で結ばれた厚東川ダムからの導水により、事実上の河道外貯留方式のダムです。
宇部丸山ダム(再)の完成により従来2300万立米だった厚東川ダムの貯水容量に新たに450万立米の容量が追加されるとともに、洪水時は厚東川ダムから宇部丸山ダムへ導水することで厚東川ダムの洪水調節容量が増大するなど、より弾力的な運用が可能となりました。
宇部丸山ダム(再)自体としては宇部・小野田エリアへの上水道用水・工業用水の供給を行うほか、既得取水権として旧丸山池の受益農地への灌漑用水の補給も行っています。
また2016年(平成28年)からは取水設備からの19メートルの落差を利用した山口県企業局宇部丸山発電所が稼働し、最大130キロワットの小水力発電を行っています。
 
国道2号線から見た宇部丸山ダム(再)。
堤高32メートルに対して堤頂長211.4メートルの横長ダムです。
手前は瓜生野地区農地への慣行水利権向け灌漑用水補給施設。
需要期には水温調節のため噴水が上がるようですが、11月はすでに需要期外。
 
ダムと正対します。
放流設備はクレストの自由越流式洪水吐のみ。
事実上河道外貯留方式である宇部丸山ダムでクレスト放流を実施するような事態はまず起こりません。
事実クレスト放流は試験湛水以来一度もないそうです。
 
導流部は踊り場を持つ2段構成。
実はこの下を既存の工業水水路が通っているためこのような形状になりました。
 
堤体に直接タッチできます。
 
ダムサイトに上がってきました。
左岸に『カド』発見。
 
天端は車道になっており常時通行可能。
 
上流面。
 
天端から見た減勢工と灌漑用水補給施設。
上記のように灌漑用水需要期には水温調節のため噴水が上がるそうです。
 
総貯水容量450万立米の貯水池。
水質維持のため各所で曝気装置による渦が見えます。
 
左手はダム右岸にある取水設備
山陽小野田市にある有帆ポンプ場に送水されます。
右手はダム左岸にある注入設備
厚東川ダムの小野湖と圧力隧道で結ばれており、原則双方向の送水が可能ですが、実質的には小野湖から宇部丸山ダムへの一方通行となっています。
 
全国で数カ所ある2基のダムが連絡水路で連結されたダムの一つで、厚東川ダムからの補給を受けた実質河道外貯留方式のダムと言えます。
当ダム単体で見るのではなく厚東川ダム、しいては宇部・小野田エリアの町の歴史も踏まえて見学するとより理解が深まると思います。
 
(追記)
宇部丸山ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2082 宇部丸山ダム(1580)
山口県宇部市瓜生野
厚東川水系薬師川
WI
32メートル
211.4メートル
4500千㎥/4000千㎥
山口県企業局
1978年
◎治水協定が締結されたダム


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