プラクルアン(พระเครื่อง)とは、仏像の形をしたタイの御守りで、タイのことを多少ご存知の方は、聞いたり見たりの経験をなされていると考える。今回はそのプラクルアンについて考えてみたい。ことの発端は、チェンマイの日本語情報誌CHAO367号の特集記事に『ランプーンのワット・マハーワンから”プラ・ロート”なるプラ・クルアンが出土した。そのプラ・ロートは水の性質をもち、危険を回避すると云われる。別の地域に土・火・風・金の性質を持つプラ・クルアンがあり、5つ揃うと強い力を発揮するそうだが・・・。』と記述されている。寄稿者は『あさくらようこ』さんである。そこで広く、深く・・・と云う訳にはいかないが、それなりに調べてみた。
先ず、プラクルアンである。下の写真はランプーン市民博物館展示のプラクルアンでキャップションには、พระกรเทศบาถ:プラコルテスバー(ト)と表示されている。
プラクルアンとは釈迦や僧の姿をかたどった小仏像の護符であり、材質は金属・粘土を焼いたものから、貝の粉に薬草を混ぜたもの、中には高僧の頭髪を混ぜて固めたものなど多彩であるが、緻密なデザインはなく、素朴で単純なデザインの物が多い。主に寺院で発行され日本の御守りのような身に着けやすいサイズのものである。 僧侶が一つ一つ祈祷を奉げて制作するもので、厄除けや現世利益に効果があると信じられており、首からぶら下げられて大切に扱われる。
『あさくらようこ』さんは、水・土・火・風・金の5つのプラクルアンが揃うと、絶大な力を発揮するという。ここで5つのプラクルアンとは・・・、
พระนางพญา:プラナンパヤー
พระซุ้มกอ:プラスムコー
พระสมเด็จ:プラソムデー(ク)
พระรอด:プラロート・・・・・・水
พระผงสุพรรณ:プラプンスパン
であるが、プラロートが水である以外は、どのプラクルアンが何んの性質を持つのか分からなかった。この5つのプラクルアンとは五大プラクルアンと云うことになる。五大とは古代インド哲学の一つの思想に他ならない。それは火・水・地を『三大』、または地・水・火・風を『四大』とする。これらに『虚空』を加えて『五大』とする考え方が現れた。Wikipediaによると、この思想がインド思想家と仏教徒との教学論議を経るうち、これらの思想がその時々に応じて仏教の思想体系に取り込まれていった。そして原始仏教や部派仏教に暫時取り入れられたのを契機に、仏教思想として広まった。仏教の一派である密教では五大を五輪と呼び、この思想に基づく塔婆として五輪の塔を造立する・・・とある。つまり宇宙の理であり、成程五揃えば大きな力を発揮するであろう。
ところでタイの五大プラクルアンとは、水・土・火・風・金であるが、本家のインドは地・水・火・風・虚空の五である。本家の虚空がタイでは金という即物的なものに変わっている。タイで翻案されたものであろう。ところで五大は、火・水・木・金・土の五行相克なる五行説と似ていなくもないが、五大と五行は全く別物である。以上みてくると、タイは東西文明の十字路であったと思わざるを得ない。詳しく調べれば、面白い噺はまだまだ存在するであろう。
<了>