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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

乱歩NO.86・・・映画「キャタピラー」(主演:寺島しのぶ)を見た

2010-08-15 | 江戸川乱歩
■監督:若松孝二
■出演:寺島しのぶ、

終戦記念日の今日、寺島しのぶがベルリン映画祭で最優秀女優賞をとって話題となった映画「キャタピラー」を見てきた。監督は若松孝二。原作とは大々的にはうたっていないけど、話はまんま江戸川乱歩の「芋虫」であった。映画は戦争によって四肢を失い体が芋虫状態になってしまった夫とそれを介護することになる妻との日常生活、つまりは性的な夫婦関係や軍国主義一色で染まっていた農村の様子を淡々と描写することによって、一組の戦争犠牲者としての生活にスポットをあてて描いている。

戦地から異様な姿となって帰ってきた夫は、「食っては寝て食っては寝て」と台詞にあったように、食欲と性欲だけは旺盛なのである。夜ごと妻はモンペを脱ぎ尻を露出させそこだけは人並み以上の?夫の男性自身を受け入れる。性器と胃袋が元気な夫は、最早、男として機能しているのはアレのみなのだ。そしてこの夫婦の睦事の向こうの風景には、勲章や「軍神」と崇められた新聞、天皇の写真が見えている。

すでに、江戸川乱歩の小説「芋虫」を読み、見事にそれを漫画化した丸尾末広の作品を、あるいは同じ原作を映画化した「乱歩地獄」を見ていたボクにとってはこの「キャタピラー」は取り立てて新鮮には映らなかった。むしろ、こうした設定を今より言語統制が厳しかった時代に乱歩が生み出したことのすごさの方が浮かび上がってくる(発禁にもなっている)。事情はどうであれ、環境で左右される(特に戦争は環境を大きく変えてしまう!)人が生きていくことの悲しみや苦しさを寺島しのぶが、おくすることなく体当たりで演んじたことによって、この映画は、<映画>として成立しえたのだろうと思った。それほど寺島しのぶの存在感が光っていた。

映画は、同時に夫が戦地で何をやってきたかがフラッシュバックのように挿入される。加害者は被害者にもなりえるのだ。



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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (像のロケット)
2010-08-16 13:02:57
TB有難うございます。

相性でしょうか、当方からgooへのTBは成立
しません。。ですが記事は大切に当サイトにて
反映させて頂きます。

他のgooユーザー様共々、今後とも宜しく
お願いいたします。
返信する
こんばんは (にいな)
2010-08-16 23:01:08
この記事とは別の日記にTBをいただきましたが、私からはこちらにTBさせていただきまた。
寺島しのぶの演技も素晴らしかったですが、セリフのない大西さんの演技も良かったです。
返信する
ありがとうございます (飾釦)
2010-08-17 22:20:54
象のロケット様
お心使いありがとうございます。
感謝です。

にいな様
間違えてしまい申し訳ございません。
気がついてくださり感謝です。
返信する
なぜなのでしょう (とみ(風知草))
2010-08-19 21:15:16
>飾釦さま
トラコメありがとうございます。
昭和4年ですよ。リアルあの時代です。気が遠くなりそうです。
今の時代、どれだけ残酷で猟奇的で煽情的でもそれで注目はされません。メッセージが大切なはずなのですが、反戦映画には見えませんでした。純文学的映画としては主演お二人の熱演で感動させていただきました。
何にも書いていないのに読みとっていただき、ありがとうございました。
返信する
コメントありがとうございます (飾釦)
2010-08-19 22:06:08
私が思うにこの「キャタピラー」は素材として戦争映画を選択しているのですが、人が生活することとは?を描いていたのかもしれないと。

女は情欲を虐待をエスカレートさせるでなし(そんなシーンもありましたが、それはあのような環境に置かれれば少しくらいはあるでしょう)、どこまでも古い日本女性であったのが節度ある演出として映り、静かな感動を引き起こしたのかもしれません。
返信する

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