飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

「篠山紀信展 写真力」(東京オペラシティ アートギャラリー)を見た

2012-10-12 | 美術&工芸とその周辺

東京オペラシティギャラリーで開催中の「篠山紀信展 写真力」へ行きました。駅の構内でジョン・レノンとオノ・ヨーコがキスをしている写真がメインビジュアルの写真展のポスターが、どこか懐かしい記憶を呼び覚まし、やっぱりインパクトある写真だなと思い、それを見かけた時から篠山紀信の写真は時代時代において無意識にどこかで見かけその無意識の記憶に沈澱しているものが多いんだろうなと思い、そう感じるとその展覧会が気になってきました。何気なくそれまで過去に雑誌等で見てきた篠山紀信の写真が、形を変えて目立つ形で駅という多くの人が通行し溢れている空間で掲示されると、また違った感覚で力強く光っているのを私は受け取りました。

 

あるいは、書店でも発売中の月刊誌「芸術新潮」にはその篠山紀信とともに水着姿のあの山口百恵の写真が表紙を飾って平積みされており、ああこの写真若い頃に見たことがある、確か「GORO」という青年向け雑誌で掲載されたんじゃなかったか?いや記憶違いか、「プレイボーイ」という雑誌だったけ?そんな普段は忘れている過去の記憶を無意識に引き出そうとしている自分に気づくのです。そうした感覚をあらためて見直してみると時代の感覚を切り取ることに成功した写真は、過去に流行した音楽を聴くとその時代を思い出すことがあるように、時代とともにあるんだなと思うわけです。その山口百恵の写真はとにかく書店でも一際目だっており、その百恵の娘ほどの女の子がその本を手にとって、「これ、誰?」「百恵ちゃんだ」などと会話しているのを見ました。つまり、その表紙には力があったということなのだと思うのです。

 

ということで日本を代表するカメラマン篠山紀信、今まで美術館での回顧的な展覧会は一度も開かれたことはなく、当の本人が「美術館なんて死体置場」とまで言ってこれまで拒み続けてきたそうです。ですから、満を持して開かれた大規模な個展となるとのこと。会場にはびっくりするような巨大な写真が展示されています。まるで、雑誌の中に入り込んだとでもいうようなスケール感。そして長いキャリアの中で厳選された作品の数々。タイトルにあるように写真力をまさに問うような展覧会の構成になっていると思いました。紀信曰くそれは「写真力と空間力」の対決なのだそうだ。

 

思うに写真は誰でも気軽に使える道具、携帯電話に付属しているカメラは定番で、美しい見所のある風景やなにかのイベントの撮影タイムとなるとカメラではなく携帯をかざして撮影しているほうが多いのでは、というのが今という時代。篠山紀信がカメラマンを志した時と比べると大きな変化なのだと思う。篠山紀信はこの展覧会で写真力というテーマを掲げたのですが、誰でも使える道具=カメラという特性を考えると、実は、写真力の向こうに容易ではない人間力が必要とされているのだろうとバカでかい写真を眺めながら勝手に納得したのでした。 

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