![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7d/a1/d596d7246e6dc1def89c4762ec4f00d8.jpg)
■製作年:1983年
■配給:松竹
■監督:三村晴彦
■出演:田中裕子、渡瀬恒彦、平幹二朗、伊藤洋一、吉行和子、他
「タコが言うんだよね~」とはボクが学生時代に流行ったCMのフレーズです。もう20数年前になると思います。気だるい感じの田中裕子がなんとも言えずに色っぽく、かつ母性的でもあって、若かったボクなど一瞬にしてとりこにしたCMでありました。この映画「天城越え」には、その田中裕子が主演していて、CMさながらの役を演じています。だから映画においても彼女の魅力は全開でとても魅力的なのでありました。
今回は、松本清張の原作を読む前に映画を見ました。読んでから見るか、見てから読むか?これも遠い昔ににどこかで聞いたようなフレーズ(角川映画のCM)なんですが、清張のような推理モノのの場合、先に映画を見てしまうと文字を後から追っかけるのがつらくなってくるかなと思って、今までは先に本を読んでから映像化された作品を、という順番できたのですが、清張の本以外に同時に読んでいるものも多く、この「天城越え」は短編小説なので逆も発見があるのかなと思った次第で・・・。
で、映画なんですが、主人公の少年が兄を訪ねて家出をする。その行程の中で天城峠を越えようとするのですが、なんとも山道は奥深く所持金もほとんどない少年にとっては、そこかしこに霊気を感じ不安な気持ちを起こさせる。その時に出会った1人の女を巡る記憶の中の甘く切ない、しかし拭いきれない罪を背負ったまるで神話のような物語であります。この話はある意味で大人への通過儀礼の話でもあり、また悲しい殺人事件の話でもありました。
少年の前に現れる遊女を演じる田中裕子は、手ぬぐいを姉さんかぶりにして(これが綺麗!)、気だるい色気を放ちながらまるで一枚の浮世絵のように登場します。白いてぬぐい、鮮やかな着物、しなやかな曲線、憂いのある瞳、その立ち姿が峠の山道の木々の深い緑と相俟って、なんともいえない女の魅力を出していました。そのスローモーションのような幻影的な映像が、ボクの中ではもう遠い昔である性に芽生え始めた少年時代の感覚を呼び起こし、甘く切ない気持にさせてくれます。なかなかここまでの洗練された映像はそうはないと思いました。
道中において草履で擦り切れた少年の足を田中裕子が手入れする場面があるのですが、手入れしながらさりげなく彼女の手が少年の股間へと延びていきます。ここからは映画では具体的に描いてはおりませんが、少年の男根は勃起し彼女の手がズボンの上から触れたことにより、射精してしまったかも知れません。そんな年上の女性のさりげないいたずらな行為でも、少年からすればあまりにも刺激的である。そうした性的なるものとの遭遇、それにみられる少年心理の複雑さ。この天城峠の出来事の後、事件は発覚します。殺人事件の容疑者として連行される田中裕子、どしゃぶりの雨の中で少年と女は再び出会います。びしょ濡れになって目と目が合う。「さようなら」とつぶやく女。このシーンは限りなく美しい。そして切ない。観音菩薩の姿をそこに見たような気がしました。
田中裕子演じる役は、大塚ハナというのですが、ここまでハナとは書かず田中裕子とばかり書いているのに気付きました。それだけ彼女のインパクトが強い映画であったということ。彼女は現代的な美人かどうかというと昔のおかめ顔の美人。個性が一層女性を美しく見せる、この頃さっぱりいなくなった女優さんだと思います。ところでこの映画、少年が母親の情事を目撃するところがあります。その時の体位はバック。それと田中裕子が殺された流れ者を誘い交合するところがあり、その時の体位もバックだ。ここには少年にとって聖女としてある2人の女性が凌辱されているイメージを強調したのか、あるいは人の持つ野獣的な面を美しいだけではなくさりげなく映しだしていたようにも思ったのでありました。
![]() |
天城越え [DVD]松竹このアイテムの詳細を見る |
※「天城越え」所収
![]() |
黒い画集 (新潮文庫)松本 清張新潮社このアイテムの詳細を見る |
はじめまして。元井文七と申します。
このたび私のブログにかざりぼたん様から配信をたまわり、訪問させて頂きました。
しかし充実した内容のブログですね。
乱歩、寺山修司、鏡花という耽美派と共に、清張、今村昌平も多く取り上げてらっしゃるのが、仄かにうれしく感じました。
恐らくほぼ同世代かと察しますが、今後も何卒よろしくお願いいたします。
恐らくほぼ同世代かと存じますが
はじめまして。元井文七と申します。
このたび私のブログにかざりぼたん様から配信をたまわり、訪問させて頂きました。
しかし充実した内容のブログですね。
乱歩、寺山修司、鏡花という耽美派と共に、清張、今村昌平も多く取り上げてらっしゃるのが、仄かにうれしく感じました。
恐らくほぼ同世代かと察しますが、今後も何卒よろしくお願いいたします。
私は1961年生まれです。
またよろしければ見ていただけると幸いです。
やはり同世代ですね。わたしは1959年生まれです。
高校大学と8ミリ映画を撮っていました。
大学時代は、昼はキャンパスに、夜は松竹でシナリオを学んでいました。
シナリオか小説で身を立てたい…などと夢想しておりましたが、うまくいかず、三十代半ばから福祉専門職として現在まで食いつないでいます。
今は、有料老人ホームでケアマネジャーをしています。
四十代前半の数年間は、某大手文藝出版社の編集者とお付き合いしていただきましたが、「書く」ことと「稼ぐ」ことは全く異なることを体験させてもらいました。
つまらぬ繰り言、ご容赦下さいませ。
ご健闘をお祈りしています。