元禄16年(1703年)の4月7日の明け方、大阪・曽根崎の露の森の天神社において醤油屋平野屋の手代の徳兵衛(25歳)と堂島新地の天満屋の遊女・お初(21歳)が心中を遂げた。この時京都に住んでいた近松門左衛門(51歳)は、竹本義太夫の招きで大阪に来ていた。その心中を知った近松は直ちに現場に駆け付け、浄瑠璃「曽根崎心中」を書き、1ケ月後の5月7日に道頓堀の竹本座で初演した。それは大当りし、借金で苦しん . . . 本文を読む
夢の中のような、あるいは、心中してあの世に旅立ったお初が、あちら側の世界から思い返しているような、そんなふわっととした重力感が希薄な霞みのような浮遊感を持ったそんな漫画に仕上がっているなあと思いました。
なんでだろうと思うと、まず気がつくのは漫画に登場人物の台詞を表す“吹き出し”がほとんどないということ。つまり内面の声としてたとえば、お初の気持ちが背景に溶け込むような形で表現されている。さらには . . . 本文を読む
■日時:2009年3月22日(日)、13:00~
■劇場:東京ノーヴィ・レパートリーシアター
■原作:近松門左衛門
■演出:レオニード・アニシモフ
■出演:武藤信弥、岡崎弘司、他
随分と前になってしまいますが、演劇の街・下北沢に東京ノーヴィ・レパートリーシアターという、毎週金~日曜日に数本のレパートリー作品をロングラン上演している劇団?があります。その上演スペースの客席は26席。小さな小さな劇場 . . . 本文を読む
先日歌舞伎座で観た近松門左衛門の代表作「曽根崎心中」、その文楽公演を収録放送した番組を録画したものを観ました。とはいってもそれは最近のものではなく録画したのは2002年のNHKにおける放送、だからかなり前となる。ボクもよくよく物好きで、録画してもそれを観ることもなく7年後にやっとお目にしたというわけで。まだ20代であったころに近松の「曽根崎心中」は宇崎竜童が徳兵衛を演じた映画を深夜のテレビ番組で放 . . . 本文を読む
★★『心中への招待状 華麗なる恋愛死の世界』
小林恭三(文春新書)★★
四月大歌舞伎で観た日本のシェイクスピアと称される近松門左衛門の名作「曽根崎心中」について詳細に読み解いていった本であります。著者である小林恭三は、先にボクが「四谷怪談」に関する記事をアップしてし続けていたとき、その「四谷怪談」について彼が書いた新書を読んでアップした作家の方です。
まず読ん . . . 本文を読む
■日時:2009年4月18日(土)、16:0~
■劇場:歌舞伎座
■作:近松門左衛門
■脚色・演出:宇野信夫
■出演:坂田藤十郎、中村翫雀、中村橋之助、他
歌舞伎座の四月大歌舞伎の上演演目に入っていた近松門左衛門の「曽根崎心中」。ボクはこの作品が目当てで、東銀座へと足を運んだわけですが、そのまえに上演されたのは「廓文章」。玉三郎&仁左衛門が登場し舞台をきらびやかで華やかな雰囲気で飾った後のその舞 . . . 本文を読む
■日時:2009年4月18日(土)、16:30~
■劇場:歌舞伎座
■作:近松門左衛門
■出演:坂東玉三郎、片岡仁左衛門、他
この舞台で圧倒的な存在感を見せたのが、坂東玉三郎でありました。美しいと劇場の観客から溜息が出ました。今回の四月大歌舞伎において一番印象に残ったのが、玉三郎が演じた夕霧です。彼が長くトップランナーとして存在しえているのは、たとえば茂木健一郎が司会を勤めるNHKの番組「プロフ . . . 本文を読む
■日時:2009年4月18日(土)、16:30~
■劇場:歌舞伎座
■作:梅野下風、近松保蔵
■出演:中村吉右衛門、中村福助、中村吉之丞、他
歌舞伎座で上演されている四月大歌舞伎を観に行きました。この演目は浄瑠璃が元になっていて全11段のとても長い狂言であるとイヤホンガイドで説明していました。確かに事前にガイドがなかったらどこまで話の進行を理解できたか、いささか不安が残るところでした。基本的にイ . . . 本文を読む
■日時:2009年4月12日(日)、15:00~
■劇場:ル テアトル銀座
■作:寺山修司
■演出・美術:美輪明宏
■出演:美輪明宏、吉村卓也、麿赤児、菊池隆則、若松武史、他
寺山修司の「毛皮のマリー」は、ボクが3年前に寺山修司に興味を持ち始めてから何人かの演出家によるそれを数本観る機会がありましたが、美輪明宏による「毛皮のマリー」は一番観たかったもので、今回やっとそれを観ることができました。上 . . . 本文を読む
★★『<狂い>と信仰 狂わなければ救われない』
町田宗鳳(PHP新書)★★
著者の町田は、宗教の研究や現場体験を経験(禅やキリスト教など)、いまだ信仰は固まらない煩悩の夫としながら、宗教的な基盤の要素についてある確信を持っているといいます。それがこの本のテーマとなっている<狂い>というもの。<狂い>こそは、あらゆる宗教のはたまた人種や文化の如何を問わず人間存在の . . . 本文を読む
「四谷怪談は面白い」横山 泰子(平凡社)
鶴屋南北の傑作「東海道四谷怪談」に関する記事を続けて書いてきて、それをテーマとした2冊の新書(小林恭三、廣末保による本)を読みました。いずれも「四谷怪談」の世界を深堀していて興味深い本でしたが、今回、横山泰子による「四谷怪談は面白い」を読んで、実はこの本が一番気楽に読めてしかも面白かったなと思いました。まず著者の横山が、江戸東京博物館の学芸員であるところ . . . 本文を読む
鶴屋南北の傑作「東海道四谷怪談」のお岩さん縁の神社は、すくなくとも東京に3ヶ所あります。昨日までに紹介した2つ、四谷に道路を挟んで斜めに向かい合ってあります。そして別の場所にもお岩さん縁の神社はあります。それが今回記事にしたところ。その神社については田中聡著「東京妖怪地図」に記載がありましたので以下に引用しました。
“町内の火事に遭ったのを機会に、田宮神社は中央区越前堀へ引っ越している。
[明 . . . 本文を読む
鶴屋南北の描いた「東海道四谷怪談」のお岩さん伝説については、諸説がありその真相はあきらかでないといいます。昨日アップした於岩稲荷田宮神社の記事はお岩さん貞女説でありました。一方、南北の「東海道四谷怪談」が上演された2年後に町の伝説を集録して奉行に提出したものとして『四谷町方書上』というのがあるそうで、そちらのお岩さん伝説は田宮神社のものとは違い、お岩さんは伊右衛門の犠牲者となっています(そこには南 . . . 本文を読む
鶴屋南北の傑作「東海道四谷怪談」、そして日本一有名な幽霊のお岩さん。そのお岩さんを祀った神社が、「お岩稲荷」こと「於岩稲荷・田宮神社」です。このところの四谷怪談づくしで、ならばその現場をと小春日和の心地よい日、四谷にある於岩稲荷・田宮神社をぶらりと訪れました。
お岩さんですがその伝説は諸説あるそうです。この田宮神社に伝わるのは、所謂怪談話のイメージと違いお岩さん=貞女伝説であります。つまり実 . . . 本文を読む
★★『四谷怪談―悪意と笑い―』廣末保(岩波新書)★★
先週に続き鶴屋南北の「東海道四谷怪談」に関する本を読みました。この廣末保の著作は、先週紹介した同じく南北の「四谷怪談」に関する本(小林恭三)にも『格別な存在』『そのエネルギーと洞察の深さには畏敬の念を覚えます』と書かれてあるし、アンコール復刊したもののようでもあり、どうやら「四谷怪談」に関する本としてはなかなかの名著らしいです。しかし、それに . . . 本文を読む