東京都府中市の多磨霊園。ここには江戸川乱歩の墓があります。39万坪(=128㎡)と広大な所なので、案内地図をガイドにしないと、とても乱歩の墓までたどり着けません。(正門横の管理事務所で地図を売っています)墓は区画整理がされているので、地図を片手に向かいました。乱歩の墓は、事前情報のとおり本名の「平井家之墓」となっていました。
その墓を前にして、乱歩は確かに存在していたんだ(あたり前ですけど) . . . 本文を読む
子どもを誘拐され返して欲しいため「わたし、どんなにされても構いません」と哀願する倭文子。吸血鬼=犯人は欲望と復讐に燃えて狂う。
◆エログロと女の感性
“「本当に、どんなにされても、構わぬというのかね」・・・
「お前さんの言葉が、本当か嘘か、今すぐためして上げるよ」・・・
「逃げるのかね。併し逃げ道はありゃしないぜ。わめいて見るかね。
だが、地の底の穴蔵だ。誰も助けに来るものはあるま . . . 本文を読む
「氷柱の美女」として映像作品化された乱歩の原作「吸血鬼」は、一人の女を巡る二人の男の対決から始まる。それは対決する者のどちらか一方の死を迫るゲームであり、それは名画「ディアハンター」のロシアンルーレットを想起させる(1/2なのでそれ以上か)緊迫感溢れる対決なのであった。
◆確率5割のロシアンルーレット
“「サア、君が最初に選ぶのだ。呼吸は喘み、このコップのどちらかを手に取り給え。僕は約束に従 . . . 本文を読む
氷柱の美女~吸血鬼
放送:1977年テレビ朝日
監督:井上梅次
主演:天知茂、三ツ矢歌子
この江戸川乱歩の小説を原作とした「美女シリーズ」は、原作に概ね忠実か、もしくは原作を大胆に書き換えているか、あたり前ですけど、そのどちらかのパターンとなってます。今回の「氷柱の美女」は、「美女シリーズ」の第一作目。というわけでもないだろうが、乱歩としては長編の作品「吸血鬼」のエピソードを巧みに取り入れて、 . . . 本文を読む
氷柱の美女
製作:1950年大映
監督:久松静児
主演:岡譲二、相馬千恵
50年以上も前、自分の年齢より遥かに?上回っている古い映画。
さて、この映画の舞台となる畑柳家は、とんでもない大邸宅。廊下の奥行きも深く、二階へと上がる階段はどこかの外国映画で見たような螺旋状になっており、その大きさ、優雅さを想像させます。住人は、家の中でも靴を履き、寝る時もベットという憧れの西洋的生活スタイル。
. . . 本文を読む
東京・池袋の立教大学の横に建つ旧・江戸川乱歩邸。この裏手には乱歩の蔵書を収めた土蔵、いわゆる「幻影城」があります。2004年には立教学院130周年記念行事のひとつとして、その土蔵を一般公開をしたそうです。
私と乱歩との出会いは今年になってからなので、そういった催しがあったことは全く知りませんでした。(残念!)
とにかく、一度見てみたい。乱歩邸がある池袋へと足を運びました。そこに着いた時間が夕方 . . . 本文を読む
男も女も狐の化かしあい。異性による言葉の魔力とは恐ろしいものである。目の前で、魅力的な殺し文句を言われたら、やはり心の裏側で少しは疑っていようとも相手の壷にはまってしまうのではないだろうか?ボクもこんなことを言われたら、きっとその底なし沼にはまってしまうのだろう・・・。
◆悪の処世術
“・・・ニッコリ笑って見せた。顔と一緒に身体もくずれて、彼女の白い手が、男の洋服の膝を這った。浅黒い手と白い . . . 本文を読む
いつの時代も変わりません。恋をするとすべてがバラ色です。何もかもが美しく感じられます。乱歩の「白髪鬼」の主人公、女嫌いで通した大牟田敏清も例外ではありませんでした。恋という内から湧き上がるエネルギーの前には、たやすく時分のポリシーを撤回するのであった。
◆恋は盲目
<恋愛前>
“女なんて、男のあばら骨一本にしか価しないのだよ。あいつらは高尚な思想も分からなければ優美な芸術も理解しない、劣等種族 . . . 本文を読む
宝石の美女~白髪鬼
放送:1979年テレビ朝日
監督:井上梅次
出演:天知茂、金沢碧
乱歩の原作では中国の海賊による宝となっている部分を、宝石泥棒の盗品を舞台となる墓に隠したという設定に変えている。そして、死の恐怖で白髪となってしまった大牟田が、白髪の鬘を被って逃走中の宝石泥棒を裏で操っているという微妙な関係を描く。
その同時進行する、逃走している宝石泥棒の事件で、大牟田夫人・瑠璃子の宅 . . . 本文を読む
ザ・スノウ
製作:香港/日本2002年
監督:ウォン・マンワン
出演:スティーヴン・フォン 、伊東美咲
江戸川乱歩の原作「白髪鬼」を元に日本・香港の合作で製作。中国人が日本人を演じる不自然さとともに、吹替え・アフレコとなっているため、何とも馴染めない。その感じは、たとえばピンク映画を観ているような馴染めなさと言ったら理解できるであろうか?とは言いながらピンク映画を観たことがないよ、そう仰 . . . 本文を読む
東京・谷中にある喫茶店「乱歩゜」。“D坂より308歩 ”なんていう粋な看板もある。
乱歩の作品「D坂の殺人事件」のD坂とは団子坂のこと、団子坂下からちょっと歩けば「乱歩゜」に出あえる。
店主は乱歩好きが高じて喫茶店を開いたらしい。今時は中々お目にかかれないクラッシックなスタイルの喫茶店。店内は、アンティークなものやチラシやポスターなどが所狭しと置いてあったり、 . . . 本文を読む
湖畔亭事件に登場する主人公は、レンズ狂の青年である。レンズに取り付かれ、それによってもう一つの自身の覗見趣味を開花させていく。それは、屋根裏の散歩者の郷田、よろしく他人の視線が及び届かぬリラックスした本当の自分をさらけ出してしまう、そんな人間の日常を観察するのがたまらなく愉快と感じるのだった。
◆生身の人間が見たくてたまらい~観察者の思考
“私の見たいと思ったのは、周囲に誰もいない時の、鏡 . . . 本文を読む
湖底の美女~湖畔亭事件
放送:1982年テレビ朝日
監督:井上梅次
主演:天知茂、松原千明
明智小五郎がバカンスで過ごすリゾート地で事件が発生するという設定。登場人物は画家やモデル、弁護士など複数登場するが、彼らは原作には出てこない。物語もほとんど創作で、タイトルのみ借用したといっていいくらい改変されている。
だから乱歩らしさはなく、むしろすべての登場人物が怪しく感じさせる横溝正史のドラマ . . . 本文を読む
小説の主人公である若旦那は、結婚した新妻ではなく人形の魅力の呪縛から離れることができなかった。人形への恋、それがこの不幸な物語の始まり。『人間には恋はできなくとも、人形には恋ができる。人間はうつし世の影、人形こそ永遠の生物』と書いたのは、まさに作者の江戸川乱歩であったのだ。
◆ピグマリオニズムへ~人形の魅力
“それほど私を驚かせたものが、ただの一個の人形に過ぎなかったと申せば、あなたはきっと . . . 本文を読む
人でなしの恋
配給:松竹1995年
監督:松浦雅子
主演:羽田美智子、阿部寛
江戸川乱歩の短編「人でなしの恋」を小説の行間を因数分解し埋めるかの如く丹念に描いていった作品。監督が女性からか、描かれている風景がとてもきれいだ。丁度、この作品を観た時が桜が見ごろという時期もあって、特に私の注意が注がれたのか画面の草木の花々が印象に残る。また、四季の風景共に連動するかのように、ヒロイン羽田美智子 . . . 本文を読む