◻️211の5『岡山の今昔』岡山人(19世紀、森田思軒)

2019-09-30 07:52:58 | Weblog
211の5『岡山の今昔』岡山人(19世紀、森田思軒)

 森田思軒(もりたしけん、1861~1897)は、新聞記者であるとともに翻訳家。本名は、文蔵という。備中の笠岡の生まれ。
 1873年(明治7年)には、慶応義塾の大阪分校でで英文学を学ぶ。1877年(明治10年)頃には帰郷する。井原の興譲館に入り、漢学も学ぶ。
 1882年(明治15年)になると、矢野竜渓(政治家、小説家)に見いだされる。東京に出て、矢野の紹介で、同年郵便報知新聞の記者となる。やがて、編集にも関わっていく。
 そのかたわら、英文学の翻訳にいそしむ。主に、英文学ヴィクトル・ユーゴーの「探偵ユーベル」「懐旧」、ジュール・ヴェルヌの「十五少年」など。
 原作の英訳からの翻訳が中心であるものの、漢学の素養を生かした周密文体といわれる「直訳」文章で、在来の乱雑な翻訳の文体を一新していく。より多くの読者の獲得を実現していく。あらたな文体ということでは、二葉亭四迷や森鴎外とともに、現代への橋渡しの役割をになう。
 大成するまでの時間があたえられなかったものの、近代日本の裾野を大いに広げた功績は、永く語り継がれていくだろう。

(続く)

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