読者諸氏は、タイトルの共同所有自己申告税(COST=Common Ownership Self-assessed Tax)というのはお聞きになったことがあるだろうか?
これは、「脱私有財産の世紀」(エリック・A・ポズナー/ E・グレン・ワイズ共著)で紹介されている新しい税の提案です。
グローバル資本主義の加速に伴い、また今年のコロナ禍でも、皮肉にもますます拡大している「格差の拡大」を押し止めるための具体的な1つの提案です。
その主張のエッセンスは以下のようになります。
★ 使用する権利と、排除する権利がどちらも保有者から社会全般に部分的に移る税の仕組み。
1.現在保有している財産の価格を自ら決める。
2.その価格に対して一定の税率分を課税する。
3.より高い価格の買い手が現れた場合には、
i.1の金額が現在の所有者に支払われ、
ii.その買い手へと所有権が自動的に移転する。
例えば、ある人が遊休の土地を持っているとします。今の税制で例えば農地並みの安い固定資産税しか支払っていない場合、仮に大規模な開発を伴う土地収用の話があったとして、その買収価格が土地保有者の期待値以下であれば、そのまま売却せずに保持し続けるでしょう。期待値以上の価格が提示されれば、そこで初めて土地の保有者は売却するかどうか、真剣に検討することになります。仮に「法外」な値段が提示されれば、恐らく売却することになるでしょう。
以上の場合、社会的に見れば、格差の上位者(土地保有者)から別の格差の上位者(例えば、開発企業)へと当該土地の所有権が移転するだけであり(あるいは、その逆)、そこには社会的な格差を是正するという機能がほぼ含まれていません。
ところが、共同所有自己申告税の下では、自ら決める財産の価格を高くしすぎると税金を高く支払わねばならなくなるため、ほどよく抑制された形で保有する土地の価格を申告する動機が生まれます。当然、どうしても他者に売りたくない場合は、高い税金を払ってでも、自己申告価格を高くする人も出てくるでしょうが、その分、税金も社会に還元されるので、問題ありません。
このようなCOSTの考え方が、何故格差の是正につながるのかは自明ですね。富の偏在が正され、社会全体に最適化される機能を、このCOSTという仕組みは持っているからです。運用上の様々な詳細設計はもちろん必要ですが、筆者が感心したのは、格差が広がっている実態を示す論調はあちこちで見られるものの、では一体どうすれば、その格差が是正され、よりよい社会になるのか?その具体的な手法をこの本は示していることです。
他にもVIP(個人間ビザ制度)とか、QV(2次の投票)とか、この格差社会の不具合を具体的に修正する考え方が、この本には書かれております。
昨今、消費税を下げるとか、ベーシックインカムの議論とかがさかんですが、これらはいわば小手先の議論に見えてきてしまいます。単に、あるお金を別のところに恣意的に配分するだけの機能しかないからです。
もっと、本源的にこの社会の問題を解決する手法が、このCOST等の考え方には含まれているような気がします。
政治家や中央官庁はもっともっと研究して、このような新しい制度を何とか早期に実現してもらいたいものです。
これは、「脱私有財産の世紀」(エリック・A・ポズナー/ E・グレン・ワイズ共著)で紹介されている新しい税の提案です。
グローバル資本主義の加速に伴い、また今年のコロナ禍でも、皮肉にもますます拡大している「格差の拡大」を押し止めるための具体的な1つの提案です。
その主張のエッセンスは以下のようになります。
★ 使用する権利と、排除する権利がどちらも保有者から社会全般に部分的に移る税の仕組み。
1.現在保有している財産の価格を自ら決める。
2.その価格に対して一定の税率分を課税する。
3.より高い価格の買い手が現れた場合には、
i.1の金額が現在の所有者に支払われ、
ii.その買い手へと所有権が自動的に移転する。
例えば、ある人が遊休の土地を持っているとします。今の税制で例えば農地並みの安い固定資産税しか支払っていない場合、仮に大規模な開発を伴う土地収用の話があったとして、その買収価格が土地保有者の期待値以下であれば、そのまま売却せずに保持し続けるでしょう。期待値以上の価格が提示されれば、そこで初めて土地の保有者は売却するかどうか、真剣に検討することになります。仮に「法外」な値段が提示されれば、恐らく売却することになるでしょう。
以上の場合、社会的に見れば、格差の上位者(土地保有者)から別の格差の上位者(例えば、開発企業)へと当該土地の所有権が移転するだけであり(あるいは、その逆)、そこには社会的な格差を是正するという機能がほぼ含まれていません。
ところが、共同所有自己申告税の下では、自ら決める財産の価格を高くしすぎると税金を高く支払わねばならなくなるため、ほどよく抑制された形で保有する土地の価格を申告する動機が生まれます。当然、どうしても他者に売りたくない場合は、高い税金を払ってでも、自己申告価格を高くする人も出てくるでしょうが、その分、税金も社会に還元されるので、問題ありません。
このようなCOSTの考え方が、何故格差の是正につながるのかは自明ですね。富の偏在が正され、社会全体に最適化される機能を、このCOSTという仕組みは持っているからです。運用上の様々な詳細設計はもちろん必要ですが、筆者が感心したのは、格差が広がっている実態を示す論調はあちこちで見られるものの、では一体どうすれば、その格差が是正され、よりよい社会になるのか?その具体的な手法をこの本は示していることです。
他にもVIP(個人間ビザ制度)とか、QV(2次の投票)とか、この格差社会の不具合を具体的に修正する考え方が、この本には書かれております。
昨今、消費税を下げるとか、ベーシックインカムの議論とかがさかんですが、これらはいわば小手先の議論に見えてきてしまいます。単に、あるお金を別のところに恣意的に配分するだけの機能しかないからです。
もっと、本源的にこの社会の問題を解決する手法が、このCOST等の考え方には含まれているような気がします。
政治家や中央官庁はもっともっと研究して、このような新しい制度を何とか早期に実現してもらいたいものです。
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