令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

黒人編(3)呼びそ越ゆなる

2009年08月21日 | 黒人編
【掲載日:平成21年8月25日】

大和やまとには 鳴きてからむ 呼子鳥よぶこどり
          きさの中山  呼びそ越ゆなる


【宮滝の吉野川】


やすみしし わご大君 神ながら 神さびせすと  吉野川 たぎ河内かふちに 高殿を 高知りまして 登り立ち 国見をせせば 
《天皇さんは 神さんや 吉野の川の 河淵かわふち に 御殿やかた造られ 登りみる》
たたなはる 青垣山あおかきやま 山神やまつみの まつ御調みつきと 春べは 花かざし持ち 秋立てば 黄葉もみちかざせり 
《山の神さん かざりやと 春には花を 咲かせはり 秋には黄葉もみじ 作りはる》
ふ 川の神も 大御食おほみけに つかまつると かみつ瀬に 鵜川うかはを立ち しもつ瀬に 小網さでさし渡す 
《川の神さん 御馳走ごちそうと 上流かみで鵜飼を 楽しませ 下流しもで網取り さしなさる》
山川も りてつかふる 神の御代かも
《山や川 みんな仕える 天皇おおきみさんに》
                         ―柿本人麻呂―〔巻一・三八〕

山川も りてつかふる 神ながら たぎつ河内かふちに 船出せすかも
《山川の 神もつかえる 天皇おおきみが 逆巻く川に 船出ふなでしなさる》
                         ―柿本人麻呂―〔巻一・三九〕

吉野行幸みゆき
新装成った 宮滝離宮 
人麻呂の 天皇賛歌が 響く 

〔なんと 白々しらじらしくも うたえるものだ
 寿ことほぎ言葉のつむぎ 溢れ出る情感こころ
 山の神 川の神をも ひれ伏せさせる 天皇おおきみ
 その天おおきみまで 見下ろすかのような 詠い声
 そう聞くのは わしの僻心ひがごころ
 天皇おおきみの偉業 これに勝る 治世はない
 それにしても・・・〕 

〔もう 長歌はやらぬ 
 従賀歌なぞ うたわぬぞ
 このお人には 付いて行けぬは〕 
 夕刻 宮滝の淵 独りたたずむ 黒人
郭公かっこうが 一羽 鳴き去ってゆく

大和やまとには 鳴きてからむ 呼子鳥よぶこどり きさの中山  呼びそ越ゆなる
郭公鳥かっこどり きさの中山 鳴き越えた 大和へ行って 鳴いてんやろか》  
                         ―高市黒人―〔巻一・七〇〕

〔どうして わしの歌は こうも影を帯びるのか 
 人のこころ 自分の心を 素直に うたえぬのか〕
自分への 苛立いらだちを 覚える 黒人がいた



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