【掲載日:平成21年8月25日】
大和には 鳴きてか来らむ 呼子鳥
象の中山 呼びそ越ゆなる
【宮滝の吉野川】
やすみしし わご大君 神ながら 神さびせすと 吉野川 激つ河内に 高殿を 高知りまして 登り立ち 国見をせせば
《天皇さんは 神さんや 吉野の川の 河淵 に 御殿造られ 登りみる》
畳はる 青垣山 山神の 奉る御調と 春べは 花かざし持ち 秋立てば 黄葉かざせり
《山の神さん 飾りやと 春には花を 咲かせはり 秋には黄葉 作りはる》
逝き副ふ 川の神も 大御食に 仕へ奉ると 上つ瀬に 鵜川を立ち 下つ瀬に 小網さし渡す
《川の神さん 御馳走と 上流で鵜飼を 楽しませ 下流で網取り さしなさる》
山川も 依りて仕ふる 神の御代かも
《山や川 みんな仕える 天皇さんに》
―柿本人麻呂―〔巻一・三八〕
山川も 依りて仕ふる 神ながら たぎつ河内に 船出せすかも
《山川の 神も仕える 天皇が 逆巻く川に 船出しなさる》
―柿本人麻呂―〔巻一・三九〕
吉野行幸
新装成った 宮滝離宮
人麻呂の 天皇賛歌が 響く
〔なんと 白々しくも 詠えるものだ
寿ぎ言葉の紡ぎ 溢れ出る情感
山の神 川の神をも ひれ伏せさせる 天皇
その天皇まで 見下ろすかのような 詠い声
そう聞くのは わしの僻心か
天皇の偉業 これに勝る 治世はない
それにしても・・・〕
〔もう 長歌はやらぬ
従賀歌なぞ 詠わぬぞ
このお人には 付いて行けぬは〕
夕刻 宮滝の淵 独り佇む 黒人
郭公が 一羽 鳴き去ってゆく
大和には 鳴きてか来らむ 呼子鳥 象の中山 呼びそ越ゆなる
《郭公鳥 象の中山 鳴き越えた 大和へ行って 鳴いてんやろか》
―高市黒人―〔巻一・七〇〕
〔どうして わしの歌は こうも影を帯びるのか
人の情 自分の心を 素直に 詠えぬのか〕
自分への 苛立ちを 覚える 黒人がいた
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