令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

黒人編(2)古の人にわれあれや

2009年08月22日 | 黒人編
【掲載日:平成21年8月24日】

いにしへの 人にわれあれや
       ささなみの ふるみやこを 見れば悲しき

【「大津京址」 繁る樹木の陰 崇福寺址からの展望】


大津宮陥落ののち 十数年が過ぎ 
持統天皇の御代みよ
父 天智天皇の供養にと 近江への行幸みゆき

高市黒人たけちのくろひとは 従賀の一員として 参じていた
人麻呂も 同行だ 
〔当代一との 声望の歌人うたびとと 一緒だ
 わしとて 歌詠みとして 立身の望みはある 
 人麻呂殿から 学ぶ 良い機会じゃ〕 

帝のお召 
人麻呂は詠う 

玉襷たまだすき 畝火うねびやまの 橿原かしはらの 日知ひじり御代みよゆ れましし かみのことごと つがの いやつぎつぎに あめした らしめししを・・・
《畝傍の山の 橿原の 神武じんむ御代みよを 始めとし 引き継ぎきたる 大君おおきみの 治め給いし 都やに・・・》
                          ―柿本人麻呂―〔巻一・二九の一部〕

神々こうごうしくも 朗々と
並ぶなき 声調 気魄  
聞きいる者 すべて もく
人麻呂 一人の世界が 広がる 

おおやけの 歌奏上が済み 湖畔にたたずむ 影二つ
〔素晴らしい 歌謡でござった 
 人麻呂殿でうては ああは行き申さぬ
 わたくしめも 励みを重ね 
 少しでも 近づきとう存じます〕 
〔いやいや 精一杯でござる 
 天皇おおきみを前にしての歌詠み
 全身全霊での なせる仕業わざ
人麻呂は 顎鬚あごひげを ぜる

〔ところで 黒人殿 
 ここは 今は亡き 天智帝の旧都 
 鎮魂ちんこんの歌 いかがかな〕

いにしへの 人にわれあれや ささなみの ふるみやこを 見れば悲しき
《この古い 都見てたら 泣けてくる 古い時代の 自分ひとやないのに》 
                         ―高市黒人―〔巻一・三二〕

ささなみの 国つ御神の うらさびて 荒れたるみやこ 見れば悲しも
《ここの国 作った神さん 心え みやこ荒れてる 悲しいこっちゃ》 
                         ―高市黒人―〔巻一・三三〕

〔こやつ なかなかの歌詠み 心のほとばしりはないが みたるものを 秘めておるわい〕
人麻呂の心中 察するすべ無く 
黒人に背に 冷汗が流れる 
〔人麻呂殿に 披露するような歌か 
 競おうなどと 百年早いわ 
 弾けるたましいが 欲しいものじゃ・・・〕
湖畔に 吹き下ろす 比良の風 
黒人の 胸を 吹き抜ける 



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