【掲載日:平成22年7月6日】
相思はぬ 人を思ふは 大寺の
餓鬼の後に 額づくがごと
狂わんばかりの 笠郎女
疲れ果て 心へとへと 家持
我れも思ふ 人もな忘れ おほなわに 浦吹く風の 止む時なけれ
《忘れんと うち思てるで あんたもな いついつまでも 途切れんように》
―笠郎女―〈巻四・六〇六〉
思ふにし 死するものに あらませば 千遍ぞ我れは 死に返らまし
《もしもやで 恋焦がれして 死ぬんなら うち千回も 死んで仕舞てる》
―笠郎女―〈巻四・六〇三〉
相思はぬ 人を思ふは 大寺の 餓鬼の後に 額づくがごと
《気ィ冷めた 人思うんは 寺の餓鬼 尻から拝む みたいなもんや》
―笠郎女―〈巻四・六〇八〉
〈我れは 餓鬼の尻か
いや それ以下やも知れぬ
あれだけの いい女
大事に してやれなんだ〉
今更に 妹に逢はめやと 思へかも ここだ我が胸 いぶせくあるらむ
《あんたには もう逢わんとこ 思うけど ちょっとこの胸 ちくちくするな》
―大伴家持―〈巻四・六一一〉
なかなかに 黙もあらましを 何すとか 相見そめけむ 遂げざらまくに
《遂げられん 恋やになんで 逢うたんや 声掛けたんが 間違いやった》
―大伴家持―〈巻四・六一二〉
二人の 長く激しい恋は 終わった
恨み辛みが 痛痒い思い出と なった頃
思わずに 文が届く
情ゆも 我は思はざりき またさらに 我が故郷に 帰り来むとは
《なんでまた 故郷に帰って 来たんやろ 恋失くさした あんたの所為や》
―笠郎女―〈巻四・六〇九〉
近くあらば 見ずともあらむを いや遠く 君が座さば 有りかつましじ
《あんたはん 近く居ったら 生きてける 離れて仕舞て 生きる甲斐無い》
―笠郎女―〈巻四・六一〇〉
笠郎女にとって 一世一代の恋であった
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