【掲載日:平成23年6月7日】
草枕 旅の翁と 思ほして
針ぞ賜へる 縫はむ物もが
帝聖武 退位の報に接し
一挙の虚脱感
寄る辺ない 胸のたゆたい
心穏やか ならざるの日々
ついに堪らず
家持は 大嬢を 越へと招き寄せる
心 安寧得たれど
歌心 開かず 四月の中断
再開に 手差し伸べるは
またしても 池主
越前国の掾 池主から 告発状が届く
《賜り物確かに受領 有難き限り
喜び勇み 心躍らせ開くに
何と 上書き中身相違したり
さては 例の謀り癖かと憤慨
真偽取り替えの罪 軽からず》
草枕 旅の翁と 思ほして 針ぞ賜へる 縫はむ物もが
《わしのこと 爺と思て この針を 贈ったんかい なら布寄越せ》
―大伴池主―〔巻十八・四一二八〕
針袋 取り上げ前に 置き返さへば おのともおのや 裏も継ぎたり
《針袋 出して前置き 良う見たら 裏地付いてる ご丁寧にも》
―大伴池主―〔巻十八・四一二九〕
針袋 帯び続けながら 里ごとに 照らさひ歩けど 人も咎めず
《針袋 腰にぶら下げ あちこちと 見せ歩いたが 誰も気にせん》
―大伴池主―〔巻十八・四一三〇〕
鶏が鳴く 東を指して ふさへしに 行かむと思へど 由も実なし
《この袋 似合う東国に 行こしたが 序切っ掛け 何にも無いわ》
―大伴池主―〔巻十八・四一三一〕
【十一月十二日】
《先日の一件 謀りの理 了解
願い品 上品に替りしに 難詰いたし
当方僻みによる誤解 只々陳謝》
縦様にも かにも横様も 奴とぞ 我れはありける 主の殿門に
《表から 見ても裏から 透かしても わし阿呆やった 主人相手に》
―大伴池主―〔巻十八・四一三二〕
針袋 これは賜りぬ すり袋 今は得てしか 翁さびせむ
《針袋 これ貰います すり袋 次に下さい 爺似合いの》
―大伴池主―〔巻十八・四一三三〕
【十一月十五日】
果たして家持謀りは?
真の賜り物は?
何故に 東国?
はたまた池主 独り芝居?
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