【掲載日:平成23年10月4日】
木の暗の 繁き峰の上を
霍公鳥 鳴きて越ゆなり 今し来らしも
天平勝宝六年(754)
この年 先の唐派遣の使い
大使 藤原清河
八次派遣の阿倍仲麻呂共々 帰途に就くも
暴風 安南漂着 後唐戻り 残留
副使 大伴古麻呂 鑑真伴い 一月帰国
同じく副使 吉備真備 紀伊漂着も無事帰還
家持 四月 兵部少輔就任
比較的平穏な 一年が 過ぎて行った
【正月四日】家持屋敷 新年の賀 一族宴飲
霜の上に 霰た走り いや増しに 我れは参ゐ来む 年の緒長く
《霜霰 重ね降る様に 何回も ここ訪ねるで この先々も》
―大伴千室―(巻二十・四二九八)
年月は 新た新たに 相見れど 我が思ふ君は 飽き足らぬかも
《毎年に 年来る度 お逢いする 当主変わらん 惚れ惚れします》
―大伴村上―(巻二十・四二九九)
霞立つ 春の初めを 今日のごと 見むと思へば 楽しとぞ思ふ
《霞立つ 今日の佳き日の 初春に お逢い出来るん 光栄ですよ》
―大伴池主―(巻二十・四三〇〇)
【正月七日】天皇・上皇・皇太后参集の
東院御殿 豊の宴
印南野の 赤ら柏は 時はあれど 君を我が思ふ 時は実なし
《一時や 赤ら柏の 色付くん 大君思うんは いつもずうっと》
―安宿王―(巻二十・四三〇一)
【三月十九日】家持 庄園 槻の樹下宴
山吹は 撫でつつ生さむ ありつつも 君来ましつつ 插頭したりけり
《山吹を 大切大切に 育てるで 当主来る度 髪挿すよって》
―置始長谷―(巻二十・四三〇二)
我が背子が やどの山吹 咲きてあらば 止まず通はむ いや毎年に
《長谷庭 山吹花が 咲いた時 常時来るで 年変わる度》
―大伴家持―(巻二十・四三〇三)
【三月二十五日】左大臣橘諸兄宴 孝謙乳母宅
山吹の 花の盛りに かくの如 君を見まくは 千年にもがも
《図らずも 山吹花の盛りに お逢い出来 ずっとの目見え 願うています》
―大伴家持―(巻二十・四三〇四)
【四月】思えば 勝宝三年(751)越以来の霍公鳥
木の暗の 繁き峰の上を 霍公鳥 鳴きて越ゆなり 今し来らしも
《木ぃ繁る 峰上飛んで ほととぎす 鳴き越えてった 直ここ来るで》
―大伴家持―(巻二十・四三〇五)
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