【掲載日:平成23年11月11日】
うるはしみ 我が思ふ君は
なでしこが 花に擬へて 見れど飽かぬかも
橘諸兄
左大臣として 政界首班の地位にあるも
すでに 齢七十二
政治は 紫微中台を中心に 動き
藤原仲麻呂の実権は
確たるものに なりつつある
天平勝宝七年(755)十一月
一つの事件が起こる
『左大臣橘諸兄 上皇様侮蔑 反意あり』
の密告 聖武上皇へ
上皇の信頼揺るがず 不問
恥じ入った 橘諸兄 翌年二月 辞任
これにより 橘奈良麻呂 謀略加速
一挙殲滅狙う 藤原仲麻呂陰謀か
事件に先立つ 五月
橘諸兄 丹比国人宅訪ねての 宴
奈良麻呂事件に
丹比国人・鷹主・礼麻呂・犢養ら関与
果たして この時 取り込まれしや
我がやどに 咲けるなでしこ 幣はせむ ゆめ花散るな いやをちに咲け
《庭咲いた 撫子散るな 礼するで 若いまんまで 咲き続けてや(益々若う 居って下さい)》
―丹比国人―(巻二十・四四四六)
幣しつつ 君が生ほせる なでしこが 花のみ訪はむ 君ならなくに
《礼やって 国人育てた 撫子の 花見るだけに ここ来る違うで(国人見とうて 来るんやで)》
―橘諸兄―(巻二十・四四四七)
紫陽花の 八重咲く如く 八つ代にを いませ我が背子 見つつ偲はむ
《紫陽花は 花長咲くで 見る度 国人長生き してやと思う》
―橘諸兄―(巻二十・四四四八)
【五月十一日】
七日後 橘諸兄主催の宴 奈良麻呂邸
なでしこが 花取り持ちて うつらうつら 見まくの欲しき 君にもあるかも
《撫子の 花手に持って 見るみたい ずっと逢いたい 橘卿さんです》
―船王―(巻二十・四四四九)
家持不参 後追和は 橘諸兄への敬意か
不参は 巻き込まれ 忌避か
我が背子が やどのなでしこ 散らめやも いや初花に 咲きは増すとも
《この庭の 撫子花は 散らへんと 咲き初め花に 負けんと咲くで》
―大伴家持―(巻二十・四四五〇)
うるはしみ 我が思ふ君は なでしこが 花に擬へて 見れど飽かぬかも
《素晴らしと 思う橘卿は 撫子の 花と一緒や 見る度嬉し》
―大伴家持―(巻二十・四四五一)
【五月十八日】
――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。

※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます