goo blog サービス終了のお知らせ 

令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・政争の都編(17)そよと鳴るまで

2011年10月21日 | 家待・政争の都編
【掲載日:平成23年10月21日】

・・・遥遥はろばろに 家を思ひ
       負征矢おひそやの そよと鳴るまで 嘆きつるかも



 とてものこと 歌と言うに 程遠い
  しかし
  この 血を引き絞るような 叫びは どうじゃ
  これが 歌やも知れぬ)
 おう 思い出したぞ
 憶良殿詠いし 大伴君熊凝おおとものきみくまこりが歌
 京師みやこのぼり途上の急死 熊凝くまこりに代わって
 うとうてやったという・・・)
防人さきもりが心 詠うてやるか)

大君おほきみの みことかしこみ 妻別れ 悲しくはあれど 大夫ますらをの こころ振り起し 取りよそひ 門出かどでをすれば 
《国からの 任命受けて 旅に出る 妻との別れ 悲しけど 気を取り直し 腹決めて 支度したく整え 旅立つに》
垂乳根たらちねの 母掻きで 若草の 妻は取り付き たひらけく 我れはいははむ 真幸まさきくて はやかへと 袖もち 涙をのごひ むせひつつ 言問ことどひすれば 
《母は頭を さすり 妻は足元 取りすがり 「無事を祈って 待つよって つつがはよに 帰って」と 涙を袖で きながら むせび泣きして うのんで》
むら鳥の 出で立ちかてに とどこほり かへり見しつつ いやとほに 国をはなれ いや高に 山を越え過ぎ あしが散る 難波なにはて 
《鳥飛ぶには 出られんで あと振り返り 足よどむ 故郷くにはだんだん とおなって 山を仰山ぎょうさん 越えてきて 難波なにわにやっと 辿たどり来た》
ゆふしほに 船を浮けすゑ 朝なぎに 舳向へむがむと さもらふと 我がる時に 
《船ゆうしおに 浮かばせて 朝凪ごと 舳先へさき向け 潮待ちしてる その時に》
春霞 島廻しまみに立ちて たづの 悲しく鳴けば 遥遥はろばろに 家を思ひ 負征矢おひそやの そよと鳴るまで 嘆きつるかも
《春の霞が 立ち込めて 鶴が悲しゅう 鳴いたんで はるかな家を 思い出し 背中の征矢そやが かたかたと 音するほどに 嘆いて仕舞しもた》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四三九八)

海原うなはらに 霞たなびき たづの 悲しきよひは 国辺くにへし思ほゆ
《海の上 霞なびいて 鶴の声 響くよいには 故郷くに思い出す》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四三九九)

いへおもふと れば たづが鳴く 葦辺あしへも見えず 春の霞に
故郷くに思もて 寝られんよるに 鶴鳴くよ 霞で葦辺あしべ 見えやせんけど》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四四〇〇)
                                  【二月十九日】