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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(一)(26)見とも飽(あ)くべき

2011年01月14日 | 家待・越中編(一)友ありて
【掲載日:平成23年3月8日】

乎布をふの崎 ぎたもとほ
      終日ひねもすに 見ともくべき 浦にあら無くに



明くる二十四日 
重ねての宴席 
「家持殿 さすがこし 
 今日のの海 如何いかにも見事
 いやはや 堪能たんのう致した
 なになに  
 明日は 布勢ふせの浦へと お誘いあるか 
 役目えしにより
 早々の帰還をと 思いるが
 とどまれと仰せか そうは遊んでおれぬぞ」

如何いかにある 布勢ふせの浦ぞも 幾許ここだくに 君が見せむと 我れをとどむる
《よっぽどに えとこやろな 布勢ふせの浦 守殿あんた見せとて わしとどめるん》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ―〔巻十八・四〇三六〕

乎布をふの崎 ぎたもとほり 終日ひねもすに 見ともくべき 浦にあら無くに
乎布をふ崎は 船ぎ廻し 晩までも 見ても見きん 浜やでほんま》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十八・四〇三七〕

玉櫛笥たまくしげ いつしか明けむ 布勢ふせの海の 浦を行きつつ たまひりはむ
《このよるは 早よ明けんかな 布勢ふせの海 浜辺あるいて たま拾おうや》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ―〔巻十八・四〇三八〕

音のみに 聞きて目に見ぬ 布勢ふせの浦を 見ずはのぼらじ 年はぬとも
《まだ見んが 噂に高い 布勢ふせの浦 見んとくかい 年ししても》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ―〔巻十八・四〇三九〕

布勢ふせの浦を 行きてし見てば 百磯城ももしきの 大宮人おほみやびとに かたぎてむ
布勢ふせ浦を 見たら絶対 都る おお宮人みやびとに 伝えでくか》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ―〔巻十八・四〇四〇〕

梅の花 咲き散るそのに 我れ行かむ 君が使を かたちがてら
《梅花が 咲き散るそのに さき行くで 守殿あんたの使い 待たれんよって》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ―〔巻十八・四〇四一〕

藤波ふぢなみの 咲き行く見れば 霍公鳥ほととぎす 鳴くべき時に 近づきにけり
《藤の花  次々咲くで ほととぎす 鳴くん近いな 待ち遠しいで》
                         ―田辺福麻呂たなべのさきまろ―〔巻十八・四〇四二〕

明日あすの日の 布勢ふせ浦廻うらまの 藤波ふぢなみに けだし鳴かず 散らしてむかも
明日あした行く 布勢ふせの浜辺の 藤波は 鳴きに来んまま 散るんとちゃうか》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十八・四〇四三〕