【掲載日:平成23年4月15日】
珠洲の海人の 沖つ御神に
い渡りて 潜き採るといふ 鰒玉 五百箇もがも・・・
家待
都で待つ 大嬢へ 真珠を送るべく
真珠玉を 得んと願うて 詠う
珠洲の海人の 沖つ御神に い渡りて 潜き採るといふ 鰒玉 五百箇もがも
《珠洲海人が 海の沖行き 潜り取る 鮑の玉を 五百欲し》
愛しきよし 妻の命の 衣手の 別れし時よ ぬばたまの 夜床片さり
朝寝髪 掻きも梳らず 出でて来し 月日数みつつ 嘆くらむ 心慰に
《別れ置き来た 愛し妻 夜床を独り 寝て暮らし
朝寝の髪も 梳かへんで 別れた月日 数えてる 嘆き鎮めの 慰みに》
霍公鳥 来鳴く五月の 菖蒲草 花橘に 貫き交へ 蘰にせよと 包みて遣らむ
《ほととぎす鳴く 五月咲く 菖蒲の草と 橘と 一緒の糸に 繋ぎ通し 蘰にしいと 包んで送ろ》
―大伴家持―〔巻十八・四一〇一〕
白玉を 包みて遣らば 菖蒲草 花橘に 合へも貫くがね
《真珠玉 包み送るで 菖蒲草 花橘と 一緒通しや》
―大伴家持―〔巻十八・四一〇二〕
我妹子が 心慰に 遣らむため 沖つ島なる 白玉もがも
《待つ妻の 心和みに 送るんで 沖ある島の 真珠が欲しい》
―大伴家持―〔巻十八・四一〇四〕
沖つ島 い行き渡りて 潜くちふ 鰒玉もが 包みて遣らむ
《沖の島 行き潜り取る 鮑玉 欲しいもんやな 送りたいんで》
―大伴家持―〔巻十八・四一〇三〕
白玉の 五百箇集ひを 手にむすび 遣せむ海人は むがしくもあるか
《真珠玉 五百まとめて 手に掬い 呉れる漁師は 感謝感激》
―大伴家持―〔巻十八・四一〇五〕
沸々と湧く思いは 妻思い 都思い
はたまた 友思い・・・