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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・青春編(一)(26)われを還(かへ)すな

2010年06月01日 | 家持・青春編(一)恋の遍歴
【掲載日:平成22年8月27日】

ぬばたまの 昨夜きそかへしつ 今夜こよひさへ
             われを還すな 路の長道ながて



家持 思い直して 紀郎女きのいらつめ
やんぬるかな 宮中娘子おとめの一件
既に  紀郎女の知るところ

ことしは ことなるか 小山田をやまだの 苗代なはしろみづの 中淀なかよどにして
《先に声  掛けて来たんは 誰やろか なんで今更 尻込みすんや》
                         ―紀女郎―〈巻四・七七六〉 

吾妹子わぎもこが 屋戸やどまがきを 見に行かば けだしかどより かへしてむかも
《お前ん 間垣まがき見ようと 行ったなら 門からお前 返すのやろか》
                         ―大伴家持―〈巻四・七七七〉 
うつたへに まがきの姿 見まく欲り 行かむと言へや 君を見にこそ
《そうやない がき見とうて 行くんちゃう あんた見とうて 出かけるんやで》
                         ―大伴家持―〈巻四・七七八〉 

板葺いたぶきの 黒木くろきの屋根は 山近し 明日あすの日取りて 持ちてまゐ
《板葺きの 黒木の屋根を 明日あしたにも 持っていきます 山近いんで》
                         ―大伴家持―〈巻四・七七九〉 
黒木取り かやりつつ つかへめど いそしきわけと めむともあらず
《黒木取り 草も刈り取り したけども ようやったなと めへんやろな》
                         ―大伴家持―〈巻四・七八〇〉 
ぬばたまの 昨夜きそかへしつ 今夜こよひさへ われを還すな 路の長道ながて
《真黒な 夜道昨日きのうは かえされた 今日は還しな 道中どうちゅう長い》
                         ―大伴家持―〈巻四・七八一〉 
建築途上の 紀郎女やしき
こと寄せての  家持が詰め寄り
年増女の曲がったへそは 戻らない

紀郎女 気心知れた友「宮中娘子おとめ」の許 快哉かいさいの歌を贈る 玉藻を土産にして 
風高く には吹けども 妹がため 袖さへ濡れて 刈れる玉藻たまも
《岸辺には 風吹き波も 高いのに 袖を濡らして 採ったぉやで》
                         ―紀女郎―〈巻四・七八二〉 
〈尻軽な 浮気男の 相聞の 波風しのぎ 守った玉藻もぉみさお〉や〉

ややあって  家持の耳に 
「紀郎女へ新たな男の妻問い」の風聞うわさ

瞿麦なでしこは 咲きて散りぬと 人は言へど わがめし野の 花にあらめやも
撫子なでしこは 咲いて散ったて 聞いたけど わし眼ぇ付けた 花ちゃうやろな》
                         ―大伴家持―〈巻八・一五一〇〉 

今更に  何を言っても 負け惜しみ