〝どこどこどこどこ、どこ行くの
お白粉塗ってどこ行くの
どこどこどこどこ、どこ行くの
お太鼓締めてどこ行くの
どこどこどこどこ、どこ行くの
白足袋履いてどこ行くの〟
みや子を拾った記念日には、
お金のないママは即興の歌を歌ってお祝いをしてきました。
みや子はじっと目を見つめて聞いてくれました。
みや子と出会ったのは、
京の底冷えも極まる2000年1月19日。
カフェからコンビニに行く途中、
二軒隣の事務所の前で、
誰かが置いたミルクに背を向けて、
もう生きることを諦めたような猫が
汚れにまみれ痩せた体でうずくまっていました。
猫は好きでも、
賃貸の住まいで、出張の多い生活では
飼えないと思ってきたのに、
あの日は、
放っておいたら死んでしまう、
店の三階にしばらく置いてやったら、と
後先考えずにタオルにくるんで連れてきてしまった。
みや子のゴロゴロは特大で
三階へ上る階段のところからもう
聞こえていました。
かあちゃん、有難う、有難う
カフェの三階に置いていたみや子を、
夜も住まいに連れて帰るようになり、
いつの間にか段ボールに入れて
一緒に通勤する猫にしてしまい
出張で東京に行くときも
連れて行く猫にしてしまい
友達が観光で京都に来ても
お寺や屋形船に連れて行きたい猫にしてしまって。
夜中に目を覚ますと、
みや子がママの顔や手をペロペロなめていて
まるでお母さんみたいでした。
カフェを閉じて東京に戻るときも
みや子が居たから心がぽかぽかだった。
ラーメン屋さんでアルバイトをしても、
みや子が玄関で出迎えてくれたから
心はヌクヌクだった。
〝しーろいとこが真っ白で
くーろいとこが真っ黒で
茶色いとこが真っ茶色〟
みや子は無口で大人で
忍耐強くて自立していて
女っぽくて淑やかで
情愛深くて気難しくて
獣医さんから
「この子が人間だったら、
男はコロッと参るわね」
と言われる自慢の猫だった。
みや子を置いて京都になんか行けないから
宿に御願いして一緒行くようになっても
みや子はバスケットの中で
一言も鳴かなかった。
ママの連れて行くところはきっといいところって信頼してくれて。
その通りみや子は京都で目を輝かせて
ひょこひょこ歩いて楽しそうだった。
ふるさとの匂いがしたのね。
〝みや子の目目はメメラルド
みや子の息はマンステール
みや子の手手はす、あ、ま〟
それでも去年の春は宿から帰るとき
籠に入った途端に鳴いて、
京都駅までずっと鳴いていた。
「かあちゃん、うち帰りたない。京都がええ」
去年の夏の厳しさは
小食のみや子の食をさらに細くし
じっと秋を待っていた。
そして急に涼しくなった九月の朝、
みや子が天国に旅立つのを見送った。
ママはみや子が神様のお使いだったのを知っています。
みや子が来たのは
カフェが傾いてお兄ちゃんが東京に就職しに行く前の日。
みや子はママに
「ママはブログを始めたし、
年末でカフェのローンも終るから
もうみや子が居なくても大丈夫ね」
そう言ってお別れをしたのです。
みや子のお骨は鴨川ベリに埋めました。
11回目の記念日、
今年は歌が歌えません
お白粉塗ってどこ行くの
どこどこどこどこ、どこ行くの
お太鼓締めてどこ行くの
どこどこどこどこ、どこ行くの
白足袋履いてどこ行くの〟
みや子を拾った記念日には、
お金のないママは即興の歌を歌ってお祝いをしてきました。
みや子はじっと目を見つめて聞いてくれました。
みや子と出会ったのは、
京の底冷えも極まる2000年1月19日。
カフェからコンビニに行く途中、
二軒隣の事務所の前で、
誰かが置いたミルクに背を向けて、
もう生きることを諦めたような猫が
汚れにまみれ痩せた体でうずくまっていました。
猫は好きでも、
賃貸の住まいで、出張の多い生活では
飼えないと思ってきたのに、
あの日は、
放っておいたら死んでしまう、
店の三階にしばらく置いてやったら、と
後先考えずにタオルにくるんで連れてきてしまった。
みや子のゴロゴロは特大で
三階へ上る階段のところからもう
聞こえていました。
かあちゃん、有難う、有難う
カフェの三階に置いていたみや子を、
夜も住まいに連れて帰るようになり、
いつの間にか段ボールに入れて
一緒に通勤する猫にしてしまい
出張で東京に行くときも
連れて行く猫にしてしまい
友達が観光で京都に来ても
お寺や屋形船に連れて行きたい猫にしてしまって。
夜中に目を覚ますと、
みや子がママの顔や手をペロペロなめていて
まるでお母さんみたいでした。
カフェを閉じて東京に戻るときも
みや子が居たから心がぽかぽかだった。
ラーメン屋さんでアルバイトをしても、
みや子が玄関で出迎えてくれたから
心はヌクヌクだった。
〝しーろいとこが真っ白で
くーろいとこが真っ黒で
茶色いとこが真っ茶色〟
みや子は無口で大人で
忍耐強くて自立していて
女っぽくて淑やかで
情愛深くて気難しくて
獣医さんから
「この子が人間だったら、
男はコロッと参るわね」
と言われる自慢の猫だった。
みや子を置いて京都になんか行けないから
宿に御願いして一緒行くようになっても
みや子はバスケットの中で
一言も鳴かなかった。
ママの連れて行くところはきっといいところって信頼してくれて。
その通りみや子は京都で目を輝かせて
ひょこひょこ歩いて楽しそうだった。
ふるさとの匂いがしたのね。
〝みや子の目目はメメラルド
みや子の息はマンステール
みや子の手手はす、あ、ま〟
それでも去年の春は宿から帰るとき
籠に入った途端に鳴いて、
京都駅までずっと鳴いていた。
「かあちゃん、うち帰りたない。京都がええ」
去年の夏の厳しさは
小食のみや子の食をさらに細くし
じっと秋を待っていた。
そして急に涼しくなった九月の朝、
みや子が天国に旅立つのを見送った。
ママはみや子が神様のお使いだったのを知っています。
みや子が来たのは
カフェが傾いてお兄ちゃんが東京に就職しに行く前の日。
みや子はママに
「ママはブログを始めたし、
年末でカフェのローンも終るから
もうみや子が居なくても大丈夫ね」
そう言ってお別れをしたのです。
みや子のお骨は鴨川ベリに埋めました。
11回目の記念日、
今年は歌が歌えません
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