文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

珈琲店タレーランの事件簿 7 悲しみの底に角砂糖を沈めて

2022-04-22 08:49:34 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 この巻は、7つの短編集になっている。7巻目だから7つ短編を治めたという訳ではないだろうが、これらの短編に共通しているのはバリスタの切間美星が、喫茶店の客の話を聞いて、その謎ときをするというもの。ただ美星がハンドミルをコリコリ回して、コーヒー豆を挽きながらこう決めゼリフを言うシーンはない。
「その謎、たいへんよく挽けました―」
さすがに、作者も恥ずかしくなって止めたか。

 もうひとつ、この巻には美星の彼氏たる「アオヤマ」君は出てこない。ただ最後の話に、男性店員なる者が出てくるので、もしかしたらそれが「アオヤマ」君なのかもしれないが。いや夫婦漫才をほうふつさせるような掛け合いをしていたので、その可能性は高いが。

 収録されているのは、次の7編。いずれも事件そのものは、殺人事件のような大きなものではない。

〇ビブリオバトルの波乱
 ビブリオバトルの決勝で、順番を決める抽選箱に、7と8の数字のスタンプを押されたくじがなくなり、その代わり3と4の数字が押されたくじが入っていた。いったい誰がなんのために。

〇歌声は響かない
 高校時代の美星の話。美星は歌手になりたかったらしい。

〇ハネムーンの悲劇
 加納七恵の姉夫婦が、ハワイにハネムーンに行こうと関空に向かっているときに交通事故事故にあい、義兄は死亡。姉も重体に。その後姉は回復したが、彼女には行ってないはずのハネムーンの記憶が。そしてキャリーバッグの中には、姉がお土産に買ってくると言っていた、現地にしか売っていないはずのコーヒー豆が。

〇フレンチプレスといくつかの嘘
 客のカップルの男性に美星がコーヒーをフレンチプレスで入れたので、最後まで飲まない方がいいと告げる。でも実際にはハンドドリップで入れていた。その理由は

〇ママとかくれんぼ
 ガールズバーで働いている結城英美里は、子供の頃母親に、東京から福知山にかくれんぼをするために、連れていかれた。その後両親は離婚し、英美里は弁護士である父親と暮すことに。ところが母親の再婚相手から、母親が乳癌で長くないからあって欲しいと言われる。

〇拒絶しないで
 美星が大学生の柔道部員から告白される。美星はその学生とお友達からということで連絡先を交換するのだが、別の客からナプキンに「拒絶しないで」と走り書きで伝えられていた。

〇ブルボンポワントゥの奇跡
 浅井一太の下に、昔の元カノから電話がかかってくる。彼女は同性の同僚と間違えたと言っていたが、一太は、携帯のキャリアを変えて、その際電話番号も変わっていた。なぜ元カノは知らないはずの電話番号に電話することができたのか。

 しかし、いくら不思議がっていても、喫茶店でいきなり、店員から謎解きをされたらびっくりするだろう。正に奇人変人。美星、どんどんその変人ぶりをエスカレートさせて欲しいと思う。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 半七捕物帳 44 むらさき鯉 | トップ | 佐伯さんは眠ってる(2) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

書評:小説(ミステリー・ホラー)」カテゴリの最新記事