文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?

2018-10-15 21:41:02 | 書評:学術教養(科学・工学)
果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?
クリエーター情報なし
ダイヤモンド社

・ロバート・H・ラスティグ、(訳)中里京子

 よく太っている人は自己管理ができてないと言われる。ダイエットをしようとしてくじけてしまい、自分はなんて意思が弱いんだと思ったことはないだろうか。そんな人はこの本を読むといいかもしれない。何しろ、太っているのは本人の責任ではないと断言しているのだ。それはひとえにホルモンの働きによる。

 例えばインスリンは脂肪を蓄える指令を出す。だからこれが沢山あると太ってしまうのだ。脂肪細胞ではレプチンというホルモンがつくられ、脂肪をエネルギーに変える働きをするのだが、血中のインスリン濃度が高いと、レプチンへの抵抗性が増し、脂肪がたまる一方なのである。

 コルチゾールというホルモンはストレスに対処するために分泌される。しかし、このホルモンが増やすのは内蔵脂肪なのだ。コルチゾールは、体をインスリン抵抗性にする。その結果血中のインスリン濃度が増し、エネルギーは内蔵脂肪として蓄積されるということらしい。骨、筋肉、皮下脂肪が増えるのはいいが、内臓脂肪が増えるのは良くない。そして、果糖は、高い率で脂肪に変換されるのである

 確かにアメリカには、びっくりするような肥満の人がいる。自分では動けないくらい太っているのだ。日本ではそんな人をあまり見たことがない。ただ、食生活が洋風になり、ファストフードを今より頻繁に食べるようになると油断はできないと思う。

 たまたま本書を読んでいる時、テレビで、BMIとは、保険会社が肥満の基準を作り金儲けのために引っ張り出した数字で、医学的根拠がないということを言っていたが、本書でもBMIに対しては否定的である。

 BMIとは体重(㎏)/身長(m)^2で表されるものだが、健康診断でこの値を聞いた人も多いだろう。そもそも、骨太の人や筋肉モリモリの人は、太っていなくても、BMIが大きくなるというのがその理由だが、ものすごく納得性が高い。どうしてこんな単純なことに皆踊らされているのか不思議だ。

 ちなみに私はメタボ基準にも懐疑的だ。この基準の一つにウエストサイズが入っており、男性85cm以上、女性90cm以上だという。どうして身長要件が入ってないんだろう。例えば身長160㎝位の人とバスケットやバレーボールの選手で2mくらいの身長がある人が同じ基準だと言われても、ちょっと信じがたい。

 大食いタレントと言われる人たちがいる。彼ら、彼女たちは概してスマートだ。あれだけ食べるんなら体重が200㎏越えでも不思議とは思わないにも拘わらずにだ。その一方では少し食べただけで太ってしまう人もいる。こういった例をみていると肥満は決して自己責任だけではないように思えてくるのだが。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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