文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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技士道 十五ヶ条 ものづくりを極める術

2023-03-19 18:29:43 | 書評:学術教養(科学・工学)

 

 本書は、日本に統計的品質管理を普及させた西堀榮三郎さんが技士の心得のようなものをまとめたものだ。理系の人らしく、精神論になっていないところがいい。西堀さんは、京大理学部で化学を学んだあと、京大で助教授になったが、一旦東京電気(現東芝)に入って、また京大に戻り助教授・教授や南極越冬隊の隊長も務めた人である。

 西堀さんは、技術志向、現場志向の人だ。そんな西堀さんが、なせ、工学部でなく理学部に進んだのか?実は西堀さんは、将来知識を応用する技術者になりたいと思っていたが、そのための基礎知識を身に着けるためには理学部の方がいいと考えたらしい。その他にも品質管理の話など、中々含蓄の深い話が続いている。昔一次QCサークルが流行っていた時期がある。しかしいくら現場で改善をしても、経営者が大きな失敗をすればあっという間にそんなものは誤差となってしまう。それに、いくらQCサークルをやっても、ちょっと褒められて終わりである。給料が画期的に上がる訳ではない。従業員もそういった現実に気が付き、次第に受ける発表の仕方や見栄えのいい発表といった、本質とは関係のないところに力を入れるようになった。上の方も見る目がないものだから、そんな発表の方を評価する。QCサークルは衰退すべくして衰退したということだろう。西堀さんの考え方、歩いてきた道がどうなのかが分かるので参考になることは多いと思う。

 ただいくつか疑問点がある。まずアインシュタインについて書かれたところだ。

そのとき博士(アインシュタインのこと;評者注)は「相対性理論」でノーベル賞を受賞した直後だったが、(p76)


 アインシュタインと言えば相対性理論なのだが、実は博士がノーベル賞をもらったのは「光量子仮説に基づく光電効果の理論的解明」であり、相対性理論では受賞していない。これは意外と有名な話なのだが、つい筆が滑ってしまったのだろう。なぜ博士が相対性理論で受賞しなかったのだろう。一説には、相対性理論があまりにも常識と違うので、理解できる者がほとんどいなかったという説があるが、本当のところは良く分からない。

 もう一つは、南極越冬隊長時代の話だ、無線機用の真空管は予備が少ないので、故障したものを再生することを考えたのだが、そのためには高い電圧が必要になる。そこで、西堀さんは、各自が枕元の電灯用に使っている蓄電池に目をつけた。

みんなの電池を集めてきて30個を並列につなぎ
(p160)


いや並列につないじゃ高い電圧は得られないでしょ。直列なら電圧は個々の電池の電圧の和になるけど、並列の場合は、電圧は変わらない。(実は内部抵抗の関係で少しは変わるが)

 まあ、こういった突っこみどころもあるが、全体的にはなかなかためになることが多く、品質管理に関わっている人、将来技術者を目指す人には、は一読する価値はあると思う。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

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