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「ねじれた文字 ねじれた路」トム・フランクリン ハヤカワポケットミステリ 1851

2015-11-01 | 読書
  


少年二人の友情と、それが壊れてからの長い年月。25年後に再びめぐり合った二人の運命が、簡潔に接続詞を省いて積み重なっていく文章で書き表されている。読みやすくひざびさに読後感のいいミステリだった。
底辺にある黒人と白人という人種問題も重くなく理解できるもので、効果的だった。

ホラー小説を愛するラリー・オットは41歳になった今、人里はなれた家で一人で暮らしている。父親から受け継いだ自動車修理工場を持っているが誰も来ない。その理由は過去の事件にあった。

ゾンビの仮面をかぶった男が彼の家に侵入して至近距離から胸を撃たれ、ラリーは倒れた。そこから物語の幕が上がる。

黒人のサイラス・ジョーンズは母親と逃げて極貧状態で小屋に住み着く。母はラリー家の召使だった。彼らは同じ学校に通い親しい遊び友達になった。
当時サイラスは野球の才能がありスターで白人の女の子シンディと付き合っていた、誘い合って映画を見に行き、それをラリーが手伝った。だがその日以後シンディが姿を消した。疑われたラリーは、それ以後自動車工場に来る客もなく孤独に暮らしてきた。

サイラスは野球で大学に進学したが肩を痛め、海兵隊に入り、ついに故郷に戻ってきた。いまでは「治安官」とか「32」と呼ばれている。

ラリーにあうことはなかった、過去にはもう関心がなかった。だが新たな失踪事件がおき、ラリーが撃たれ、二人を結ぶ糸がまた繋がっていく。

ラリーは命をとりとめたが昏睡状態で、目覚める様子がなかった。

サイラスはラリーの病室の警護に当たり、過去に少しずつ近づいていく。子供時代サイラスと同じチームにいたM&Mも 川で死体になって見つかる。

サイラスが大学に進学してミシシッピの田舎を離れた後、25年の歳月が流れ彼らはその間それぞれに人生を生きてきた。
交わった少しの思い出や彼らの家族の思い出が甦る。
元気だったラリーの母親はまだ生きていたが、痴呆が進み、たまに霧が晴れたようなときにだけサイラスを思い出し、サイラスの母を思い出す。
しかし過去の手がかりはこの母の朧な記憶の中で見つかる。

このあたり、短い記述が一気に重みを増す。サイラスは気づいたことがある。
ラリーと一緒に過ごした子供時代に立ち返ってみる。

そして過去の事件、新たに発生した事件、ラリーの事件が鮮やかに解決に向かう。

面白かった。


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