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あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「まほろ駅前多田便利軒」 三浦しをん 文春文庫

2015-06-18 | 読書


135回直木賞受賞作


便利屋を営む多田啓介とそこに転がり込んだ仰天春彦と町の人々との繋がりの話。

高校時代の同級生、仰天春彦は三年間無口で過ごすようなちょっと変わった奴だったが、彼の小指の怪我に責任があると思う多田は、たまたま出合った、行く先がないという仰天と同居することになる。

草引きや池の掃除、引越しの手伝い、便利屋にはいろいろな仕事の依頼がある。
犬を預かったが、飼い主が期日になっても一向に引き取りにこない。仕方なく探して引越し先に届けにいってみると、その犬を可愛がっていた女の子は、今度の狭いアパートでは飼えないと言う。そこで仕方なく連れ帰った犬を預けようと、心から可愛がってくれそうな飼い主を探す。

まほろ駅裏はちょっと怪しげな人たちが住んでいる区域になっていた、ヤクザのヒモから逃げたい女だったが、話してみると気持ちの優しいところがあって、犬を渡してももいいと二人は思う。暫くしていって見ると、リボンをつけてもらったりして可愛がられていた。

小学生の塾の迎えをして、孤独な小生意気な男の子と少し心が通いだす。

そんな仕事のエピソードもあって、バツイチの二人組みの便利屋商売が、何とか回っていく。
子供や家庭をもったこともある二人には、今はかっての生活からも距離を置いているが、それぞれのの事情があった。
無口で変人に見える仰天と多田は、何とか巧く暮らしていけるようになる。
ソファに寝そべり犬を腹に乗せて眠る仰天の姿も見慣れてくるし、彼もなぜかいつも仕事場についてきて、気乗りしない風だったがそれでも手伝っている。

三浦しをんさんのこなれた読みやすい文章と、過去がある中年に差し掛かった二人の男の結びつきが、徐々に深まるところが暖かい。

多田は家族と別れた過去があり、仰天は不幸な子供時代がある。そんな二人をいつか包んでいるような少し筒仰天の気持ちもわかってくるような日々。
粗末な便利屋の事務所や、仕事から繋がりが出来ていく町の人たち、読んでいるとそういった世界に紛れ込んでしまう。
久し振りに読んだ三浦しをんさんの新しい顔を発見。


映画化されて多田啓介に瑛太 仰天春彦に松田龍平
二人並んだカバーがかかっているので、読み始からこの二人のイメージが定着していたが、違和感はなかった。
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